印刷(PDF/187KB)はこちらから 2018年01月30日 研究開発

アポモルヒネ塩酸塩を有効成分として含有する舌下投与のフィルム製剤(APL-130277)の成人のパーキンソン病を対象としたフェーズ3試験の良好な結果について

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:多田 正世)の米国子会社であるサノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)は、米国で開発中のアポモルヒネ塩酸塩を有効成分として含有する舌下投与のフィルム製剤(開発コード:APL-130277、以下「本剤」)が、運動症状の日内変動(オフ症状)を伴う成人のパーキンソン病を対象としたフェーズ3試験(CTH-300試験、以下「本試験」)において、主要評価項目および重要な副次的評価項目を達成するとともに、総じて良好な忍容性を示したことを、1月29日(米国東部時間)に速報として発表しましたので、お知らせします。

本剤は、パーキンソン病の朝のオフ症状、予測できないオフ症状、ウェアリングオフ現象を含むすべてのオフ症状の治療を目的として開発されています。オフ症状は、適切な薬物治療を行っていても生じるパーキンソン病症状のことです。オフ症状は、いつでも現れる可能性があり、朝の起床後にしばしば現れ、また、一日を通して周期的に現れます。オフ症状には、振戦(ふるえ)、固縮(筋肉の硬直)、動作緩慢などがあり、それらは日常生活における行動を妨げるものであり、患者さん、家族および介護者にとって苦しいものです。パーキンソン病患者さんの40%から60%の方々がオフ症状を経験しており、その頻度および重症度は疾患の経過とともに悪化する可能性があります。

本試験にはオフ症状を伴う109名の成人のパーキンソン病患者が参加し、本剤投与群は、プラセボ投与群と比較して主要評価項目(投与開始から12週間後における投与30分後のMDS-UPDRS Part Ⅲ※1スコアの投与前からの平均変化量)を統計学的に有意に改善し、その効果は最後の観察時間である投与90分後まで持続しました。本剤投与群とプラセボ投与群の投与30分後におけるMDS-UPDRS Part Ⅲスコアのベースラインからの変化量の差は、7.6(p=0.0002)でした。また、重要な副次的評価項目(投与開始から12週間後における投与後30分以内のオン状態の患者の割合(予測値))についても、本剤投与群(35%)はプラセボ投与群(16%)と比較して、統計学的に有意に大きな割合を示しました。
本試験において本剤は総じて良好な忍容性を示し、重要な安全性シグナルまたは有害事象は認められませんでした。タイトレーション期および維持期における主な有害事象は、吐き気(27.0%)、眠気(14.9%)、めまい(14.2%)、あくび(12.8%)および頭痛(9.2%)でした。

サノビオン社のExecutive Vice President and Chief Medical Officer, Head of Global Clinical Development for Sumitomo Dainippon Pharma GroupであるAntony Loebel(アントニー・ローベル)は、次のように述べています。「パーキンソン病の患者さんおよびそのご家族にとって、オフ症状は、精神的および身体的影響が大きく、また、現在オフ症状のための治療選択肢は限られています。本試験の結果から、私たちは、本剤がオフ症状に苦しむパーキンソン病の患者さんのために、良好な忍容性、信頼性、利便性および即効性を備えた治療選択肢となる可能性があると確信しています。」

Emory University School of Medicine(エモリー大学医学部)の神経学教授、Movement Disorders Programのディレクター、神経学のVance Lanier Chairであり、本試験の主たる治験医師でもあるStewart Factor(スチュアート・ファクター)医師は、次のように述べています。「アポモルヒネ塩酸塩は有用なパーキンソン病治療剤ですが、オフ症状に苦しむパーキンソン病患者さんには十分に利用されていません。アポモルヒネ塩酸塩は、現在、注射剤しか利用できません。アポモルヒネ塩酸塩の舌下投与のフィルム製剤が承認されれば、医療従事者およびパーキンソン病患者さんにとって重要な新たな選択肢となります。本試験において、本剤は速やかにかつ安全にパーキンソン病の患者さんをオフ状態からオン状態にすることを示しました。」

本試験の詳細については解析中であり、サノビオン社は、今後、本試験のデータを学会で発表する予定です。

サノビオン社は、本試験のデータを基に米国での新薬承認申請を準備中であり、2018年春の申請を予定しています。なお、本剤は、FDAよりファスト・トラック指定※2を受けています。

※1 MDS-UPDRS(Movement Disorder Society Unified Parkinson's disease Rating Scale) Part Ⅲ: パーキンソン病における運動能力の評価指標として用いられています。

※2 ファスト・トラック指定は、アンメット・メディカル・ニーズに対応する可能性のある重篤な疾患を治療する薬剤の開発を促進し、審査を迅速化する制度です。

以上

(ご参考)

APL-130277について

本剤は、アポモルヒネ塩酸塩(ドパミン作動薬)を有効成分として含有する新規の製剤であり、パーキンソン病に伴うオフ症状を必要に応じて管理するために、即効性があり簡便に服用できる舌下投与のフィルム製剤として開発されています。
アポモルヒネ塩酸塩は、進行性のパーキンソン病に伴うオフ症状を必要に応じて一時的に改善するレスキュー薬として、唯一承認されている有効成分ですが、米国では、皮下投与の注射剤しか承認されていません。
本剤は、起床後に服用することができるとともに1日5回まで服用することができ、新しく、簡便で目立たない製剤として設計されました。本剤は、パーキンソン病の患者さんを速やかに、安全に、信頼性高く、オフ状態からオン状態にすることができる可能性があります。本剤については、現在レボドパによる治療を受けている患者さんのオフ症状の管理のために、必要に応じて服用する併用薬として提供することを目的に米国においてフェーズ3試験を実施しています。
2016年10月に、サノビオン社がカナダの医薬品ベンチャー企業であるCynapsus Therapeutics Inc.を買収し、本剤を獲得しました。

CTH-300試験について

本試験は、レボドパに反応を示すオフ症状を伴うパーキンソン病患者を対象に、本剤の有効性、安全性および忍容性を評価するために実施した、12週間のランダム化、プラセボ対照二重盲検比較フェーズ3試験です。本試験は、MDS-UPDRS Part Ⅲにおいて統計学的に有意な改善を示すことを目的としており、主要評価項目は、維持期の投与開始から12週間後における投与30分後のMDS-UPDRS Part Ⅲ(運動能力検査)スコアの投与前からの平均変化量でした。重要な副次的評価項目は、維持期の投与開始から12週間後における投与後30分以内のオン状態の患者の割合でした。

パーキンソン病およびオフ症状について

米国では100万人以上、世界では400万人から600万人がパーキンソン病に罹患していると言われています。パーキンソン病は、安静時の振戦(ふるえ)、固縮(筋肉の硬直)および運動障害を含む運動症状ならびに認知障害および気分障害を含む多くの非運動症状を特徴とする慢性の進行性の神経変性疾患です。アルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性疾患であり、パーキンソン病の有病率は、人口の高齢化に伴い増加しています。
オフ症状は、適切な薬物治療を行っていても生じるパーキンソン病症状のことです。オフ症状は、いつでも現れる可能性があり、朝の起床後にしばしば現れ、また、一日を通して周期的に現れます。オフ症状には、振戦(ふるえ)、固縮(筋肉の硬直)、動作緩慢などがあり、それらは日常生活における行動を妨げるものであり、患者さん、家族および介護者にとって苦しいものです。パーキンソン病患者さんの40%から60%の方々がオフ症状を経験しており、その頻度および重症度は疾患の経過とともに悪化する可能性があります。

以上

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