印刷(PDF/165KB)はこちらから 2018年07月04日 研究開発

小児固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療を対象としたチオテパの製造販売承認申請について

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)は、7月3日付けで、小児固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療を対象としたチオテパ(一般名、開発コード:DSP-1958)の国内における製造販売承認申請を行いましたので、お知らせします。

チオテパは、エチレンイミン系に属する抗腫瘍性アルキル化剤で、DNA合成阻害作用を有します。国内では1958 年に「テスパミン®注射液」として住友化学工業株式会社(現、住友化学株式会社)が販売を開始し、1984 年に住友製薬株式会社(現、大日本住友製薬株式会社)に承継されました。しかし、2008年にチオテパ原薬の製造が中止されたため、2009年に販売を中止し、現在国内では販売されていません。

国内では、チオテパは造血幹細胞移植(HSCT)の前治療の適応を有していませんでしたが、欧米での使用に倣い、他の化学療法剤と併用して臨床使用されていました。2009年の国内販売中止後、2010年に欧州でチオテパ製剤が造血幹細胞移植の前治療薬として承認されたこともあり、学会等から臨床使用について多くの要望が出されました。それを受け、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」においてチオテパは医療上の必要性が高いと判断され、厚生労働省から開発企業の募集が行われました。当社は2013年9月に厚生労働省に開発の意思を申し出、2016年11月より薬物動態試験として国内第1相試験を実施し、今回、その試験結果を含めて申請しました。なお、当社はチオテパの悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療を対象とした申請の準備も進めています。

当社は、このたびの申請が承認されることにより、アンメット・メディカル・ニーズ(未だ満たされない医療ニーズ)の高い、自家造血幹細胞移植の前治療を必要とする小児固形腫瘍の患者さんに新たな治療選択肢をお届けし、医療に貢献できることを期待しています。

(ご参考)

【造血幹細胞移植(HSCT)について】

HSCTとは、抗がん剤や放射線照射を極量まで増やす骨髄破壊的な前治療を行って難治がんを根絶した後に、正常な造血幹細胞を経静脈的に輸注して造血能の再構築を図る強力な補助療法です。患者さん自身の造血幹細胞をあらかじめ採取・保存して移植する自家HSCT では、移植された造血幹細胞に対する免疫反応を懸念する必要がないため、前治療の目的は、骨髄の最大耐用量を超える抗がん剤を用いた大量化学療法で、腫瘍細胞をできる限り根絶させることです。一般社団法人日本造血細胞移植データセンターによると、国内のHSCT 件数は、1986 年~2016 年までの累積で93,902件、そのうち自家HSCTは33,527件報告されています。

【小児固形腫瘍について】

小児がん診療ガイドライン2016年版によると、国内の小児がんの年間発症数は約2,500名とされ、白血病などの造血器腫瘍を除く小児固形腫瘍の年間発症数は約1,300名とされています。小児固形腫瘍は成人の固形腫瘍と比較して化学療法に対する感受性が良好であり、HSCTを伴う大量化学療法の有効性に期待が寄せられ、日常臨床の一環として移植が実施されています。一般社団法人日本造血細胞移植データセンターによると、小児固形腫瘍におけるHSCT件数は、1991~2016年までの累積で3,276件、そのうち自家HSCTは3,058件報告されています。

【医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議について】

「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」は、欧米等では使用が承認されているが、国内では承認されていない医薬品や適応について、製薬企業による未承認薬・適応外薬の開発を促進することを目的として設置された会議です。厚生労働省が主催し、医学的・薬学的な学識経験者で構成されています。

以上

報道関係者の皆さまからのお問い合わせ