印刷(PDF/175KB)はこちらから 2009年06月18日 医薬品

ファブリー病治療剤「リプレガル」の試験結果の発表について

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、社長:多田 正世)は、このたび、Shire Human Genetic Therapies 社(本社:米国マサチューセッツ州、以下「シャイアー HGT社」)がファブリー病治療剤「リプレガル®」〔一般名:アガルシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)〕に関して、ファブリー病女性患者の症状に効果的であるとする観察研究の結果が医学雑誌「Genetics in Medicine」に掲載されたことを発表しましたので、その内容をお知らせします。

シャイアー HGT 社が6月16日(現地時間)に、発表したプレスリリースの日本語訳を別紙に添付しています。プレスリリースの正式言語は英語であり、その内容は、http://www.shire.comを参照ください。

リプレガル®は、ファブリー病の酵素補充療法に用いるα-ガラクトシダーゼ酵素製剤で、国内では大日本住友製薬がシャイアー HGT社から導入・開発し、2007年2月よりファブリー病治療剤「リプレガル®点滴静注用3.5mg」として販売しています。

シャイアー HGT社プレスリリース(日本語訳)

ファブリー病の女性の腎機能、心機能、その他の臨床症状の改善に対するリプレガル(アガルシダーゼアルファ(遺伝子組み換え))0.2mg/kgの治療の有用性を支持する研究結果が発表されました

Genetics in Medicine に発表されたファブリー病女性患者に対する最大かつ最長の酵素補充療法(ERT)試験結果より

2009年6月16日 - (当ニュースに関して米国は対象外であり、米国メディアには配信していません。) - 世界的なスペシャリティー・バイオファーマ企業であるシャイアーplcの事業部門のひとつであるシャイアー・ヒューマン・ジェネティック・セラピーズ(HGT)は、「Genetics in Medicine」誌2009 年6 月号にリプレガル0.2mg/kgを使った酵素補充療法(ERT)が、ファブリー病女性患者の症状に効果的であるとする観察研究の結果が掲載された、と発表しました。この中では、腎機能の安定化(慢性腎臓病(CKD)ステージ2の患者では腎機能の改善)、心機能および痛みの改善などの臨床的有用性が認められました。
著者は「この試験の患者集団を必ずしも一般のファブリー病女性患者集団に置き換えることはできない、という可能性には注意しながらも、36例の女性を4年間にわたり追跡した当試験は、何らかの兆候や症状を持ったファブリー病女性患者に対してはアガルシダーゼアルファによる酵素補充療法を考慮すべき、ということを示している。」と結論付けています。

この試験の共同著者である、クリストフ・カンプマン(Christoph Kampmann)教授(ヨハネス・グーテンベルグ大学小児病院ライソゾーム病センター、ドイツ・マインツ市)は「この研究により、アガルシダーゼアルファの長期治療による腎機能の安定化、心機能の改善を示す有用かつ測定可能なデータを示すことができた。これは、ファブリー病の女性にとって心不全に対するリスクの低減などの重要なベネフィットをもたらす可能性がある。」と述べています。

通常はファブリー病の女性は「保因者」と考えられ本来の臨床像が過小評価されることにより、診断および治療開始が遅れることが指摘されています。未治療のファブリー病女性の寿命は一般集団と比較して15年短くなるという報告があります1

カンプマン教授は「男性と比較すると女性の発症時期や症状発現率などはより多様であるが、女性も男性と同様にファブリー病による影響を受ける可能性があり、アガルシダーゼアルファによる長期治療は女性にとっても有益であろう、ということを明らかにした。」と述べています。

主な試験結果:
アガルシダーゼアルファは、ファブリー病の女性の腎機能を安定化させ、心機能を改善し、疼痛と疾患重症度を低下します。

腎機能
対象患者の90%以上で、腎機能の安定化あるいは改善が見られました。平均eGFR(estimated glomerular filtration rate:推算糸球体濾過量)はベースラインで 91.0 ± 31.2mL/min/1.73 m2/year であり、試験期間を通じて安定していました。ベースライン時に腎機能に中等度の低下があった患者のサブグループ(CKD のステージ2 、 60< eGFR< 90ml/min/1.73m2)では、治療1 年後にeGFRの有意な増加が示され、その後4年間を通じて維持されました。ベースライン時に300mg/dayを上回る蛋白尿を示した患者においては、蛋白尿の減少も確認されました。

心構造および心機能
ベースライン時に左心室肥大(LVH)を呈した患者では1年間のリプレガルの投与により左心室心筋重量(LVM)が有意に減少し、その後4年間維持しました。このうち52%の患者においては20%以上のLVMの減少を示しました。また、ベースライン時には約3分の1(36例中13例)の患者が心不全の重症度分類でNYHA III度(中等度)と診断されましたが、多くの症例では心不全による臨床症状の改善がもたらされました。アガルシダーゼアルファによる4年間の治療後に、NYHA III度にとどまっていた患者はこのうちわずか1例であり、それ以上に悪化を認めた症例はありませんでした。

疼痛および疾患重症度
疾患の重症度および生活の質(Quality of Life: QOL)に関する有用性が示されました。
ファブリー病の重症度の指標である、マインツ重症度スコア指数(Mainz Severity Score Index:MSSI)では、治療12カ月後において有意に改善し(p< 0.01)、その後4年間を通じて改善を示しました。36例の患者のうち12例(33%)のMSSI スコアがより軽症へと移行しました。また、簡易疼痛調査(Brief Pain Inventory:BPI)での「最強の痛み」という項目においてもスコアの低下が認められました:ベースラインでのスコアは 4.6± 2.9 でしたが、12カ月後には 3.3± 2.9 に低下しました(P=0.001)。

試験を通じてリプレガルの忍容性は高く、1例で軽度の投与時関連反応が見られました。
また治療期間中のいかなる時点においても、抗アガルシダーゼアルファ抗体は検出されませんでした。試験中に5例に脳卒中が起きました。(このうち3例には試験開始前に、脳卒中の既往がありました)。

研究の限界
この研究は、単一施設で実施された非盲検の観察的臨床研究です。この施設は専門紹介医療機関であり、したがって患者の母集団は、一般の女性のファブリー病患者の母集団を代表していない可能性があります。この研究では、同時に試験対象となる無治療対照群が含まれておらず、ファブリー病の女性における臓器障害に対するアガルシダーゼアルファの効果を結論付けるものではありません。

研究の背景
公表されるデータは、酵素補充療法に対する、女性ファブリー病患者の長期効果を評価するために実施された、前向き、単一施設、非盲検の臨床研究の分析結果を示すものです。
すべての登録患者は、48カ月の期間にわたりアガルシダーゼアルファによる治療を受けました。

アガルシダーゼ アルファは、2週間毎に、0.2mg/kgを40分以上かけて点滴静注されました。
患者は、ベースラインおよび12カ月間隔で評価されました。以下の測定がベースラインおよび12カ月間隔で行われました:eGFR およびタンパク尿、血漿中Gb3および尿中Gb3、左室心筋重量およびニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)機能スコア、簡易疼痛調査(Brief Pain Inventory:BPI)およびマインツ重症度スコア指数(Mainz Severity Score Index:MSSI)。

eGFRは簡易MDRD式を使用して計算されました。反応者解析は、試験終了時とベースライン時の比較で行われ、mL/min/1.73 m2/year の単位で表示されています。タンパク尿は24時間蓄尿に基づいたものです。LVMは、標準的な心エコー検査法による評価、Devereux らの方法に準じた計算が行われ、LVMi in g/m2.7 の単位で表示されています。

ファブリー病について
ファブリー病は、ライソゾームに存在する酵素の欠損により、代謝されるべき脂質が体内で蓄積し多彩な臨床症状を示す、ライソゾーム病(LSD)の一種です。ファブリー病は男性および女性に発症し、激痛、灼熱痛、皮膚病変、胃腸障害、難聴、視覚障害、心機能障害または腎機能障害など、数多くの症状が現れる疾患です。ファブリー病患者の症状、重症度、発病時期に多様性があります。ファブリー病は全世界で8,000 人から10,000 人の患者に影響を与えていると推定され、腎臓病、心臓病または脳血管障害の罹患および早期死亡のリスクファクターとなっています。

リプレガル(注射用アガルシダーゼ アルファ)について
リプレガルは遺伝子活性化技術を用いてヒト培養細胞から生産されたヒト型アルファガラクトシダーゼ酵素製剤です。アルファガラクトシダーゼはグロボトリアオシルセラミド(Gb3)という脂質を分解・代謝する機能が障害を受けた遺伝疾患であるファブリー病の患者で欠損または欠乏します。リプレガルは、ファブリー病と診断された患者に対する長期の酵素補充療法に用いられます。リプレガルによる酵素補充療法は一般的に忍容性が高く、ファブリー病のさまざまな症状に有用性を示します。
リプレガルは欧州、カナダ、アルゼンチン、日本を含む世界 40カ国以上の国々で承認されています。リプレガルは米国では未承認です。
リプレガルによる長期にわたる腎機能、心機能の保護効果や心不全のリスクの低減作用が明らかにされてきています。また、男性、女性、小児(7歳以上)のファブリー病患者の疼痛を改善することにより生活の質を向上します。
リプレガルはその長期にわたる忍容性とともに、短い投与時間、少ない注射液量という簡便性も兼ね備えます。

参考文献
1. Whybra C, Kampmann C, Krummenauer F, Ries M et al. The Mainz Severity Score Index: a new instrument for quantifying the Anderson-Fabry disease phenotype, and the response of patients to enzyme replacement therapy. Clin Genet 2004; 65:299 - 307

以上

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