印刷(PDF/201KB)はこちらから 2014年12月25日 研究開発

非定型抗精神病薬ルラシドンの統合失調症を対象にした第Ⅲ相臨床試験(PASTEL試験)の解析結果の速報について

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、社長:多田 正世)は、非定型抗精神病薬「ルラシドン塩酸塩」(一般名、以下、「ルラシドン」)の統合失調症に対する日本での承認取得を目的とした第Ⅲ相臨床試験(PASTEL試験、以下、「本試験」)において、解析結果の速報を得ましたので、お知らせします。

本試験は、統合失調症患者457名を対象とした多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較試験であり、ルラシドン40mg/日投与群、ルラシドン80mg/日投与群、プラセボ投与群に分け(各群約150名)、6週間投与したときのルラシドンの有効性および安全性を検討しました。

本試験の主要評価項目は陽性・陰性症状評価尺度(PANSS:Positive and Negative Syndrome Scale)※1合計スコアのベースラインからの変化量であり、当該変化量を指標として、ルラシドンのプラセボに対する優越性を評価しました。また、副次評価項目として臨床全般印象評価尺度-重症度※2(CGI-S:Clinical Global Impressions-Severity of Illness scale)のベースラインからの変化量についても評価しました。

主要評価項目である投与6週間後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量において、主要な解析対象集団(modified ITT※3:modified Intent to Treat, n=430)ではルラシドン40mg/日投与群はプラセボ投与群に対し、統計学的に有意な改善(40mg/日投与群:-18.1、プラセボ投与群:-13.0)を示しました。80mg/日投与群(-17.5)はプラセボ投与群に対し改善を示しましたが、統計学的に有意ではありませんでした。

一方、治験薬が投与された最大の患者集団での追加解析(ITT, n=446)では、投与6週間後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量において、ルラシドン40mg/日投与群および80mg/日投与群はいずれもプラセボ投与群に対し、統計学的に有意な改善(40mg/日投与群:-17.8、80mg/日投与群:-17.3、プラセボ投与群:-12.1)を示しました。本解析結果はルラシドンの統合失調症における有効性を示す最も適したデータであると考えており、本データも含めて日本におけるルラシドンの製造販売承認申請を行う予定です。

なお、副次評価項目である投与6週間後のCGI-Sのベースラインからの変化量においては、いずれの投与量においても統計学的に有意な改善は認められませんでした。

本試験におけるルラシドン投与群での有害事象は全般的に軽度であり、これまでのルラシドンの統合失調症に対する臨床試験と一致する結果を得ました。有害事象の発現率は、ルラシドン40mg/日投与群:68.7%、ルラシドン80mg/日投与群:69.5%、プラセボ投与群:64.2%でした。ルラシドン投与群での中止脱落率(27.2%)はプラセボ投与群(27.6%)より低く、有害事象による中止脱落はわずかでした(ルラシドン投与群:7.2%、プラセボ投与群:10.6%)。

本試験は、40mg~160mg/日の投与範囲においてルラシドンの統合失調症に対する有効性および安全性を示した7番目の臨床試験です。今後、本試験の結果に基づき、日本におけるルラシドンの製造販売承認申請の準備を進めます。また、本試験の結果は一部アジア地域での申請にも有用なデータになると考えています。

なお、本件による当社の2015年3月期の連結業績に与える影響は軽微です。

  • ※1 陽性・陰性症状評価尺度(PANSS):主として統合失調症の精神状態を全般的に把握することを目的とした評価尺度。陽性尺度7項目、陰性尺度7項目、総合精神病理尺度16項目の合計30項目で構成され、各項目は1(症状なし)から7(最重度)までの7段階で評価される。
  • ※2 臨床全般印象評価尺度-重症度(CGI-S):疾患の重症度を1(正常)から7(非常に重度の精神疾患)の7段階で評価する尺度。
  • ※3 ロラゼパムまたは他の睡眠導入剤を服用後12時間以内のデータを除外した場合。

(ご参考)

【PASTEL(Pan Asia Study To Evaluate Lurasidone)試験について】
本試験は日本、韓国、台湾、マレーシアで実施された多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較試験で、DSM-IV-TR※4基準に基づいて統合失調症と診断された患者において、プラセボに対するルラシドン40mg/日、ルラシドン80mg/日の6週間投与の有効性および安全性を検討したものです。合計457名の患者が、ルラシドン40mg/日投与群150名、ルラシドン80mg/日投与群155名、プラセボ投与群152名に割り付けられました。主要評価項目は、投与6週間後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量、副次評価項目は投与6週間後のCGI-Sのベースラインからの変化量でした。
上記試験に引き続き、非盲検下において、ルラシドン40mg/日、またはルラシドン80mg/日を26週間投与し、ルラシドンの安全性および有効性を検討する長期投与試験を実施しています。

  • ※4 DSM-IV-TR:米国の精神医学会によって定義されている精神疾患の分類と診断のマニュアルと基準。

【ルラシドンについて】
ルラシドンは、当社が創製した独自な化学構造を有する非定型抗精神病薬であり、ドーパミン-2、セロトニン-2A、セロトニン-7 受容体に親和性を示し、アンタゴニストとして作用します。セロトニン-1A 受容体にはパーシャルアゴニストとして作用します。また、ヒスタミンとムスカリン受容体に対してはほとんど親和性を示しません。
ルラシドンは、2010年10月に米国、2012年6月にカナダ、2013年8月にスイス、2014年3月に欧州およびオーストラリアにおいて、成人の統合失調症に対する適応症の承認を取得しています。
当社の米国子会社であるサノビオン・ファーマシューティカルズ・インクが、2011年2月より米国で、また同社のカナダ子会社であるサノビオン・ファーマシューティカルズ・カナダ・インクおよび英国子会社であるサノビオン・ファーマシューティカルズ・ヨーロッパ・リミテッドが、それぞれ2012年9月にカナダで、2014年8月に英国で、「LATUDA®」として発売しています。なお、スイスにおいては提携先の武田薬品工業株式会社の100%出資子会社である武田ファルマAG(スイス)が2013年9月に、同じく「LATUDA®」として発売しています。

【統合失調症について】
統合失調症は精神疾患の一つで、国内では約70万人が罹患していると言われています。統合失調症は、幻覚・妄想などの陽性症状、情動の平板化・思考の貧困・意欲の低下などの陰性症状、注意力の低下・情報処理能力障害などの認知機能障害等、様々な精神症状を発現する精神疾患として知られています。

以上

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