vol.1 世界中の誰もが、安全で十分な量の水を利用するには?【目標6】

課題が山積み! 世界の水インフラ

SDGs部員のAさん、Bさんと先⽣が教室で話しているよ!

新型コロナウイルス、なかなか収束しない
なぁ。

うん、手洗いとマスクはもうしばらく続けないといけないね。

少し前までは手洗いなんて面倒くさくて、そのままお菓子とか食べていたけど、新型コロナウイルスが流行り始めてからは、外から帰ったらすぐに手を洗うのが普通になったよ。

私もそう。でも途上国の一部地域では手洗いをするための清潔な水が足りなくて、感染が広がっているみたい。

蛇口をひねればきれいな水が出るのは当たり前だと思っていたけど、そうではないんだね。安全な水が手に入らない人って、世界にはどれくらいいるんだろう?

往復30分以上かけて歩かないと1日に必要な量(20L)の水を確保できない人は、2億6千万人以上もいるといわれているよ。※1 水汲みは女性や子ども、特に女の子に任されることが多くて、世界中の女性や女の子が水汲みに費やす時間は毎日2億時間といわれているんだ。※2

そんな生活じゃ、女性は他の活動に関わる機会も少ないし、社会進出が遅れてしまうね。子どもたちも学校に行ったり、友達と遊んだりすることもできないし……。

そうやって安全な水が手に入ればまだ良いけど、衛生的に処理されていない湖や川の水をそのまま飲んでいる人も1億5千万人以上いて、毎年36万人以上の5歳未満の子どもが脱水症状になるほどひどい下痢や感染症を起こして亡くなっているんだ。※1

水のせいで命を落とすなんて……。十分な水が手に入らなくて、学校にトイレを設置できない地域もあるんだって。そんな環境じゃ、特に女の子は学校に行きたくても行けないよね。

日本でも災害時に断水になってトイレが使えずに困った人がたくさんいたみたい。わずかな水でも使えるトイレがあれば、途上国でも役立ちそうだよね。

※1 ユニセフ 2017年7月12日ニュース
https://www.unicef.or.jp/news/2017/0146.html

※2 ユニセフ 2016年8月29日ニュース
https://www.unicef.or.jp/news/2016/0208.html

他人事じゃない! 深刻な世界の水不足

それにしても、どうしてそんなに水が足りない地域があるのかな? 日本で暮らしているとあまり実感がわかないけど……。

地球上には、すべての人に行き渡る十分な量の水があるといわれている。でも国や地域によって、手に入る量や使う量に大きな差があるんだよ。特に最近は世界の人口が急速に増えているから、その分、使う水の量も増えている。生活用水だけでなく、農業や酪農をするにも、工業製品を作るのにも多くの水を使うからね。今、世界の人口は約78億人だけど、2050年には約97億人に増えて、※1 2040年には世界の子どもの4人に1人が水不足に陥るだろうと予測されているんだ。※2

ニュースで異常気象や大規模な干ばつの話を聞くけど、それも関係しているのかな?

気候変動も要因の一つだね。そうやっていろんな理由で水不足が深刻になると、貧困が拡大してしまう。すると子どもたちも労働力にならざるを得なくなって教育格差が広がってしまうし、労働力のために子どもをたくさん産む女性が増えたりして、さらなる人口の増加に繋がってしまうんだ。

なんだか悪循環だね。

でもさ、日本は水に恵まれた国だから心配しなくても大丈夫じゃない?

「バーチャル・ウォーター」という言葉を聞いたことがあるかな? 日本はたくさんの食料を海外から輸入しているけれど、生産国ではそれを作る過程で大量の水を使っているよね。そこで使われた水も輸入していると考えた場合、日本はバーチャル・ウォーターを最も多く輸入している国のひとつなんだ。

世界中の水を大量に使って、僕たちの暮らしが成り立っているということか。途上国の水不足は他人事じゃないんだね。

⽔の問題は私たちの暮らしに深く関わっているんだね

※1 国際連合広報センター 2019年7月2日プレスリリース
https://www.unic.or.jp/news_press/info/33789/
※2 ユニセフ 2017年3月22日ニュース
https://www.unicef.or.jp/news/2017/0057.html

* 食料を輸入する消費国が、自国でそれらを生産すると仮定した場合に必要となる水の量を推定したもの

SDGsの目標6と私たちにできること

こういった課題を踏まえて、世界中のだれもが安全で十分な量の水を手に入れることができる世界を目指して、SDGsの目標6では「安全な水とトイレを世界中に」というゴールが掲げられているんだよ。

  • 6 安全な水とトイレを世界中に
  • SDGsの目標6

    「すべての人々の水と衛生の利用可能性と
    持続可能な管理を確保する」

    「SDGsとターゲット新訳」製作委員会 「SDGsとターゲット新訳」(目標6 安全な水とトイレをみんなに)

「SDGsとターゲット新訳」製作委員会 「SDGsとターゲット新訳」(目標6 安全な水とトイレをみんなに)

ターゲット

6.1
2030年までに、すべての人々が等しく、安全で入手可能な価格の飲料水を利用できるようにする。
6.2
2030年までに、女性や少女、状況の変化の影響を受けやすい人々のニーズに特に注意を向けながら、すべての人々が適切・公平に下水施設・衛生施設を利用できるようにし、屋外での排泄をなくす。
6.3
2030年までに、汚染を減らし、投棄をなくし、有害な化学物質や危険物の放出を最小化し、未処理の排水の割合を半減させ、再生利用と安全な再利用を世界中で大幅に増やすことによって、水質を改善する。
6.4
2030年までに、水不足に対処し、水不足の影響を受ける人々の数を大幅に減らすために、あらゆるセクターで水の利用効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取・供給を確実にする。
6.5
2030年までに、必要に応じて国境を越えた協力などを通じ、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。
6.6
2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼を含めて、水系生態系の保護・回復を行う。
6.a
2030年までに、集水、海水の淡水化、効率的な水利用、排水処理、再生利用や再利用の技術を含め、水・衛生分野の活動や計画において、開発途上国に対する国際協力と能力構築の支援を拡大する。
6.b
水・衛生管理の向上に地域コミュニティが関わることを支援し強化する。

http://xsdg.jp/pdf/SDGs169TARGETS_200717.pdfをもとに作成

目標6を達成するために、私たちが実践できることもありそう。水に関連する生態系の保護・回復に貢献するために、地域の清掃活動に参加するとか。少しでも水を汚さないために、食器についた油汚れはきちんと拭き取ってから洗うとかね。

水を無駄遣いしないことも大事だね。僕はよく水を出しっぱなしにして親に怒られるから気をつけなきゃ。

水資源の保護のために森林保全に力を入れている企業の商品には認証マークがついていることもあるから、チェックしてみるのもいいかもしれない。

カエルのイラストが目印の「レインフォレスト・アライアンス」マークはお菓子や雑貨についているのを見たことがあるよ。どれにしようか迷ったら、今度はマークがついているものを選ぼうかな。他にも自分たちでできそうなことを考えてみよう。

参考情報:
国土交通省 世界の水資源 
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000020.html
国土交通省 水資源問題の原因
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000021.html
環境省 よくわかる! バーチャルウォーターについて
https://www.env.go.jp/water/virtual_water/

発見! SDGsチャレンジャー ヘドロが溜まった川を、全国に誇れる美しい川に! チーム「Re:ver」

下水道普及率0%の徳島県小松島市。各家庭には浄化槽が設置されているものの、高齢化の影響で管理や清掃が行き届かないために生活排水が垂れ流され、川の汚濁が進んでいました。「地元の川をきれいにして、街に恩返しがしたい」。そんな思いで2018年11月、小松島西高校の生徒たちがプロジェクトを立ち上げました。

生徒たちは地元のNPO法人に技術指導を仰ぎ、地域の建材屋から仕入れた資材を使って水質浄化装置をDIYで製作、汚染の深刻な支流に設置しました。すると、1週間ほどで汚濁度を示す値(COD値)は9割も減少。川底に溜まっていたヘドロを良質な土に変質させたことで臭いも解消され、生き物たちの姿も戻ってきたといいます。

汚れた川に慣れてしまい無関心だった地域の人たちも、彼らの活動する姿に心を動かされ、応援してくれるようになりました。洗剤の使用量を減らすなど、日々の行動を変える人も出てきたそうです。

現在は徳島県内の高校生と、有志卒業生たちで活動中。毎年後輩たちが同様のプロジェクトを受け継ぎ、蘇らせる街河川を増やしています。市長や地元企業に協力を依頼し、活動の成果を国際学会などで発表しているほか、資材の調達に地元企業を利用するなど、地域の活性化も推進。自治体からの要請にも積極的に応じ、良質な水環境だけでなく、世代を超えたあたたかいコミュニティづくりにも貢献していきたいと意欲を示しています。

※掲載情報は2020年10月現在のものです。

SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」に関する大日本住友製薬の取り組み 水資源の有効利用を推進し、地域社会にも貢献

  • 水資源は、生物多様性に大きな影響を与える要素のひとつです。薬の製造をはじめとする住友ファーマの事業活動には、良質で十分な量の淡水が必要不可欠です。水資源を有効に利用し、環境負荷を低減するために、住友ファーマでは各事業場の水使用量を管理することで、使用量削減に努めています。

  • 排水に関しては、水質汚濁防止法等に則って適切に届出を行い、排水の水質分析など継続的な監視を実施するとともに、有害物質による汚染を未然に防止するための施策を講じ、監視体制の強化に努めています。

    また、世界的に水リスクへの懸念が高まるなか、主要拠点における現在および将来の水需給、下流環境の脆弱性および水災に関するリスクを調査し、分析・評価および具体的な取り組みを進めており、水リスクを考慮した製品開発にも取り組んでいます。

  • 鈴鹿工場内の廃水処理施設

  • 鈴鹿工場では、地下水をろ過して飲料水にするシステムを保有しています。大規模災害の発生時に、鈴鹿市からの要請に応じて、このシステムにより得られた水を近隣住民の方々に飲料水等として供給する協定を鈴鹿市との間で締結しており、地域社会への貢献も目指しています。

  • ⽔資源を守るには企業の取り組みも重要なんだね

* 渇水、河川はん濫などの水害、水質汚染などによって良質で十分な量の淡水が利用できなくなった場合に
企業活動がさまざまな影響を受けること

監修:蟹江憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)