印刷(PDF/121KB)はこちらから 2012年12月27日 ライセンス

Rasシグナルを標的とする新規抗がん剤候補化合物に関するライセンス契約および共同研究契約の締結のお知らせ

国立大学法人神戸大学(本部:神戸市、学長:福田秀樹、以下、「神戸大学」)、神戸天然物化学株式会社(本社:神戸市、社長:広瀬克利、以下、「神戸天然物化学」)および大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、社長:多田正世、以下、「大日本住友製薬」)は、このたび、神戸大学と神戸天然物化学とが共同で創製したRasのシグナル伝達に関わる有望な化合物について、全世界を対象とした、開発、製造、販売に関する独占的なライセンス契約を締結しましたのでお知らせします。
本ライセンス契約に基づき、大日本住友製薬は、神戸大学および神戸天然物化学に、契約一時金、マイルストン及びロイヤリティを支払います。
また、神戸大学と大日本住友製薬は、本ライセンス契約の対象とは異なる新規なRasのシグナル伝達に関わる抗がん剤の創製を目的とした共同研究契約を締結しました。

神戸大学は独創的な創薬による社会貢献をめざして、医学研究科にて長年にわたり研究を継続すると共に、その成果のライセンスによる社会活用を目指してきました。
一方、神戸天然物化学は、有機合成技術力をベースに、提案型創薬化学事業を展開しています。

このたび、神戸大学は、ターゲットタンパク質の詳細な立体構造をX線結晶解析やNMR解析により決定し、その分子表面に創薬ターゲットとなる特異的ポケットが存在することを明らかにしました。そのポケットを「鍵穴」として、それにはまり込むことによりタンパク質の機能を阻害する、いわば「鍵」となる化合物についての創薬研究を、神戸天然物化学と連携して実施しました。
両者は、構造情報に基づくコンピュータドッキングシミュレーションによるデザイン、合成アプローチ及び活性評価を駆使することによって、非臨床試験で有効性を示すリード化合物の創製に成功しました。
なお、本研究成果は独立行政法人医薬基盤研究所の委託研究及び厚生労働省科学研究費補助金による研究の一環で得られたものです。

大日本住友製薬は、アンメット・メディカル・ニーズの高い「がん」をチャレンジ領域と位置づけています。2012年9月に、がん領域の創薬研究に特化した、がん創薬研究所を新設し、新たなアプローチによる抗がん剤の創薬研究に注力しています。大日本住友製薬は、本ライセンス契約の締結によりがん領域における開発パイプラインを強化することに加え、神戸大学との産学連携の共同研究により、革新的な新薬の創製を目指します。

以上

(ご参考:用語解説)

Ras:Rasは、細胞増殖および分化に関係する細胞内情報伝達(シグナル)経路をコントロールする重要な因子として知られています。

X線結晶解析:X線照射時、多くはそのまま物質を突き抜けますが、一部のX線は、吸収されたり、散乱されたりします。X線結晶解析は、この散乱されたX線の情報から、物質の3次元構造を知る手法です。

NMR解析:Nuclear Magnetic Resonance(核磁気共鳴)の略。物質の構造情報測定法の一つで、スペクトル(成分情報)から物質の構造や量的な情報を得ることができます。

コンピュータドッキングシミュレーション:低分子(薬物やホルモンなど)と生体高分子(タンパク質や核酸などの複合体)の安定構造をコンピュータ上で計算的に推定する手法です。

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