印刷(PDF/238KB)はこちらから 2016年01月26日 研究開発

注意欠如・多動症(ADHD)・過食性障害(BED)治療剤dasotraline(SEP-225289)の薬物乱用傾向に関する試験結果の科学誌掲載について

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、社長:多田 正世)の米国子会社であるサノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)は、1月25日(米国時間)、注意欠如・多動症(ADHD)・過食性障害(BED)を対象に後期臨床試験を実施中のdasotraline(一般名、開発コード:SEP-225289、以下「本剤」)の薬物乱用傾向を評価した試験(第Ⅰ相臨床試験、以下「本試験」)の結果が、「Drug & Alcohol Dependence」のオンライン版に掲載されたことを発表しましたので、お知らせします。
なお、「Drug & Alcohol Dependence」は、the College on Problems of Drug Dependenceがスポンサーの国際的な科学誌であり、当該科学誌の冊子版においても掲載される予定です。

薬物乱用傾向の試験は、中枢神経系に影響を及ぼす薬剤の乱用傾向を評価するために実施されます。本剤8mg、16mgおよび36mgの単回投与は、乱用傾向を評価する主要評価項目および多くの副次評価項目においてプラセボと比較し有意差がなく、メチルフェニデート40mgおよび80mgの単回投与との比較においては有意に低い結果でした。

サノビオン社のExecutive Vice President and Chief Medical Officer, Head of Global Clinical Development for Sumitomo Dainippon Pharma GroupであるAntony Loebel(アントニー・ローベル)は、次のように述べています。「薬物乱用傾向を評価することは、中枢神経系に影響を及ぼす薬剤、特にドパミンおよびノルエピネフリンの神経伝達系に作用する可能性のある薬剤の臨床試験の過程において極めて重要です。私たちは、本試験の結果を喜ばしく思っており、将来、現在実施中の臨床試験の結果を発表できるときを楽しみにしています。」

本試験は、ランダム化、二重盲検、ダブルダミー、6期クロスオーバー試験であり、非常習的に中枢神経刺激薬を使用している健常成人48名を対象に、本剤8mg、16mgおよび36mgの単回投与における乱用傾向について、プラセボならびにメチルフェニデート40mgおよび80mgと比較しました。なお、本試験では乱用傾向を評価する目的で、本剤16mgおよび36mgが投与されており、そのうち本剤36mgは想定される治療用量を超える用量です。

薬力学的効果は、投与前から投与72時間にわたって、薬物嗜好の視覚的評価尺度(Drug Liking Visual Analog Scale、以下「Drug Liking VAS」)を用いて評価され、このうち最大効果発現時(Emax)におけるDrug Liking VASスコアを主要評価項目としました。これは、薬物乱用傾向の評価試験における薬物乱用傾向の標準的な評価法であり、感度の高い指標の一つと考えられています。

メチルフェニデート40mgおよび80mgにおけるDrug Liking VASスコアは、本剤8mg(P<0.001)、16mg(P<0.001)および36mg(P<0.01)と比較し有意に高いことが示されました。本剤8mgおよび16mgにおける副次評価項目においては、プラセボとの間に有意差は認められませんでした。また、本剤36mgは、副次評価項目のひとつであるOverall Drug Liking (Emin) VASにおいてプラセボおよびメチルフェニデートと比較し統計学的に有意に薬物嗜好性が低いことが示されました。なお、メチルフェニデート40mgおよび80mgの最大効果が、プラセボと比較して有意に高かったことから、本試験の評価方法と対象集団が薬物乱用傾向の評価に適切であったことが確認されました。

本剤8mgおよび16mgでは、総じて良好な忍容性が示され、両用量における有害事象の発現率は、両用量における不眠および本剤16mgにおける頭痛を除きプラセボと同程度でした。想定される治療用量を超える本剤36mgならびにメチルフェニデート40mgおよび80mgにおいては、有害事象の高い発現率が観察されました。

※ 薬物嗜好の視覚的評価尺度(Drug Liking Visual Analog Scale):薬物の嗜好性を評価する尺度であり、50を中立スコアとし、0(強く嫌う)から100(強く好む)で評価されます。

以上

(ご参考)

【注意欠如・多動症について】

注意欠如・多動症(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)は、不注意(散漫性、物忘れ)、多動性・衝動性(そわそわする、落ち着きのなさ)を特徴とする発達障害です。4歳から17歳の小児のうち約11%がADHDと診断されています。ADHDの小児の60%は、成人期まで症状が継続すると言われており、18歳から44歳の成人の4.4%は、ADHDによる症状や障害を患っています。
小児におけるADHDは、社会的拒絶や学業の低下に関係しています。ADHDに罹患した小児は、罹患していない小児よりも、交友関係に困難を抱える可能性が10倍であり、傷病の頻度や重症度も高いと言われています。成人においては、症状は社会的または職業上の機能を低下させます。研究によれば、ADHDは高い失業率と関係しており、労働者は、職場での障害、生産性の低下および行動問題を経験していることが示されています。また、ADHDに罹患している成人は、トラウマ、職場での傷病および交通事故のリスクが高く、他の精神疾患を併発したり、別居や離婚の可能性が高くなる傾向があります。

【過食性障害について】

過食性障害(BED:Binge-Eating Disorder)の基本的な特徴は、反復する過食エピソードであり、3か月間にわたって少なくとも週に1回は過食が生じます。過食は、他とはっきり区別される時間帯に異常に大量の食物を摂取することであると定義されており、通常、食べたいという欲求のコントロールの欠如を伴います。過食は、苦痛を感じ、また①通常よりもとても早く食べる、②苦しいくらい満腹になるまで食べる、③身体的に空腹を感じていないにもかかわらず大量の食物を食べる、④自分が大量に食べていることに恥ずかしさを感じるため一人で食べる、⑤後になって、自己嫌悪、罪責感または抑うつ気分を感じる、のうち少なくとも3つに該当する特徴があります。米国における成人男女の過食の生涯有病率は、それぞれ2.1%、3.6%です。
BEDは、通常、青年期または若年成人期に生じますが、それ以降に生じることもある疾患です。BEDは、社会的孤立、自己嫌悪、仕事上の問題、肥満、病状(胃食道逆流症、関節障害、心臓病、2型糖尿病、睡眠時の呼吸障害)のような精神的、身体的な多くの問題を引き起こします。また、これらの疾患による医療施設の利用、罹患率および死亡率を増加させます。

【dasotralineについて】

本剤は、サノビオン社の自社開発品であり、ドパミンおよびノルエピネフリンの再取り込みを阻害する新規のDNRIです。半減期は47時間から77時間と長く、24時間の投与間隔で持続的な治療効果が得られることが期待されています。現在、成人および小児におけるADHDならびに成人のBEDを対象に臨床試験を実施しています。

以上

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