印刷(PDF/1MB)はこちらから 2021年03月31日 研究開発

愛媛大学と大日本住友製薬による新規マラリア感染阻止ワクチン開発に関わるGHIT Fundからの助成決定

国立大学法人愛媛大学プロテオサイエンスセンター(センター長:坪井 敬文、以下「愛媛大学」)と大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)は、米国PATHと3者共同で進めている「新規マラリア感染阻止ワクチンの非臨床開発プロジェクト」(以下、「本プロジェクト」)がこのたび、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(日本、Global Health Innovative Technology Fund、以下「GHIT Fund」)の助成案件に選定されましたので、お知らせします。愛媛大学と大日本住友製薬は、マラリア発病阻止ワクチンおよびマラリア伝搬阻止ワクチンについても共同研究を実施しており、それぞれの研究がGHIT Fundの助成案件として選定されています。

本プロジェクトの対象となるワクチン製剤(以下、「本剤」)は、PATHが保有する高品質な新規熱帯熱マラリア抗原(flCSP)と、大日本住友製薬が持つ新規ワクチンアジュバント(TLR7アジュバント:DSP-0546E)で構成されており、蚊からヒトへの原虫感染サイクルを断つことができるマラリア感染阻止ワクチン候補製剤です。本剤が上市されれば、次世代感染阻止ワクチンとして、マラリア撲滅に向けた切り札となる可能性があります。

マラリアは、蚊で媒介される寄生虫病で、死亡者数は2005年頃から減少傾向に転じましたが、2019年には依然として世界で2億人以上がマラリアに罹り、死亡者数も40万人以上に及んでいます(出典「World Malaria Report 2020」)。マラリア対策の切り札としてワクチン開発がこの40年間以上取り組まれてきましたが、蚊からヒトへの感染を防ぐ第一世代のマラリアワクチンRTS,S/AS01によってマラリア患者が約40%減少し、また重症マラリア患者は約30%減少しましたが、より有効な次世代マラリアワクチンが切望されています。

本プロジェクトは、2021年4月から1年6ヶ月の間、PATHが代表者としてプロジェクト全体を管理し、抗原タンパク質の提供、比較対照としてのRTS,S/AS01ワクチンの提供、非臨床試験のデータ解析を担当します。愛媛大学は本剤が誘導する抗体の機能評価を、大日本住友製薬はアジュバント製剤の提供や非臨床評価を担当します。3者は、本プロジェクトの終了後に、本剤の前臨床試験を開始する予定です。

愛媛大学は、本プロジェクトを成功させることにより、画期的なマラリア感染阻止ワクチンの実現に向けた開発を推進し、グローバルヘルスの最重要課題の一つであるマラリア対策に貢献できることを期待しています。

大日本住友製薬は、愛媛大学およびPATHの共同研究にて得られた新規マラリアワクチン抗原および大日本住友製薬の持つ革新的な免疫アジュバント技術を活用して、新規マラリア感染阻止ワクチンの研究開発を行うことにより、グローバルヘルスに貢献することを目指します。

(参考)
【両者のこれまでの共同研究について】
愛媛大学および大日本住友製薬によるこれまでの共同研究の詳細は、以下のプレスリリースをご覧ください。

【flCSPについて】
PfCSPは熱帯熱マラリア感染阻止ワクチン抗原として古くから知られており、第一世代のRTS,S/AS01ワクチンにはPfCSPの部分配列が使用されています。flCSPは、PfCSPの全長組換えタンパク質であり、PfCSPより高いワクチン効果が期待されるため、愛媛大学がPATHと共同で実施中のGHIT Fundプロジェクト(G2019-111)において、flCSPを使用しています。G2019-111プロジェクトの詳細については、
https://www.ghitfund.org/investment/portfoliodetail/detail/145/jpをご覧ください。

【TLR7アジュバント(DSP-0546E)について】
ウイルス由来のRNAを感知して自然免疫応答を引き起こすToll様受容体の一つであるTLR7を活性化させる物質です。抗原に添加することによって免疫原性を高める免疫増強作用を有します。

【公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金 (GHIT Fund:ジーヒット・ファンド)】
GHIT Fundは、日本政府(外務省、厚生労働省)、製薬企業などの民間企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム・トラスト、国連開発計画(UNDP)が参画する国際的な官民ファンドです。世界の最貧困層の健康を脅かすマラリア、結核、顧みられない熱帯病(NTDs)などの感染症と闘うための新薬開発への投資、ならびにポートフォリオ・マネジメントを行っています。治療薬、ワクチン、診断薬を開発するために、GHIT Fundは日本の製薬企業、大学、研究機関の製品開発への参画と、海外の機関との連携を促進しています。詳細については、https://www.ghitfund.orgをご覧ください。

【PATH】
PATHは、公的機関・企業・投資家等と連携して、世界で最も差し迫った健康問題を解決することにより、健康格差の縮小を目指す国際組織です。PATHは科学・健康・経済・技術・患者支援等の多様な専門性により、ワクチンや医薬品、医療機器、診断機器など、世界中の医療システムを強化するための革新的なソリューションの発展に努めています。詳細については、https://www.path.org/をご覧ください。

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