印刷(PDF/188KB)はこちらから 2019年04月09日 研究開発

愛媛大学と大日本住友製薬によるマラリアワクチン開発に関わるGHIT Fundからの助成決定

国立大学法人愛媛大学プロテオサイエンスセンター(センター長:坪井 敬文、以下「愛媛大学」)と大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)は、マラリア発病予防を目的とした新規マラリアワクチン抗原の共同研究に取り組んでおり、このたび、新規マラリアワクチン抗原である「PfRipr5」(以下「本抗原」)を見出しました。
愛媛大学は、European Vaccine Initiative(ドイツ、EVI)およびiBET(ポルトガル)との間で、「新規赤血球期マラリアワクチンの開発プロジェクト」(以下、「本プロジェクト」)を進めており、このたび、本プロジェクトが公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(日本、Global Health Innovative Technology Fund、以下「GHIT Fund」)の助成案件に選定されました。なお、大日本住友製薬は、ワクチン開発に関わる免疫アジュバント技術の研究開発経験に基づいて、アドバイザーとして、本プロジェクトをサポートしています。

本抗原は、熱帯熱マラリア原虫のタンパク質由来の新規の赤血球期ワクチン抗原候補で、抗原多型が無いために本抗原を用いたワクチンは高い有効性が期待されています。本プロジェクトの関係者は、非臨床試験が完了次第、速やかに臨床試験を開始することを目指しています。

マラリアは、蚊で媒介される寄生虫病で、死亡者数は2005年頃から減少傾向に転じましたが、依然として発展途上国を中心に世界で毎年数億人が罹り、死亡者数も40万人以上に及んでいます。マラリア対策の切り札としてワクチン開発がこの40年間以上取り組まれてきましたが、蚊からヒトへの感染を防ぐ第一世代のマラリアワクチンによる有効性は約30%と低く、より有効な次世代マラリアワクチンが切望されています。第一世代のワクチンとは異なる作用点を持ち、マラリア原虫の赤血球への侵入を阻害することによってマラリアの発病を防ぐ赤血球期ワクチンは、流行地におけるマラリア防御の切り札と考えられていますが、ワクチン抗原に対する流行地マラリア原虫の抗原多型のため、研究開発が進んでいませんでした。

愛媛大学は、本プロジェクトの成功により、これまで困難を極めていたマラリア赤血球期ワクチンの開発を加速することができ、マラリア原虫の発育を多段階で止めることのできる次世代のマルチステージマラリアワクチンを開発することにより、グローバルヘルスの最重要課題の一つであるマラリア対策に貢献できることを期待しています。
大日本住友製薬は、愛媛大学との共同研究にて得られた新規マラリアワクチン抗原および大日本住友製薬の持つ革新的な免疫アジュバント技術を活用して、次世代ワクチンの研究開発を行うことにより、グローバルヘルスに貢献することを目指します。

【参考】

○PfRipr5
PfRipr5は、愛媛大学と大日本住友製薬の共同研究によって見出された、熱帯熱マラリア原虫に発現する蛋白質Rh5 interacting protein(PfRipr)の部分アミノ酸配列を有する新規マラリア発病予防ワクチン抗原候補です。これまでのマラリア発病予防ワクチン候補は、抗原多型によって有効性が示されませんでしたが、PfRipr5はマラリア流行地分離株において高度に保存されているために有効性が期待されることが愛媛大学の研究によって明らかにされています。

○公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金 (GHIT Fund:ジーヒット・ファンド)
GHIT Fundは、日本で初めての日本政府、複数の製薬会社、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカムトラスト、国連開発計画(UNDP)が参画する国際的な官民パートナーシップです。GHIT Fundは、開発途上国の人々を苦しめるマラリア、結核、顧みられない熱帯病などの制圧を目指して、投資やパートナーシップによる開発ポートフォリオの管理に取り組んでおり、日本の製薬会社や研究機関と連携して、新規治療薬、ワクチン、診断薬の創出に注力しています。
HP:https://www.ghitfund.org

○European Vaccine Initiative(EVI:ヨーロピアン・ワクチン・イニシアティブ)
EVIは、貧困による疾患や新たな感染症に対するワクチンの開発を支援するNPO団体であり、本プロジェクト全体の管理とアジュバント(免疫増強剤)を用いた製剤化を担当します。
HP:http://www.euvaccine.eu

○iBET(アイベット)
iBETは、バイオテクノロジーおよびライフサイエンス分野における非営利の研究集約型企業です。iBETは1989年に設立され、Health&PharmaおよびFood&Healthに関連する分野での連携を確立することにより、大学と産業界の研究を橋渡ししています。主な専門分野は、ワクチン候補である組み換えタンパク質およびウイルス様粒子などの複雑で機能性バイオ医薬品の製造および精製などで、プロセスのモニタリングおよび制御、製品の特性評価のための分析およびツールの開発にも取り組んでいます。
iBETは本プロジェクトにおいて、ワクチンに使用するための高品質なPfRipr 5タンパク質の合成を担当します。
HP:http://www.ibet.pt

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