印刷(PDF/122KB)はこちらから 2010年12月21日 研究開発

がんペプチドワクチン「WT4869」の共同開発について

大日本住友製薬株式会社【本社:大阪市、社長:多田 正世】(以下、大日本住友製薬)と中外製薬株式会社【本社:東京都中央区、社長:永山 治】(以下、中外製薬)は、治療用がんペプチドワクチン「WT4869」について、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)を対象とした国内第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を実施しますので、お知らせします。

大阪大学大学院医学系研究科 杉山治夫教授らのこれまでの研究により、WT1(Wilms' tumor gene 1)タンパクが、白血病やほぼ全ての種類の固形がんで高発現し、種々のがんでのがん抗原になっていることが示唆され、WT1ペプチドを用いたがん免疫療法の有用性が検討されています。杉山教授らの基礎的、臨床的な研究成果に基づき、大日本住友製薬と中外製薬は、両社の共同研究により新規ペプチドであるWT4869を創製しました。WT4869は、WT1を標的としたがんワクチン療法に用いられます。WT4869の投与により、WT1に特異的な細胞傷害性T 細胞(CTL)が誘導され、WT1タンパクを発現するがん細胞をCTL が傷害することで、WT1タンパクを発現する白血病や種々のがんに対して治療効果を発揮することが期待されます。

MDS は、遺伝子異常を生じた造血幹細胞の単一増殖に起因する疾患(血液がんの一種)であり、臨床所見として血球減少と経過中に急性骨髄性白血病への進展を特徴とする難治性疾患です。国内のMDS 総患者数は1998 年の調査で約7,100人、有病率は10万人あたり2.7人と推定されていますが、次第に増加傾向にあると考えられています。国内では、MDSは骨髄移植以外に治癒可能な治療法は確立されておらず、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患であることから、新規薬剤の開発が待望されています。

大日本住友製薬ならびに中外製薬は、両社協調して本剤の開発を進め、一日でも早くMDS 患者さんの治療に貢献できるよう努力して参ります。また、今後は他のがん種へも適応を拡大していきたいと考えています。

以上

(ご参考)

がんペプチドワクチン療法:
がんペプチドワクチン療法とは、がん細胞に特有のペプチド(タンパク質の断片)を患者さんに投与し、患者さん自身の免疫細胞にがん細胞を攻撃させる治療方法です。大阪大学 杉山教授らは、WT1遺伝子がさまざまな種類のがんの発生に関与していることを明らかにするとともに、2000年にWT1ペプチドワクチン療法の基礎研究の成果をJournal of Immunology 誌(2000年2月15日号)に発表されています。

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