印刷(PDF/168KB)はこちらから 2020年03月25日 医薬品

非定型抗精神病薬「ラツーダ錠」の製造販売承認取得について

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)は、非定型抗精神病薬「ラツーダ®錠」(一般名:ルラシドン塩酸塩、以下「本剤」)について、3月25日付けで、「統合失調症」および「双極性障害におけるうつ症状の改善」を適応症として、国内における製造販売承認を取得しましたので、お知らせします。当社は薬価収載後に本剤を発売する予定です。

当社は、統合失調症患者を対象とした国際共同フェーズ3試験(PASTEL試験、JEWEL試験)および継続長期試験(JEWEL継続試験)、双極Ⅰ型障害うつ患者を対象とした国際共同フェーズ3試験(ELEVATE試験)等の結果を基に、2019年7月31日に本剤の国内における製造販売承認申請を行いました。本剤は承認申請前に申請予定資料の評価を受けた医薬品事前評価相談実施品目であり、通常よりも短い約8ヶ月の審査期間で承認を取得しました。

本剤は、当社が創製した独自の化学構造を有する非定型抗精神病薬であり、ドパミンD2、セロトニン5-HT2A、セロトニン5-HT7受容体にアンタゴニストとして作用するほか、セロトニン5-HT1A受容体にはパーシャルアゴニストとして作用します。また、ヒスタミンH1およびムスカリンM1受容体に対してはほとんど親和性を示しません。

本剤は、2010年10月に米国で成人の統合失調症に係る効能・効果で承認されて以降、2020年3月現在、統合失調症に係る効能・効果では欧米を含む47の国または地域で承認されており、双極Ⅰ型障害うつに係る効能・効果では米国を含む7つの国または地域で承認されています。本剤は海外のガイドラインで体重増加リスクが低いとされる抗精神病薬です。また、双極性障害におけるうつ症状では第一選択薬のひとつとして推奨されており、治療選択肢が少ない当該治療に貢献しています。

当社は、このたびの承認取得により、統合失調症および双極性障害におけるうつ症状の新たな治療選択肢を提供することで、国内における両疾患の治療に貢献できるものと期待しています。

(ご参考)

「ラツーダ®錠」の概要

【販売名】 ラツーダ®錠20㎎、ラツーダ®錠40㎎、ラツーダ®錠60㎎、ラツーダ®錠80㎎
【一般名】 ルラシドン塩酸塩
【剤形・含量】 ラツーダ®錠20㎎: 1錠中ルラシドン塩酸塩20 mg含有
ラツーダ®錠40㎎: 1錠中ルラシドン塩酸塩40 mg含有
ラツーダ®錠60㎎: 1錠中ルラシドン塩酸塩60 mg含有
ラツーダ®錠80㎎: 1錠中ルラシドン塩酸塩80 mg含有
【効能・効果】 統合失調症、双極性障害におけるうつ症状の改善
【用法・用量】 <統合失調症>
通常、成人にはルラシドン塩酸塩として40mgを1日1回食後経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は80mgを超えないこと。
<双極性障害におけるうつ症状の改善>
通常、成人にはルラシドン塩酸塩として20~60mgを1日1回食後経口投与する。
なお、開始用量は20mg、増量幅は1日量として20mgとし、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は60mgを超えないこと。

【PASTEL試験について】

本試験は、統合失調症患者を対象とした、日本を含む数か国で実施された多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較フェーズ3試験です。
本試験の結果、主要評価項目である投与6週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS:Positive and Negative Syndrome Scale)※1合計スコアのベースラインからの変化量において、主要な解析対象集団(modified ITT※2:modified Intent to Treat, n=439)におけるルラシドン40mg/日投与群(n=145)およびルラシドン80mg/日投与群(n=152)はいずれも、プラセボ投与群(n=142)に対する改善傾向が認められましたが、統計学的に有意ではありませんでした(40mg/日投与群:-17.9、80㎎日投与群:-17.3、プラセボ投与群:-13.1)。
一方、治験薬が投与された最大の患者集団(ITT:Intent to Treat, n=450)での追加解析では、投与6週間後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量において、ルラシドン40mg/日投与群(n=148)および80mg/日投与群(n=154)はいずれもプラセボ投与群(n=148)に対し、統計学的に有意な改善(40mg/日投与群:-17.7、80mg/日投与群:-16.8、プラセボ投与群:-11.9)を示しました。本試験の結果については2014年12月25日および2015年4月24日に開示しています。

※1 陽性・陰性症状評価尺度(PANSS):主として統合失調症の精神状態を全般的に把握することを目的とした評価尺度です。陽性尺度7項目、陰性尺度7項目、総合精神病理尺度16項目の合計30項目で構成され、各項目は1(症状なし)から7(最重度)までの7段階で評価されます。
※2 ロラゼパムまたは他の睡眠導入剤を服用後 12 時間以内のデータを除外した解析対象集団。

【JEWEL試験およびJEWEL継続試験について】

JEWEL試験は、統合失調症患者を対象とした、日本を含む数か国で実施された多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較フェーズ3試験です。
本試験の結果、主要評価項目である投与6週間後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量において、主要な解析対象集団(ITT, n=478)では、ルラシドン40㎎/日投与群(n=245)はプラセボ投与群(n=233)に対し、統計学的に有意な改善(ルラシドン40㎎/日投与群:-19.3、プラセボ投与群:-12.7)を示しました。また、副次評価項目である投与6週間後のCGI-S※3のベースラインからの変化量においても、ルラシドン40㎎/日投与群はプラセボ投与群に対し、統計学的に有意な改善を示しました。本試験の結果については2019年1月10日に開示しています。
JEWEL継続試験は統合失調症に対するルラシドンの長期投与時の安全性および有効性を検討するために実施されたJEWEL試験からの継続長期投与試験です。対象はJEWEL試験を完了した患者で、ルラシドン40 mg/日または80 mg/日を12週間投与しました。JEWEL試験を完了した患者のうち継続試験への移行に同意した289名が組み入れられ、235名が治験を完了しました。

※3 臨床全般印象評価尺度-重症度(CGI-S):疾患の重症度を1(正常)から7(非常に重度の精神疾患)の7段階で評価する尺度です。

【ELEVATE試験について】

本試験は、双極Ⅰ型障害うつ患者を対象とした、日本を含む数か国で実施された多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較フェーズ3試験です。
本試験の結果、主要評価項目である投与6週間後のMADRS(Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale)※4合計スコアのベースラインからの変化量において、主要な解析対象集団(ITT, n=522)では、ルラシドン 20~60 mg/日投与群(n=182)はプラセボ投与群(n=171)に対し、統計学的に有意な改善(ルラシドン 20~60 mg/日投与群:-13.6、プラセボ投与群:-10.6)を示しました。ルラシドン 80~120 mg/日投与群(n=169, -12.6)は、プラセボ投与群(n=171)に対し改善を示しましたが、統計学的に有意ではありませんでした。本試験の結果については2017年6月9日に開示しています。

※4 MADRS:患者のうつ症状の重症度を評価する尺度です。外見に表出される悲しみ、言葉で表現された悲しみ、内的緊張、睡眠減少、食欲減退、集中困難、制止、感情を持てないこと、悲観的思考、自殺思考の10 項目から成り、項目ごとに0~6(高いほど重症)の範囲で評価されます。

以上

報道関係者の皆さまからのお問い合わせ