印刷(PDF/205KB)はこちらから 2020年07月07日 研究開発

SEP-4199の双極Ⅰ型障害うつを対象とした国際共同フェーズ2試験(SEP380-201)の解析結果の速報について

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)の米国子会社であるサノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)は、2020年7月6日(現地時間)、双極Ⅰ型障害うつの経口治療剤として開発中であるSEP-4199(開発コード、以下「本剤」)について、国際共同フェーズ2試験(SEP380-201、以下「本試験」)の結果を発表しましたので、お知らせします。本剤はドパミンD2受容体に比べセロトニン5-HT7受容体に対する作用を高めたアミスルプリド鏡像異性体の非ラセミ混合物です。

本試験は、双極Ⅰ型障害うつ患者を対象とした多施設共同、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照比較国際共同フェーズ2試験です。本試験の結果、主要評価項目である米国および欧州の患者における投与6週後のMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale (MADRS)※1合計スコア変化量は、プラセボ投与群に対し、改善傾向を示しました(200mg/日投与群:-19.5 vsプラセボ投与群:-16.2、effect size(ES) =-0.31、調整済みp=0.054、400mg/日投与群:-19.3 vsプラセボ投与群:-16.2、ES =-0.29、調整済みp=0.054)。本剤投与群は主要評価項目において統計学的に有意な改善を示しませんでしたが、本試験ではプラセボ投与群で比較的大きな改善が観察され、主要評価項目の結果に影響を及ぼした可能性があります。

本試験は、探索的に日本人の有効性と安全性を検討するコホートを含めており、日本人を加えた集団(337名)での探索的な解析を事前規定していました。その解析の結果、投与6週後のMADRS合計スコアのベースラインからの変化量は、それぞれ-18.0(200mg/日投与群)、-17.7(400mg/日投与群)、-14.3(プラセボ投与群)であり、本剤投与群とプラセボ投与群との差は、200mg/日投与群が-3.7(未調整p<0.025、ES =-0.34)、400mg/日投与群が-3.4(未調整p<0.025、ES =-0.31)でした。これらの結果から、本剤の両投与群は、臨床的に意味のある改善が示されました。

本試験において、本剤は良好な忍容性を示し、有害事象は比較的低い発現頻度でした。主な有害事象(本剤投与群で2%以上に発現しプラセボ投与群より頻度が高かった有害事象)は、QT延長(400mg/日のみ)、傾眠、便秘、乳汁分泌、吐き気、アカシジア、めまい、軽躁および下痢でした。重篤な有害事象は2例(本剤1例、プラセボ1例)報告されました。

マサチューセッツ総合病院のChief of the Department of PsychiatryであるMaurizio Fava(マウリジオ・ファーヴァ)医師は、次のように述べています。「双極Ⅰ型障害うつは治療が困難で、新たな治療選択肢が強く求められています。本試験では、プラセボ効果のために主要評価項目において統計学的に有意な改善を示しませんでしたが、本試験の結果は、本剤が双極性障害うつ患者さんの治療を向上させる可能性があることを示唆しています。」

サノビオン社のChief Scientific OfficerであるKenneth Koblan(ケネス・コブラン)は、次のように述べています。「本剤の創出は、当社がアンメット・メディカル・ニーズに対する高い専門性と理解を有することにより、双極Ⅰ型障害うつをはじめとする深刻な精神神経症状を持つ患者さんのための新たなソリューションを提供できることを示しています。当社は、本試験で示された忍容性と有効性により、本剤が双極性障害うつの患者さんの新たな治療選択肢になりうると考えています。当社は、本試験の結果を受けて、フェーズ3試験の開始に向けて検討していきます。今後の学会において、本試験の全てのデータを発表し、その内容について先生方と議論することを楽しみにしています。」

※1 MADRS:患者のうつ症状の重症度を評価する尺度です。外見に表出される悲しみ、言葉で表現された悲しみ、内的緊張、睡眠減少、食欲減退、集中困難、制止、感情を持てないこと、悲観的思考、自殺思考の10 項目から成り、項目ごとに0~6(高いほど重症)の範囲で評価されます。

(ご参考)

【SEP-4199について】

本剤はアミスルプリド鏡像異性体の非ラセミ混合物であり、米国で初めてのベンズアミド系の気分障害治療剤となる可能性があります。サノビオン社は、アミスルプリドの薬理作用は鏡像異性体に特異的であり、S体に対するR体の比率を増加させることにより、ドパミンD2受容体に比べてセロトニン5-HT7受容体への作用が高まることを見出しました。本剤は、抗うつ作用を強めるためにセロトニン5-HT7活性を高め、双極性障害うつ治療に適したドパミンD2受容体の占有率に下げるよう設計されています。本剤の薬理作用は、統合失調症やその他の精神疾患の治療剤として米国を除く一部の国で承認されているアミスルプリドのラセミ体とはまったく異なります。

【SEP380-201について】

本試験は、本剤単独療法の有効性、安全性および忍容性を評価するための、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間、固定用量、国際共同フェーズ2試験です。被験者は、DSM-5基準により「双極Ⅰ型障害・現在のエピソードが抑うつ」と診断された患者であり、ベースラインでのMADRSスコアは22以上でした。本試験では、米国、欧州、日本の91施設で、合計344名(米国および欧州:295名、日本:49名)の患者(18~65歳)に対し、本剤200mg/日投与群、400mg/日投与群またはプラセボ投与群に等しく割り付けました。本試験の主要評価項目は投与6週後のMADRS合計スコアのベースラインからの変化量であり、副次評価項目は投与6週後におけるClinical Global Impression-Severity: Bipolar Version (CGI-BP-S) score (depression) (CGI-BP-S)※2スコア(うつ)のベースラインからの変化量でした。本試験には日本人の有効性と安全性を探索的に検討するための日本人コホートが含まれており、事前規定された探索的な解析として、日本人被験者と、米国および欧州の被験者のデータを併合しました。MADRS合計スコアのベースライン値は欧州と米国の被験者で34.0、日本の被験者で32.8でした。

※2 Clinical Global Impressions-Severity: Bipolar Version (CGI-BP-S) score (depression): 双極性障害のうつ症状の重症度を測定する臨床全般印象尺度。

【双極性障害について】

米国で約1,260万人、世界中で約2,900万人が罹患しており、通常、統合失調症などの別の精神疾患の症状ではうまく説明ができない症状を伴う躁病エピソードを少なくとも1回経験した後に双極性障害と診断されます。双極性障害は、気分や行動の安定期がある消耗性の気分変動が特徴的です。双極性障害の患者さんの多くは躁状態よりもうつ状態を経験する傾向があります。
うつ状態は、躁状態よりも期間が長く、既存治療への反応性が良くありません。双極性障害の全ての病期で自殺につながる行動が誘発される恐れがあり、そのリスクはうつ状態で最も高くなります。双極性障害は、人間関係や日常生活に著しい障害をもたらします。

以上

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