印刷(PDF/211KB)はこちらから 2020年04月03日 研究開発

愛媛大学と大日本住友製薬による新規マラリア伝搬阻止ワクチン開発に関わるGHIT Fundからの助成決定

国立大学法人愛媛大学プロテオサイエンスセンター(センター長:坪井 敬文、以下「愛媛大学」)と大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)は、米国PATHと3者共同で進めている「新規マラリア伝搬阻止ワクチンの前臨床開発プロジェクト」(以下、「本プロジェクト」)がこのたび、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(日本、Global Health Innovative Technology Fund、以下「GHIT Fund」)の助成案件に選定されましたので、お知らせします。

本プロジェクトの対象となるワクチン製剤(以下、「本剤」)は、愛媛大学とPATHにより見出された高品質な新規熱帯熱マラリア抗原(Pfs230D1+)と、大日本住友製薬が持つ新規ワクチンアジュバント(TLR7アジュバント:DSP-0546E)で構成されており、ヒトから蚊への原虫感染サイクルを断つことができるマラリア伝搬阻止ワクチン候補製剤です。本剤が上市されれば、世界初のマラリア伝搬阻止ワクチンとして、マラリア撲滅に向けた切り札となる可能性があります。

マラリアは、蚊で媒介される寄生虫病で、死亡者数は2005年頃から減少傾向に転じましたが、2018年には依然として世界で2億人以上がマラリアに罹り、死亡者数も40万人以上に及んでいます(出典「World Malaria Report 2019」)。マラリア対策の切り札としてワクチン開発がこの40年間以上取り組まれてきましたが、蚊からヒトへの感染を防ぐ第一世代のマラリアワクチンによる有効性は約30%と低く、より有効な次世代マラリアワクチンが切望されています。

本プロジェクトは、2020年4月からの2年間、PATHが代表者としてプロジェクト全体を管理し、抗原タンパク質の提供、前臨床試験および治験申請業務を担当します。愛媛大学は免疫原性など本剤が誘導する抗体の機能評価を、大日本住友製薬はアジュバント製剤の開発や非臨床評価を担当します。3者は、本プロジェクトの終了後に、米国において臨床試験を開始する予定です。

愛媛大学は、本プロジェクトを成功させることにより、画期的なマラリア伝搬阻止ワクチンの実現に向けた開発を推進し、グローバルヘルスの最重要課題の一つであるマラリア対策に貢献できることを期待しています。

大日本住友製薬は、愛媛大学およびPATHとの共同研究にて得られた新規マラリアワクチン抗原および大日本住友製薬の持つ革新的な免疫アジュバント技術を活用して、新規マラリア伝搬阻止ワクチンの研究開発を行うことにより、グローバルヘルスに貢献することを目指します。

【参考】

○Pfs230D1+について

愛媛大学がPATHと共同で実施した以前のGHIT Fundプロジェクト(T2016-207)において、熱帯熱マラリア伝搬阻止ワクチン抗原として知られていたPfs230から、ワクチンとしての最適抗原部位を決定したものが、Pfs230D1+です。Pfs230抗原の詳細については、http://ghitfund.org/investment/portfoliodetail/detail/102/jpをご覧ください。

○TLR7アジュバント(DSP-0546E)について

ウイルス由来のRNA を感知して自然免疫応答を引き起こすToll 様受容体の一つであるTLR7 を活性化させる物質です。抗原に添加することによって免疫応答の量、質および持続性を高める免疫増強作用を有します。

○公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金 (GHIT Fund:ジーヒット・ファンド)

GHIT Fundは、日本で初めての日本政府、複数の製薬会社、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム、国連開発計画(UNDP)が参画する国際的な官民ファンドです。世界の最貧困層の健康を脅かすマラリア、結核、顧みられない熱帯病(NTDs)などの感染症と闘うための新薬開発への投資、ならびにポートフォリオ・マネジメントを行っています。治療薬、ワクチン、診断薬を開発するために、GHIT Fundは日本の製薬企業、大学、研究機関の製品開発への参画と、海外の機関との連携を促進しています。詳細については、https://www.ghitfund.orgをご覧ください。

○PATH

PATHは、公的機関・企業・投資家等と連携して、世界で最も差し迫った健康問題を解決することにより、健康格差の縮小を目指す国際組織です。PATHは科学・健康・経済・技術・患者支援等の多様な専門性により、ワクチンや医薬品、医療機器、診断機器など、世界中の医療システムを強化するための革新的なソリューションの発展に努めています。詳細については、https://www.path.org/をご覧ください。

報道関係者の皆さまからのお問い合わせ