印刷(PDF/299KB)はこちらから 2022年11月22日 研究開発

GARDPと住友ファーマ、化合物の抗菌活性試験実施に関する契約を締結

ジュネーブ/大阪発 - Global Antibiotic Research and Development Partnership(グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ、本部:スイス・ジュネーブ、代表:マニカ・バラセガラム、以下「GARDP」)と住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博、以下「住友ファーマ」)は、抗菌活性を有する新たな化合物を発見することを目指し、住友ファーマの化合物ライブラリーを用いたGARDPによる抗菌活性試験(スクリーニング)実施に関する契約を締結しました。今後、住友ファーマから提供された化合物のスクリーニングは、韓国パスツール研究所(所在地:キョンギド・ソンナム市、以下「韓国パスツール研究所」)にて、最適化されたハイ・スループット・スクリーニング(化合物を高効率で選別する技術)を用いて実施されます。本契約は、新規抗菌薬の開発と抗菌薬への持続可能なアクセスを担保することにより、深刻な細菌感染症に立ち向かうGARDPの取り組みを推し進めるものです。

深刻な細菌感染症に対して、開発中の抗菌薬はわずかであり、薬剤耐性(AMR)の脅威は今や全世界的な公衆衛生上の大きな課題となっています。薬剤耐性の感染症で毎年130万人近くの人々が命を落としており1、重症細菌感染症の中でも、特にグラム陰性菌感染症はWHO(世界保健機関)により世界的な公衆衛生上の優先課題として特定されています。

本プロジェクトでは住友ファーマが有する、最新の創薬化学を駆使して蓄積された化合物ライブラリーから、これまでに抗菌活性スクリーニングが行われていない化合物のスクリーニングを実施します。抗菌活性スクリーニングの対象となるのは、WHOが公表した「優先的に対処すべき病原菌」リスト2において新たな抗菌薬の開発が急務とされた細菌です。GARDPは本スクリーニングを通じ、次の開発段階に進むべき新たな化合物を選定することを目指します。

GARDPのサイエンティフィック・ディレクター、ローラ・ピドック教授は、「新規化合物へのアクセスは、私たちに多くの可能性をもたらします。本契約を通じ、住友ファーマの化合物ライブラリーから新たな抗菌薬を発見できるチャンスに恵まれたことに大変感激しています。GARDPのスクリーニング戦略に基づき、この2 年という短期間で、10万超の化合物と天然抽出物のスクリーニングに成功しました。 私たちは、新しい抗菌薬の特定に着実に近づいています」と述べています。

住友ファーマの執行役員シニアリサーチディレクターである志水勇夫博士は、「住友ファーマは、CSR経営の重要課題としてグローバルヘルスへの貢献を掲げています。世界で最も汎用されているカルバペネム系抗菌薬のひとつであるメロペネムの創製企業として、とりわけ薬剤耐性は国際的に取り組むべき重要な社会課題と認識しており、その取り組みの一環としてカルバペネム耐性菌感染症治療薬KSP-1007(新規β-ラクタマーゼ阻害薬)を米国で開発中です。今回、GARDPが実施する抗菌活性スクリーニングに住友ファーマの化合物ライブラリーとこれまでの感染症研究のノウハウを通して貢献できることを大変嬉しく思います」と述べています。

(ご参考)
GARDP(Global Antibiotic Research and Development Partnership:グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ)について
GARDPは、健康に最大の脅威をもたらす薬剤耐性感染症の新規治療薬を開発するスイスに本部を置く非営利団体です。抗菌薬を必要とするすべての人が、有効で入手可能な価格で治療を受けられるようにするため、2016年に世界保健機関(WHO)およびDNDi (Drugs for Neglected Diseases initiative:顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)により発足し、2018年に法人化されました。入院中の成人や子供たちの感染症、新生児の敗血症、性感染症に焦点を当て、薬剤耐性感染症を克服するための新しい治療法を開発しています。GARDPは、オーストラリア、ドイツ、日本、ルクセンブルグ、モナコ、オランダ、南アフリカ、スイス、英国、国境なき医師団、ウェルカム・トラスト、民間財団から資金提供を受けて活動しています。 GARDPはGARDP Foundationとして法人登録されています。
www.gardp.org

住友ファーマについて
住友ファーマは、人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献することを企業理念としています。この理念を実現するため、また、日本はもちろん世界の方々に革新的で有用な医薬品をお届けするため、新薬の研究開発に全力を注いでいます。詳しくは、住友ファーマのホームページ(https://www.sumitomo-pharma.co.jp)をご覧ください。

韓国パスツール研究所(Institut Pasteur Korea)について
韓国パスツール研究所は、韓国とフランスにおける科学提携の一環として2004年に設立された非営利の感染症研究機関です。主力研究分野である、細胞レベルおよび画像を活用したスクリーニングプラットフォームを通じ、疾患のメカニズムの解明や新たな治療薬の開発を加速することで、新型コロナウィルスや中東呼吸器症候群(MERS)を含む新興感染症から、ジカ熱、ウィルス性肝炎、結核、薬剤耐性菌、ガン、顧みられない病気に至る世界的な保健問題の解決に取り組んでいます。韓国パスツール研究所は、韓国と国際的なバイオ医薬品に対する研究の橋渡し役として、世界的かつ学際的なプロジェクトを促進するための基礎技術の提供により、韓国の科学、知識、技術の発展と世界的な感染症対策に寄与する創薬研究の最前線に立っています。25カ国出身の33名のメンバーで構成される韓国パスツール研究所は、パスツール・ネットワークのアジア太平洋地域における重要拠点として、早期の創薬に注力しています。
www.ip-korea.org

出典
1. THE LANCET:Global burden of bacterial antimicrobial resistance in 2019: a systematic analysis
2. WHO publishes list of bacteria for which new antibiotics are urgently needed

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