印刷(PDF/172KB)はこちらから 2019年01月10日 研究開発

非定型抗精神病薬ルラシドンの統合失調症を対象にしたフェーズ3試験(JEWEL試験)の良好な解析結果の速報について

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)は、非定型抗精神病薬「ルラシドン塩酸塩」(一般名、以下、「ルラシドン」)の統合失調症に対する日本での承認取得を目的としたフェーズ3試験(JEWEL試験、以下、「本試験」)において、主要評価項目を達成するとともに、良好な忍容性を示したという解析結果速報を得ましたので、お知らせします。

本試験は、統合失調症患者483名を対象とした多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較試験であり、ルラシドン40mg/日投与群(247名)またはプラセボ投与群(236名)に分け、6週間投与したときのルラシドンの有効性および安全性を検討しました。

本試験の結果、主要評価項目である投与6週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS:Positive and Negative Syndrome Scale)※1合計スコアのベースラインからの変化量において、主要な解析対象集団(ITT:Intent to Treat、478名)では、ルラシドン投与群(245名)はプラセボ投与群(233名)に対し、統計学的に有意な改善(ルラシドン投与群:-19.3、プラセボ投与群:-12.7、p値<0.001)を示しました。また、副次評価項目である投与6週間後のCGI-S※2のベースラインからの変化量においても、ルラシドン投与群はプラセボ投与群に対し、統計学的に有意な改善を示しました。

本試験においてルラシドンは総じて良好な忍容性を示し、ルラシドン投与群での有害事象は全般的に軽度であり、これまでのルラシドンの統合失調症に対する臨床試験と同様の結果を得ました。有害事象の発現割合は、ルラシドン投与群:47.0%、プラセボ投与群:51.1%でした。ルラシドン投与群での中止割合(19.4%)はプラセボ投与群(25.4%)より低く、有害事象による中止割合は同等でした(ルラシドン投与群:5.7%、プラセボ投与群:6.4%)。

当社は、本試験の結果と、既に終了した双極Ⅰ型障害うつ※3を対象としたフェーズ3試験の結果に基づき、2019年度上期に日本においてルラシドンの製造販売承認申請を行う予定です。

※1 陽性・陰性症状評価尺度(PANSS):主として統合失調症の精神状態を全般的に把握することを目的とした評価尺度です。陽性尺度7項目、陰性尺度7項目、総合精神病理尺度16項目の合計30項目で構成され、各項目は1(症状なし)から7(最重度)までの7段階で評価されます。

※2 臨床全般印象評価尺度-重症度(CGI-S):疾患の重症度を1(正常)から7(非常に重度の精神疾患)の7段階で評価する尺度です。

※3 双極Ⅰ型障害うつを対象にしたフェーズ3試験の解析結果速報は、2017年6月9日付けのプレスリリースでお知らせしています。

(ご参考)

【JEWEL(Japan and Europe Working to Evaluate Lurasidone)試験について】

本試験は日本を含む数か国で実施された多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較フェーズ3試験であり、DSM-IV-TR※4基準に基づいて統合失調症と診断された患者において、プラセボに対するルラシドン40mg/日の6週間投与の有効性および安全性を検討したものです。合計483名の患者が、ルラシドン40mg/日投与群247名、プラセボ投与群236名に割り付けられました。主要評価項目は、投与6週間後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量、副次評価項目は各評価時点でのベースラインからのPANSS合計スコア変化量、CGI-S変化量などでした。
上記試験に引き続き、非盲検下において、ルラシドン40mg/日~80mg/日(漸増漸減法)を12週間投与し、ルラシドンの安全性および有効性を検討する長期投与試験を実施しています。

※4 DSM-IV-TR:米国の精神医学会によって定義されている精神疾患の分類と診断のマニュアルと基準です。

【ルラシドンについて】

ルラシドンは、当社が創製した独自な化学構造を有する非定型抗精神病薬であり、ドパミンD2、セロトニン5-HT2A、セロトニン5-HT7受容体に親和性を示し、アンタゴニストとして作用します。セロトニン5-HT1A受容体にはパーシャルアゴニストとして作用します。また、ヒスタミンH1およびムスカリンM1受容体に対してはほとんど親和性を示しません。
ルラシドンは、統合失調症治療剤として、2010年に米国、2012年にカナダ、2013年にスイス、2014年に欧州およびオーストラリア、2016年に台湾、ロシア、シンガポール、タイおよび香港、2017年にブラジルおよびUAEで承認されています。また双極Ⅰ型障害うつに対する適応追加の承認を、2013年に米国、2014年にカナダ、2017年にロシア、ブラジルおよび台湾で取得しています。当社は、日本においては統合失調症および双極性障害うつに対する承認申請を2019年度上期に予定しており、中国においては統合失調症を予定適応症とした新薬承認申請中です。

【統合失調症について】

統合失調症は慢性的で深刻な疾患であり、しばしば脳に重篤な障害を引き起こします。日本では約80万人が罹患していると言われています。その症状には、幻覚・妄想、普通ではない考え方および興奮した体の動きならびに感情表現、注意力、記憶機能または実行機能の低下などがあります。

以上

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