印刷(PDF/199KB)はこちらから 2020年04月16日 研究開発

開発中の統合失調症治療剤SEP-363856のフェーズ2試験結果のNew England Journal of Medicine掲載について

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)の米国子会社であるサノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下、サノビオン社)は、2020年4月15日(米国東部時間)、新世代の統合失調症治療剤を目指して開発中のSEP-363856(開発コード、以下「本剤」)の統合失調症に対する有効性と安全性を検証することを目的としたフェーズ2試験(SEP361-201、以下「本試験」)の結果がNew England Journal of Medicineのオンライン版に掲載されたことを発表しましたので、お知らせします。

本試験の結果、本剤の投与(50~75mg、1回/日)により、主要評価項目である投与4週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS:Positive and Negative Syndrome Scale)※1合計スコアの変化量は、本剤投与群ではプラセボ投与群に対して統計学的に有意(本剤投与群:-17.2、プラセボ投与群:-9.7、p=0.001)かつ臨床的に意義のある改善を示し、主要評価項目を達成しました。また、臨床全般印象評価尺度-重症度(CGI-S)※2の変化量でも、本剤投与群は、プラセボ投与群に対して改善(p<0.001)を示し、さらに、すべてのPANSSのサブスケール(陽性・陰性・総合精神病理)でも改善(p<0.02)が認められました。
本試験を通じて、本剤投与群は、錐体外路症状、体重その他の代謝指標の影響においてプラセボ投与群と同等の安全性を示し、総じて良好な忍容性を示しました。また、本剤を6ヵ月間継続投与したオープンラベル試験においても、有効性が持続し、安全性と忍容性に新たな懸念は認められませんでした。

統合失調症治療剤として開発中である本剤は、セロトニン5-HT1Aアゴニスト活性を持つTAAR1(新規微量アミン関連受容体1)アゴニストであり、既存の抗精神病薬の作用機序であるドパミンD2またはセロトニン5-HT2A受容体に結合しません。現在、本剤の統合失調症を対象とした国際共同フェーズ3試験(DIAMOND試験)を実施中であり、その他の適応症についても検討中です。米国食品医薬品局(FDA)は、2019年5月に本剤を統合失調症の治療のためのBreakthrough Therapyに指定しました。

イエール大学医学部臨床調査センターのChair of Psychiatry and Co-Directorであり、共著者のJohn Krystal(ジョン・クリスタル)医師は次のように述べています。「本試験の結果は統合失調症研究の大きな前進と言えます。TAAR1を対象とした新たな作用機序の特定につながる大きな一歩はとても斬新であり、統合失調症の新たな治療法を同定するためのサノビオン社の革新的なアプローチによりもたらされました。過去60年間、その副作用にもかかわらず、ドパミン受容体に作用する抗精神病薬が統合失調症の標準治療でした。本試験の結果が、深刻な精神疾患と診断された患者さんのための新たな治療法を支持することを願います。本剤は、統合失調症の患者さんとその家族、そして統合失調症がもたらす社会的損失の軽減に大きな影響を与える可能性があります。」

サノビオン社のChief Scientific OfficerであるKenneth Koblan(ケネス・コブラン)は次のように述べています。「New England Journal of Medicineに掲載された新たな知見は、本剤が統合失調症治療における最初のTAAR1アゴニストとなることを示唆しています。統合失調症治療に対するこの革新的なアプローチは、全世界で深刻な精神症状に苦しむ2300万人の患者さんにとって、全く新しい選択肢を提供します。当社は、これらの患者さんのために新たな治療選択肢の開発に取り組み、統合失調症およびその他の精神神経疾患に対するさらなる臨床効果を評価するための試験を継続していきます。」

※1 陽性・陰性症状評価尺度(PANSS):主として統合失調症の精神状態を全般的に把握することを目的とした評価尺度です。陽性尺度7項目、陰性尺度7項目、総合精神病理尺度16項目の合計30項目で構成され、各項目は1(症状なし)から7(最重度)までの7段階で評価されます。

※2 臨床全般印象評価尺度-重症度(CGI-S):疾患の重症度を1(正常)から7(非常に重度の精神疾患)の7段階で評価する尺度です。

(ご参考)

【SEP-363856について】

SEP-363856は、統合失調症とその他の精神症状に対する治療を対象として開発中であるセロトニン5-HT1Aアゴニスト活性を持つTAAR1(新規微量アミン関連受容体1)アゴニストです。サノビオン社は、in vivo表現型SmartCube®プラットフォームと関連する人工知能(AI)アルゴリズムを使用して、PsychoGenics社と共同でSEP-363856を創製しました。本剤は、統合失調症を対象とした国際共同フェーズ3試験(DIAMOND試験)を実施中であり、その他の適応症についても検討中です。FDAは、2019年5月に本剤を統合失調症の治療のためのBreakthrough Therapyに指定しました。

【統合失調症について】

統合失調症は、世界中で2300万人を超える人々が、米国では成人の約100人に1人(約240万人)の割合で罹患している、慢性で重症化しやすい精神疾患です。統合失調症の症状として、幻覚、妄想、思考障害などの陽性症状、感情の平板化、社会的引きこもり、自発性低下などの陰性症状、記憶力、注意力、実行能力の低下などの認知機能障害が知られています。

以上

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