印刷(PDF/230KB)はこちらから 2016年05月19日 研究開発

米国臨床腫瘍学会(ASCO)における抗がん剤 napabucasin および amcasertib の複数のがん種に対するデータ発表のお知らせ

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、社長:多田 正世)は、米国臨床腫瘍学会(ASCO:American Society of Clinical Oncology)の2016年年次総会(開催時期:6月3日~6月7日、開催場所:米国シカゴ)において、開発中の抗がん剤napabucasin(一般名、開発コード:BBI608)およびamcasertib(一般名、開発コード:BBI503)に関する臨床データが発表されますので、お知らせします。

【napabucasin】(6演題)

  • 抄録番号:3564、ポスター番号:261

発表時間:6月4日(土)8時00分~11時30分(米国中部夏時間)
抄録の内容は、ASCOのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
(http://abstracts.asco.org/176/AbstView_176_171370.html)

消化器がん(進行性結腸直腸がんでのFOLFIRIまたはFOLFIRIおよびベバシズマブとの併用)の第Ⅰb相継続試験(BBI608-246試験:NCT02024607)の結果

内容
  • 進行性結腸直腸がん患者に対して、napabucasin(240mg/回、2回/日)とFOLFIRIまたはFOLFIRIおよびベバシズマブの併用療法において、忍容性および抗腫瘍活性が示唆されました。また、以前にFOLFIRIまたはFOLFIRIおよびベバシズマブの併用療法で病勢が進行した患者においても、抗腫瘍活性が示唆されました。
  • 以前にFOLFIRIまたはFOLFIRIおよびベバシズマブの併用療法で病勢が進行した20例を含む、前治療歴が複数ある患者(平均2回以上)46例が登録されました。登録された全患者46例のうち、14例はnapabucasinとFOLFIRIの併用療法を、32例はnapabucasinとFOLFIRIおよびベバシズマブの併用療法を受けました。
安全性
  • 関連のある主な有害事象は、グレード1または2の下痢、吐き気、嘔吐、疲労でした。グレード3の有害事象は15例で観察され、下痢9例、疲労3例、脱水/低ナトリウム血症1例、低カリウム血症1例、直腸炎による痛み1例で、減量または支持療法で回復しました。DLT、新たな毒性および著しい薬物相互作用は観察されませんでした。
有効性
  • 評価可能な患者40例において、病勢コントロール(PR+SD)は37例(93%)、PRは11例(28%)、腫瘍の退縮を伴うSDは21例(53%)で観察されました。また、過去にFOLFIRIまたはFOLFIRIおよびベバシズマブの併用療法で増悪した、腫瘍の評価が可能な患者19例では、病勢コントロール(PR+SD)は17例(90%)、腫瘍退縮は15例(80%)、PRは6例(32%)で観察されました。
  • 抄録番号4128、ポスター番号:120

発表時間:6月4日(土)8時00分~11時30分(米国中部夏時間)
抄録の内容は、ASCOのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
(http://abstracts.asco.org/176/AbstView_176_171329.html)

転移性膵がん(ゲムシタビンおよびナブパクリタキセルとの併用)の第Ⅰb相継続試験(BBI608-118試験:NCT02231723)の結果

内容
  • 転移性膵がん患者に対して、napabucasin(240㎎/回、2回/日)とゲムシタビンおよびナブパクリタキセルの併用療法において、忍容性および抗腫瘍活性が示唆されました。
  • 37例が登録され、31例(84%)が前治療歴のない患者で、6例(16%)はネオアジュバントの治療を受けていた患者でした。
安全性
  • 関連のある主な有害事象は、グレード1の下痢、腹痛、吐き気、疲労でした。グレード3の有害事象は下痢1例、脱水1例、疲労3例、低カリウム血症3例、低ナトリウム血症1例でした。DLT、新たな有害事象および著しい薬物相互作用は観察されませんでした。
有効性
  • 評価可能な患者29例において、病勢コントロール(PR+SD)は27例(93%)、腫瘍の退縮は23例(79.3%)、PRは10例(34.5%)で観察されました。また、登録された全患者37例では、病勢コントロール(PR+SD)は27例(73%)、腫瘍の退縮は23例(62.2%)で、PRは10例(27%)で観察されました。
  • 抄録番号:9093、ポスター番号:416

発表時間:6月4日(土)8時00分~11時30分(米国中部夏時間)
抄録の内容は、ASCOのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
(http://abstracts.asco.org/176/AbstView_176_171394.html)

固形がん(進行性非小細胞肺がんでのパクリタキセルとの併用)の第Ⅰb/Ⅱ相試験(BBI608-201試験:NCT01325441)の結果

内容
  • 前治療歴の多い進行性非小細胞肺がん(扁平上皮がんまたは非扁平上皮がん)の患者に対する、napabucasin(240㎎/回、2回/日)とweeklyパクリタキセルの併用療法において、忍容性および抗腫瘍活性が示唆されました。
  • 27例が登録され、前治療歴数の中央値は3でした。27例中26例(96%)は過去にタキサンベースの治療を受けていました。
安全性
  • 関連のあるグレード3の有害事象は早期回復性の下痢1例、低カリウム血症1例でした。
有効性
  • 評価可能な患者19例において、DCRは79%、腫瘍の退縮は37%、PRは16%の患者で観察されました。このうち非扁平上皮がんの患者15例においては、DCRは87%、腫瘍の退縮が47%の患者で、PRは20%の患者で観察されました。また、登録された全患者27例では、DCRは56%、腫瘍の退縮が26%の患者で、PRは11%の患者で観察され、PFSの中央値は16週間、OSの中央値は34週間でした。このうち非扁平上皮がんの全患者22例では、PFSの中央値は17週間、OSの中央値は37週間でした。
  • 抄録番号:1094、ポスター番号:199

発表時間:6月5日(日)8時00分~11時30分(米国中部夏時間)
抄録の内容は、ASCOのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
(http://abstracts.asco.org/176/AbstView_176_171537.html)

固形がん(進行性トリプルネガティブ乳がんでのパクリタキセルとの併用)の第Ⅰb/Ⅱ相試験(BBI608-201試験:NCT01325441)の結果

内容
  • タキサンベースの治療後に病状が進行した前治療の多い進行性トリプルネガティブ乳がん患者に対する、napabucasin(480mg/回、2回/日)とweeklyパクリタキセルの併用療法において、忍容性および抗腫瘍活性が示唆されました。
  • 35例が登録され、前治療歴数の中央値は4で、33例(94%)は過去にタキサンベースの治療で増悪した患者でした。
安全性
  • 関連のあるグレード3の有害事象は、早期回復性の下痢3例、吐き気、嘔吐、食欲不振、腹痛、疲労(各1例)でした。DLTおよび新たな有害事象は観察されませんでした。
有効性
  • 評価可能な患者31例において、DCRは55%、ORRは13%でした。また、登録された全患者35例では、PFSの中央値は10.6週間、OSの中央値は37週間でした。
  • 抄録番号:5578、ポスター番号:401

発表時間:6月6日(月)13時00分~16時30分(米国中部夏時間)
抄録の内容は、ASCOのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
(http://abstracts.asco.org/176/AbstView_176_171455.html)

固形がん(白金製剤抵抗性卵巣がんでのパクリタキセルとの併用)の第Ⅰb/Ⅱ相試験(BBI608-201試験:NCT01325441)の結果

内容
  • タキサンベースの治療で増悪した前治療歴の多い白金製剤抵抗性卵巣がん患者に対する、napabucasin(240㎎~480㎎/回、2回/日)とweeklyパクリタキセルの併用療法において、忍容性および抗腫瘍活性が示唆されました。
  • 56例が登録され、前治療歴の中央値は4で、パクリタキセル(92%)、ドタキセル(4%)、両方の併用(4%)が含まれていました。
安全性
  • 関連のあるグレード3の有害事象は早期回復性の下痢(18%)、嘔吐(7%)、腹痛(7%)、吐き気(5%)、脱水(<4%)、疲労(<4%)でした。グレード3の有害事象が観察された患者の80%は投与量を減量して試験を継続しました。DLTおよび新たな有害事象は観察されませんでした。
有効性
  • 評価可能な患者40例において、DCRは68%、腫瘍の退縮が40%の患者で観察され、ORRは25%、CRは1例で観察されました。登録された全患者56例では、DCRは48%、ORRは18%、PFSの中央値は15週間、OSの中央値は38週間でした。前治療歴数が2つまでの患者11例では、ORRは45%でした。
  • 抄録番号:TPS4144、ポスター番号:129b

発表時間:6月4日(土)8時00分~11時30分(米国中部夏時間)
抄録の内容は、ASCOのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
(http://abstracts.asco.org/176/AbstView_176_171280.html)

胃または食道胃接合部腺がん(パクリタキセルとの併用)の第Ⅲ相国際共同治験(BBI608-336:NCT02178956:BRIGHTER)の試験計画

内容
  • 第Ⅲ相国際共同治験(BBI608-336:BRIGHTER)が北米、南米、欧州、豪州、アジアで実施中であり、2016年2月時点で364例がランダマイズされ、登録が進行中です。
  • 本試験は、前治療歴のある進行性の胃または食道胃接合部腺がん患者におけるnapabucasinおよびweeklyパクリタキセルの併用群と、プラセボおよびweeklyパクリタキセルの併用群の効果を評価しています。
  • 患者は、1:1の比でnapabucasin投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けられ、投与はnapabucasin 480mg/回またはプラセボの1日2回投与に加えweeklyパクリタキセルを週1回で3週投与し1週休薬するサイクルで行われています。
  • 主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、事前に規定されたバイオマーカー陽性集団でのOS、PFS、ORR、DCR、および安全性です。

【amcasertib】(1演題)

  • 抄録番号:6018、ポスター番号:340

発表時間:ポスター発表:6月4日(土)13時00分~16時30分(米国中部夏時間)
ポスター討論セッション:6月4日(土)16時45分~18時00分(米国中部夏時間)

抄録の内容は、ASCOのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
(http://abstracts.asco.org/176/AbstView_176_171512.html)

固形がん(進行性頭頸部がん)の第Ⅰ相継続試験(BBI503-101試験:NCT01781455)の結果

内容
  • 難治性の頭頸部がん患者に対する、amcasertib(BBI503)10㎎/日~300㎎/日の用量漸増と次相推奨用量検討において、忍容性およびPR、長期病勢コントロールを含む抗腫瘍活性が示唆されました。
  • 33例が登録され、13例は腺様嚢胞がん(ACC)、15例は頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、5例は耳下腺がんまたは唾液腺がんでした。また、全ての腺様嚢胞がん患者は放射線治療を受けており、92%の患者は手術を、54%は全身化学治療を受けていました。
安全性
  • 関連のあるグレード3の有害事象は、早期回復性の下痢5例、嘔吐および吐き気1例でした。
有効性
  • 評価可能な頭頸部扁平上皮がん患者、耳下腺がん患者および唾液腺がん患者16例において、PRは19%、24週間以上の病勢コントロールは25%の患者で観察され、登録された全患者20例では、OSの中央値は35週間でした。また、腺様嚢胞がん患者の登録された全患者13例では、24週間以上の病勢コントロールが38%の患者で観察され、69%の患者が1年以上生存しており、OSの中央値にはまだ到達していません。

以上

(ご参考:napabucasin、amcasertibについて)

napabucasin(一般名、開発コード:BBI608)およびamcasertib(一般名、開発コード:BBI503)は、当社の米国子会社であるボストン・バイオメディカル社が創製した開発中の抗がん剤です。
napabucasinは、STAT3をターゲットとすることにより、がん幹細胞に関わる経路を阻害するよう設計された低分子経口剤です。amcasertibはキナーゼをターゲットとすることで、Nanog等のがん幹細胞に関わる経路を阻害するよう設計された新しいメカニズムの低分子経口剤です。
両剤は、がん幹細胞に関わる経路を阻害することにより、がん治療の課題である治療抵抗性、再発および転移に対する新たな治療選択肢となることが期待されます。

(ご参考:用語解説)

STAT3
遺伝子の転写に関与するタンパク質。STAT3は多くの固形がんで活性化されており、細胞のがん化に重要な働きをすることがわかっている。

キナーゼ
酵素の一種で、細胞内に存在する別の分子の活性を調節する働きをもつもの。多くは生体の信号伝達や反応の調節に関与している。

Nanog
最近同定されたホメオドメインタンパク質であり、ES細胞などの多能性幹細胞や初期胚に特異的に発現している。転写活性化因子として働き、多能性と自己複製能維持のシグナル伝達系に関与している。

DCR(病勢コントロール率)
病状をコントロールできている患者の割合。RECIST評価(腫瘍の縮小を判定する方法)におけるCR(complete response:完全奏効)+PR(partial response:部分奏効)+SD(stable disease:安定)の比率となる。

  • 完全奏効(CR) がんの消失が4週間続いた状態
  • 部分奏効(PR) がんの大きさが30%以上縮小し、それが4週間続いた状態
  • 安定(SD) PRとPDの間の状態
  • 進行(PD) がんの大きさが20%以上増加

ORR(objective response rate:奏効率)
治療で効果があった患者さんの割合。

DLT(dose-limiting toxicity:用量制限毒性)
これ以上の増量ができない理由となる毒性(=副作用)。

忍容性
薬物によって生じたと判断した有害作用(=副作用)が、被験者にとってどれだけ耐え得るかの程度を示したもの。

PFS(progression free survival:無増悪生存期間)
病気が進行することなく生存する期間。

OS(overall survival:全生存期間)
死亡原因ががんによるものかどうかに関係なく、治療を受けた患者が生存している期間。なお、生存期間を評価するときは平均値ではなく中央値で示されることが多い。

ネオアジュバント
手術や放射線療法の前に行われる療法。

バイオマーカー
人の身体の状態、疾患の状態を客観的に測定し評価するための指標。

以上

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