印刷(PDF/167KB)はこちらから 2010年12月09日 医薬品

統合失調症治療剤「LATUDA(ルラシドン塩酸塩)」の第Ⅲ相試験(PEARL 3試験)の詳細結果について

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、社長:多田 正世)の米国子会社であるサノビオン社は、2010年10月28日(米国時間)に米国食品医薬品局(FDA)より販売許可を取得した統合失調症治療剤「LATUDA®(一般名:ルラシドン塩酸塩)」について、2010年12月8日(米国時間)に3本目の第Ⅲ相試験(PEARL 3 試験)の詳細結果を発表しました。

PEARL 3試験は、全世界で2,900人以上の被験者に参加いただいたPEARL(Program to Evaluate the Antipsychotic Response to Lurasidone)と名づけた成人の統合失調症に対するLATUDA®の安全性と有効性を評価する臨床試験プログラムの一つであり、世界の64施設で実施した488人の統合失調症患者さんを対象とした6週間投与のプラセボ対照二重盲検比較試験です。
PEARL 3 試験の結果、LATUDA®の80mg および160mg の2 つの固定用量は、統合失調症の症状に対して、有効性に関する主要評価項目および副次評価項目の両方において、プラセボに対して統計学的に高い改善を示しました。また、LATUDA®の中止脱落率もプラセボと比べて低く、忍容性は良好でした。なお、LATUDA®の160mg/日は未申請用量であり、承認されていません。

PEARL 3 試験の結果は2010年12月8日(米国時間)に、米国神経精神薬理学会(American College of Neuropsychopharmacology:ACNP)第49回年次大会(開催地:フロリダ州マイアミ)で発表されました。なお、試験結果の速報は2010年11月12日に開示しています。

カリフォルニア大学アーバイン校の精神科学、人間行動学教授で、当試験の発表者であるSteven G. Potkin(スティーブン・G・ポトキン)博士は次のように述べています。
「LATUDA®の販売許可によって、統合失調症の患者さんにとって新しい治療選択肢が加わりました。PEARL 3 試験のデータは、LATUDA®の明確な有効性に加え、体重およびメタボリック指標の変動がプラセボと同程度であることを示しており、治療困難で深刻な本疾患の症状管理に対する本剤の今後の役割について、私たちの理解を更に深めることになります。」

【PEARL 3 試験の結果について】

PEARL 3試験はプラセボ比較試験であり、実薬群はLATUDA®80mg/日、160mg/日、フマル酸クエチアピン徐放錠600mg/日の3つです。フマル酸クエチアピン徐放錠は試験精度を確認するための参照薬として使用されており、LATUDA®とフマル酸クエチアピン徐放錠を直接比較したものではありません。当試験は、DSM-IV基準に基づいて統合失調症と診断され、PANSS総合点数が80以上の精神症状の急性増悪を示す患者さんを対象に実施しました。

LATUDA®の80mg、160mgの両投与群は、主要評価項目であるPANSS (Positive and Negative Syndrome Scale)の総合点において、投与4日目という早い段階より改善が見られ、投与6週目においてプラセボ投与群に対して有意に高い有効性を示しました(LATUDA®80mg投与群:-22.2、160mg投与群:‐26.5、プラセボ投与群:-10.3)。また、LATUDA®80mg投与群の65%、160mg投与群の79%、プラセボ投与群の41%が、投与6週目の試験終了時点(Last Observation Carried Forward: LOCF分析)におけるPANSS総合点において、投与前と比べて20%以上の改善を認めました。

また、副次評価項目のCGI-S (Clinical Global Impressions Severity scale)においても、LATUDA®投与群は、投与1週目より、プラセボ投与群に対して有意に高い有効性を示しました。CGI-Sスコアの投与前後の変化量については、投与6週目において、LATUDA®80mg投与群、160mg投与群、プラセボ投与群は、それぞれ-1.5、-1.7、-0.9でした。

この試験においても安全性の総合プロファイルに変化はありませんでした。LATUDA®の両投与群は、プラセボ投与群に対して中止脱落率が低く(LATUDA®80mg投与群:29%、160mg投与群:23%、プラセボ投与群:39%)、忍容性は良好でした。有害事象による中止脱落率もプラセボ投与群と同程度でした(LATUDA®80mg投与群:4%、160mg投与群:3%、プラセボ投与群4%)。

LATUDA®の両投与群で最も多く見られた副作用(発現率が5%以上で、プラセボ投与群の2倍以上認められたもの)は、アカシジア(LATUDA®80mg投与群:8.0%、160mg投与群:7.4%、プラセボ投与群:0.8%)、悪心(LATUDA®80mg投与群:8.0%、160mg投与群:6.6%、プラセボ投与群:3.3%)、パーキンソン様症状(LATUDA®80mg投与群:5.6%、160mg投与群:6.6%、プラセボ投与群:0.0%)、めまい(LATUDA®80mg投与群:4.8%、160mg投与群:5.8%、プラセボ投与群:1.7%)、眠気(LATUDA®80mg投与群:4.0%、160mg投与群:6.6%、プラセボ投与群:0.8%)でした。

LATUDA®の両投与群の体重に対する影響はプラセボ投与群と同程度でした。投与6週目の試験終了時点(LOCF分析)における体重増加量の平均値は、LATUDA®の両投与群が0.6kgであり、プラセボ投与群は0.1kgでした。
LATUDA®の両投与群の総コレステロール値および他の脂質の変化量の中央値も、プラセボ投与群と同程度でした。投与6週目の試験終了時点(LOCF分析)における総コレステロールの変化量の中央値は、プラセボ投与群が-7.0mg/dLに対して、LATUDA®80mg投与群は-4.0mg/dL、160mg投与群は-7.5mg/dLであり、トリグリセリドの変化量の中央値については、プラセボ投与群が-9.0mg/dLに対して、LATUDA®80mg投与群は-2.0mg/dL、160mg投与群は-9.0mg/dLでした。

サノビオン社のAntony Loebel(アントニー・ローベル)臨床開発担当上級副社長は次のように述べています。「PEARL 3試験はLATUDA®の統合失調症に対する有効性を示す5番目のプラセボ比較試験であり、その結果は臨床試験のデータベースに重要なデータとして加わります。この試験において、1日1回夕食後という投与方法においても、LATUDA®の両投与群は十分忍容性を示しました。」

【フマル酸クエチアピン徐放錠の結果について】

フマル酸クエチアピン徐放錠600mg/日投与群は、投与6週目のPANSS総合点(-27.8、プラセボ投与群-10.3)およびCGI-S(-1.7、プラセボ投与群-0.9)において、プラセボ投与群に対して有意に高い有効性を示しました。クエチアピン徐放錠投与群の79%、プラセボ投与群の41%が、投与6週目の試験終了時点(LOCF分析) におけるPANSS総合点において、投与前と比べて20%以上の改善を認めました。フマル酸クエチアピン徐放錠の中止脱落率は、プラセボ投与群39%に対し19%でした。
フマル酸クエチアピン徐放錠投与群で最も多く見られた副作用(発現率が5%以上で、プラセボ投与群の2倍以上認められたもの)は、めまい(13.4%、プラセボ投与群1.7%)、眠気(13.4%、プラセボ投与群0.8%)、体重増加(6.7%、プラセボ投与群0.8%)、便秘(6.7%、プラセボ投与群 2.5%)、口渇(7.6%、プラセボ投与群0.8%)、関節痛(5.9%、プラセボ投与群0.8%)、上気道感染症(5.0%、プラセボ投与群0.8%)でした。
フマル酸クエチアピン徐放錠投与群の投与6週目の試験終了時点(LOCF分析)における体重増加量の平均値は、プラセボ投与群0.1kgに対して、2.1kgでした。フマル酸クエチアピン徐放錠投与群では、プラセボ投与群に対して、脂質パラメータの大幅な増加が認められました(コレステロールの変化量の中央値:6.0mg/dL、プラセボ投与群-7.0mg/dL;トリグリセリドの変化量の中央値:8.0mg/dL、プラセボ投与群-9.0mg/dL)。
(注)フマル酸クエチアピン徐放錠はアストラゼネカ社の製品です。

【LATUDA®(一般名:ルラシドン塩酸塩)について】

LATUDA®は、2010年10月28日(米国時間)に米国食品医薬品局(FDA)より統合失調症に対する承認を取得した非定型抗精神病薬です。
LATUDA®の初回推奨用量は1日40mg で、食後投与です。タイトレーションは不要です。LATUDA®はこれまでの6週間投与の比較試験において1日40mg~120mgまでの用量で効果が認められています。1日最大推奨用量は80mg です。1日160mg の投与量は未申請であり、承認されていません。

【統合失調症について】

統合失調症は慢性的に日常生活に支障をきたす深刻な脳の疾病であり、成人の100人に1人の割合で発症し、米国では約240万人の患者数です。統合失調症は、幻覚、妄想、思考障害、感情低下、意欲低下などの症状だけでなく、記憶力、注意力の低下、または計画能力、整理能力、決断能力の障害などの問題があります。

以上

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