印刷(PDF/126KB)はこちらから 2020年09月30日 研究開発

レルゴリクスの進行性前立腺がんを対象としたフェーズ3 試験における追加データについて

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)の米国連結子会社であるマイオバント・サイエンシズ・リミテッド(ニューヨーク証券取引所上場)は、開発中のレルゴリクス(一般名、以下「本剤」)の進行性前立腺がんを対象としたフェーズ3試験(HERO試験)について、追加データとして副次評価項目の転移性前立腺がんを対象とした無去勢抵抗性イベント生存(castration resistance-free survival)の結果を得たことを発表しましたので、お知らせします。

追加データの解析結果では、転移性前立腺がんのサブグループにおける48週にわたる無去勢抵抗性イベント生存率は、本剤群では74%、リュープロレリン群では75%であり、本剤の統計的優越性は示されませんでした[HR = 1.03(95% CI: 0.68-1.57)、p=0.84]。
安全性については、転移性前立腺がんのサブグループにおける有害事象の発現率は、HERO試験の一次解析で観察されたものと一致しており、新たな安全性上の懸念は示されませんでした。

デューク大学医学部外科学の教授であり、HERO試験の運営委員会のメンバーであるDan George(ダン・ジョージ)医師は、次のように述べています。「HERO試験の追加データでは、経口剤のレルゴリクスは、現在の標準治療である注射剤のリュープロレリンと同じく、転移性前立腺がん患者さんの4人中3人において48週にわたって去勢抵抗性を示しませんでした。レルゴリクスは、リュープロレリンと比較して主要な心血管系有害事象のリスクが低いなどの臨床および安全性データを考慮すると、前立腺がん患者さんの新しい差別化された治療選択肢となることが期待されます。」

マイオバント社のCEOであるLynn Seely (リン・シーリー)は、次のように述べています。「New England Journal of Medicineに掲載されたデータを含めて全体的に考えると、レルゴリクスのフェーズ3試験であるHERO試験は、進行性前立腺がんの患者さんにとってレルゴリクスが有用な治療薬となりうることを示す説得力のあるエビデンスであると考えています。本剤の新薬承認申請は、米国食品医薬品局(FDA)による優先審査により、2020年12月に審査終了目標日を迎えます。前立腺がんの患者さんに1日1回経口投与のレルゴリクスを提供することにより、前立腺がんの治療に貢献することを期待しています。」

本剤の新薬承認申請には本剤が有効性の主要評価項目を達成(患者の96.7%が48週間にわたって持続的にテストステロンの去勢レベル(<50ng/dL)への抑制を達成)するとともに、主な6つの副次評価項目についてもすべて達成したHERO試験のデータが含まれています。本剤の進行性前立腺がんを適応症としたFDAへの新薬承認申請の受理および優先審査の指定については、2020年6月23日に開示しており、FDAによる審査終了目標日は2020年12月20日です。

*本件の詳細についてはマイオバント社のプレスリリースをご覧ください。
(https://investors.myovant.com/node/8611/pdf)

(ご参考)

レルゴリクスについて

レルゴリクスは、1日1回経口投与の低分子GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)受容体阻害剤であり、前立腺がんの発生に関与する精巣のテストステロンおよび子宮筋腫や子宮内膜症の成長を刺激することが知られている卵巣のエストラジオールの産生を抑制します。マイオバント社は、前立腺がん向けには単剤の錠剤(120mg)を、子宮筋腫および子宮内膜症向けには配合剤(レルゴリクス40mg+エストラジオール1.0mg+酢酸ノルエチンドロン0.5mg)を開発しています。各開発段階は以下の通りです。
・子宮筋腫:2020年3月申請済(欧州)、2020年5月申請済(米国、審査終了目標日は2021年6月1日)
・前立腺がん:2020年4月申請済(米国、優先審査指定、審査終了目標日は2020年12月20日)
・子宮内膜症:フェーズ3試験段階(2本のフェーズ3試験の良好な結果を発表済)

進行性前立腺がんを対象としたフェーズ3試験(HERO試験)について

マイオバント社が行ったフェーズ3試験(HERO試験)は、少なくとも1年間のアンドロゲン除去療法を必要とするアンドロゲン感受性のある進行性前立腺がんを対象にレルゴリクスの安全性および有効性を評価する、ランダム化、非盲検、並行群間、国際共同臨床試験です。本試験に登録された患者は、レルゴリクスかリュープロレリンに2:1の割合でランダムに割り付けられ、レルゴリクス360㎎初回経口投与後に、レルゴリクス1日1回120㎎またはリュープロレリン(3カ月間持続の徐放性注射剤)が投与されました。レルゴリクスは、本試験において有効性の主要評価項目を達成(レルゴリクス96.7%、リュープロレリン88.8%が48週間にわたって持続的にテストステロンの去勢レベル(<50ng/dL)への抑制を達成)するとともに、主な6つの副次評価項目についてもすべて達成(いずれもp<0.0001)し、レルゴリクスによる迅速かつ強いテストステロンの抑制、PSA(前立腺特異抗原)の低下および投与終了後のテストステロンの回復が示されました。また安全性については、レルゴリクスの主要な心血管系イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中および全死因の死亡率を含む)のリスクは、リュープロレリンと比較して54%低く(発現率:レルゴリクス2.9%、リュープロレリン6.2%)、主要な心血管イベントの既往歴を持つ患者においては、リュープロレリンと比較して80%低く(発現率:レルゴリクス3.6%、リュープロレリン17.8%)、HERO試験における有害事象の発現率は同程度(レルゴリクス92.9%、リュープロレリン93.5%)でした。
追加データの副次評価項目の解析では、無去勢抵抗性イベント生存は、初回投与からPSAによる再燃、または何らかの原因による死亡までの時間として定義しました。PSAによる再燃は、PSA値が最低値から25%以上、かつ2ng/mL以上増加することと定義し、その後3週間以上経過した2回目のPSA値で確認しました。

前立腺がんについて

前立腺がんは米国において、男性が罹患するがんとして2番目に多く、死因の第2位になっています。心血管疾患は、男性の前立腺がんの主要な死因であり、米国の男性の前立腺がん患者の死因の34%を占めています。現在、米国では約300万人の男性が前立腺がんに罹患しており、2020年には約19万人の男性が新たに前立腺がんの診断を受けると推定されています。進行性の前立腺がんは、治療後に進行または再発する前立腺がんであり、生化学的再発(画像上で転移が認められずにPSAが上昇する)、局所進行性または転移を伴います。
進行性前立腺がんの治療には、テストステロンを去勢状態まで強力に抑制するアンドロゲン除去療法が選択され、リュープロレリン酢酸塩の注射剤や徐放性製剤などのGnRH受容体作動薬が現在の標準治療です。一方、GnRH受容体作動薬は、フレア現象として知られ、臨床症状の悪化につながる可能性がある潜在的に有害なテストステロンの初期上昇や薬剤中止後のテストステロン回復の遅延など、薬剤の作用機序による限界を伴う可能性が示唆されています。年間約21万人の男性がGnRH受容体作動薬またはGnRH受容体阻害薬を用いたアンドロゲン除去療法の治療を受けています。去勢抵抗性前立腺がんは、テストステロンを去勢レベル(50ng/dL未満)まで抑制したにもかかわらず前立腺がんが進行する疾患です。

マイオバント社について

マイオバント社は、女性および男性の疾患に対する革新的な治療法の提供に注力するバイオ医薬品企業です。マイオバント社は、レルゴリクスの他に、不妊症に対するオリゴペプチドキスペプチン1受容体アゴニストであるMVT-602(開発コード)を開発中です。大日本住友製薬はRoivant Sciences Ltd.(本社:英国 ロンドン・スイス バーゼル)との戦略的提携により、新設子会社であるスミトバント社の傘下に2019年12月にマイオバント社を連結子会社化しました。マイオバント社に関する詳細については、https://www.myovant.comをご覧ください。スミトバント社は大日本住友製薬の完全子会社であり、5つのバイオ医薬品子会社のマイオバント社、ユーロバント社、エンジバント社、アルタバント社およびスピロバント社の親会社です。スミトバント社に関する詳細については、https://www.sumitovant.comをご覧ください。

以上

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