Initiatives to Improve Access to Medicines 医薬品アクセス向上の取組

医療が進歩した現代においても、いまだ十分に満たされていない医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)が数多く存在しており、研究開発型の製薬会社は、革新的な新薬の研究開発によって課題を克服する使命を担っています。また、世界には、医療システムの不備や貧困、災害や紛争などにより、すべての人が平等に必要な医療処置を受けることが困難な地域が存在します。このような「医療アクセスに関わる課題(Access to Medicine, Access to Healthcare)」に対して、研究開発および当社製品の提供の取組に加え、国際機関、政府機関、研究機関、市民社会等との多様な連携により、保健システムの強化による医薬品アクセスの向上に取り組んでいます。

パートナーシップ活動「Access Accelerated」への参画

SDGs Goal17

当社は、グローバルに事業を展開する研究開発型製薬企業の一員として、世界20数社の製薬企業と世界銀行をはじめとする6つの国際機関によるパートナーシップ活動である"Access Accelerated"に参画しています。
この活動は、参画する企業や国際機関が協働で、低所得国および低中所得国を対象として、非感染性疾患の医療アクセス向上に取り組むものです。また、各参画企業が実施しているプログラムをボストン大学と協働で開発した共通フレームワークで評価することで、医療アクセス向上のさらなる効率化を目指しており、当社はカンボジアにおける母子保健の改善に向けた活動を登録しています。
2017年度から2019 年度のフェーズ1、2020年度から2022年度のフェーズ2に続き、現在はフェーズ3の活動が検討されており、当社は発足時の2017年度から参画し続けています。
2022年度、Access Acceleratedでは、低中所得国37カ国を対象に54のプログラムが推進され、のべ7億人以上の人々に医療アクセス向上をもたらしました。特に非感染性疾患については、2,100万人に検診を提供し、その結果1,100万人が診断を受け、350万人が治療を受けました。

2017-2022年度の6年間の活動報告:「Key Lessons in Advancing Access to NCD Care」

途上国における医療アクセス向上への取組

当社は、途上国における医療アクセス向上に向けた取り組みを支援しています。認定特定非営利活動法人 Future Codeと連携して、バングラデシュでは看護師育成プロジェクトに、ハイチでは医師育成プロジェクトとともに結核検診プロジェクトへの協力を行っています。また、ブルキナファソにおいてはマラリアの予防と啓発活動、トイレの設置などの衛生教育、幼児院の運営などに協力しています。

バングラデシュ 看護師トレーニング イメージ

バングラデシュ
看護師トレーニング

ハイチ 無料結核検診 イメージ

ハイチ
無料結核検診

ブルキナファソ マラリアの予防と啓発活動 イメージ

ブルキナファソ
マラリアの予防と啓発活動

未承認薬・適応外薬の開発要望への対応

欧米等では使用が認められているものの、国内では承認されていない医薬品および適応については、厚生労働省が開発要望を募集し、寄せられた要望について「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、医療上の必要性を評価するとともに、承認申請のために実施が必要な試験の妥当性や公知申請への該当性を確認することなどにより、製薬企業による未承認薬・適応外薬の開発を促しています。

当社は、 2022年9月のビグアナイド系経口血糖降下剤「メトグルコ」の「多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発」および「多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激」の効能・効果を追加する一部変更承認を含め、これまで6件の承認を取得しています。また、エチレンイミン系に属する抗腫瘍性アルキル化剤である「リサイオ」について、「中枢神経系リンパ腫(原発性およびその他のリンパ腫の中枢神経系浸潤を含む)」に対する開発要請への対応を進めています。

開発の募集および要請への対応
開発募集・開発要請 製品名 具体的な活動 開発状況
第Ⅳ回 メトグルコ® 多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発 2022年9月16日
承認済
多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激
第Ⅱ回 リサイオ® 小児悪性固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療 2019年3月26日
承認済
悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療 2020年3月25日
承認済
第Ⅰ回 アムロジン® 高血圧症に対する小児用法・用量の追加 2012年6月22日
承認済
第Ⅰ回 メトグルコ® 2型糖尿病に対する小児用法・用量の追加 2014年8月29日
承認済

人道支援の取組

当社は、国内外の様々なパートナーとともに、災害や紛争などにより医療アクセスの確保に困難が生じている国・地域に対する人道支援に取り組んでいます。
2022年度、ウクライナおよび周辺国への人道支援として、当社の抗てんかん剤「エクセグラン錠100mg(一般名:ゾニサミド)」の提供を決定しました。現地政府や業界団体等と連携し、本薬剤を必要とする人々への供給を進め、2022年6月時点で、ウクライナに350万錠を、ウクライナからの避難民を多く受け入れるモルドバ共和国に2万錠を提供しました。モルドバ共和国への提供にあたっては、稲畑産業株式会社の協力を得て、モルドバ国立医薬品保管庫に迅速に輸送しました。

モルドバ共和国に提供した医薬品 イメージ

モルドバ共和国に提供した医薬品

偽造医薬品対策

違法に製造・流通された医薬品(偽造医薬品)は、治療効果が得られないばかりではなく、予期せぬ副作用により患者さんの生命を危険にさらすことがあります。その脅威は世界的に増大しており、流通量および標的となる地域は拡大しています。また、これらの流通は、犯罪組織やテロ組織の財源になりやすいことから、国際的な問題となっています。
当社は、製品の安全性と安心を確保するために、他の製薬企業と共に業界団体や国際機関の取組に参画し、最新の情報収集・情報交換に努めています。具体的な取組は、以下のとおりです。

国際機関と連携した偽造医薬品対策の取組

製薬防護研究所(PSI: Pharmaceutical Security Institute)への参画

偽造医薬品に対する情報収集と対策推進のために、当社は、製薬防護研究所(PSI: Pharmaceutical Security Institute)に加盟し、グローバルに事業を展開する国内外の製薬企業と連携しています。PSIは、2001年に米国で設立された非営利組織であり、企業と各国当局との橋渡しなどに協力するほか、偽造医薬品に関する情報発信を進めています。

インターポール(国際刑事警察機構)と連携した医薬品犯罪への取組

当社は、グローバルに事業を展開する製薬企業29社(うち国内企業は、当社を含む8社)と共に、インターポール(国際刑事警察機構)に対し、2013年から3年間で総額450万ユーロの寄付を行いました。
寄付金は、偽造医薬品に関する一般市民への周知活動や、医薬品犯罪に特化した捜査員の育成などを含む医薬品犯罪防止のための取組に活用されました。
インターネットを通じた取引の増加など、医薬品犯罪はさらに多様化しています。当社は、業界団体の活動等を通じて、インターポールとの緊密な情報共有を行い、医薬品犯罪の防止に取り組んでいます。