印刷(PDF/209KB)はこちらから 2013年11月05日 医薬品
非定型抗精神病薬「LATUDA(ルラシドン塩酸塩)」の双極Ⅰ型障害うつ対象第Ⅲ相試験(PREVAIL 1・2試験)結果の医学誌掲載について
大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、社長:多田 正世)の米国子会社であるサノビオン社は、米国において販売中の非定型抗精神病薬「LATUDA®(一般名:ルラシドン塩酸塩)」について、双極Ⅰ型障害うつに対する、単剤療法ならびにリチウムまたはバルプロ酸との併用療法を対象としたプラセボ対照の2本の第Ⅲ相試験(PREVAIL 1およびPREVAIL 2試験)の結果が、米国精神科学会(American Psychiatric Association)が発行する著名な医学誌である「American Journal of Psychiatry」(以下、「AJP」)の2013年10月30日(米国時間)発行号(オンライン版)に掲載されたことを発表しましたので、お知らせします。なお、両試験は、米国におけるLATUDA®の双極Ⅰ型障害うつの適応追加承認の取得をサポートしたピボタル試験です。
サノビオン社のExecutive Vice President and CMOであるAntony Loebel(アントニー・ローベル)は次のように述べています。「双極性障害うつに対して一般的に用いられる気分安定薬、抗うつ薬、および抗精神病薬の有効性については、現在、限られたデータしかないため、医療従事者にとって診療のための指針が少ない状況です。このたびの2本の試験結果の発表は、双極性障害うつに対するリチウムまたはバルプロ酸との併用療法および単剤療法におけるLATUDA®の治療効果、安全性および忍容性について、確固たるエビデンスを提供し、この課題に対処するのに役立つものと信じています。」
AJPの同じ号に掲載された解説において、イスラエルのBipolar Disorders Clinic, Hadassah Medical Center(ハダサー医療センター双極性障害クリニック)のRobert Belmaker(ロバート・ベルメイカー)医師は、「双極性障害うつは、臨床上の重要な課題です。また、本疾患に対して抗うつ薬が有用であろうというエビデンスはますます説得力がなくなっているように思われます。双極性障害の患者さんに対して有効であり、かつ、代謝およびその他の副作用が少ないということは、本領域における大きな進歩です。」と指摘しています。
双極Ⅰ型障害うつの患者さんを対象とした2本の6週間投与プラセボ対照二重盲検第Ⅲ相試験の結果、LATUDA®投与群は、単剤療法および併用療法の両方において、主要評価項目であるMontgomery-Asberg Depression Rating Scale(MADRS)のベースラインからの変化量に関して、投与6週目の試験終了時点において、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意なうつ症状の減少を示しました。さらに、LATUDA®投与群は、副次的評価項目である、Clinical Global Impression Bipolar Version, Severity of Illness(CGI-BP-S)スコアの投与6週目でのベースラインからの変化量に関して、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意な改善が見られました。
両試験において、LATUDA®投与群は、投与6週目における、その他の副次的評価項目である、反応率、寛解率、Hamilton Anxiety Rating Scale(HAM-A)、Sheehan Disability Scale(SDS)、Quick Inventory of Depressive Symptomatology-Self-Report(QIDS-SR16)、Quality of Life, Enjoyment and Satisfaction Questionnaire-Short Form(Q-LES-Q-SF)の各指標に関して、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意な改善が見られました。
Massachusetts General Hospital(マサチューセッツ総合病院)の双極性障害クリニックおよび調査プログラムのディレクターであるGary Sachs(ゲイリー・サックス)医師は次のように述べています。「双極性障害うつに対する効果的で忍容性の高い治療の提供は喫緊の課題です。効果が低かったり、耐え難い副作用があることにより、患者さんが処方された治療薬の服薬を嫌がったり、飲み続けられなかったりした場合、その苦しみは長期にわたります。効果的な治療が可能となった場合、患者さんや患者さんを取り巻く人々に福音をもたらします。」
Case Western Reserve University(ケース・ウエスタン・リザーブ大学)の精神医学教授であり、University Hospitals Case Medical Center(大学病院ケースメディカルセンター)の気分障害プログラムのディレクターであるJoseph Calabrese(ジョセフ・カラブレーゼ)医師は次のように述べています。「気分安定薬は、躁症状に対する効果から、しばしば双極性障害治療の基本薬となりますが、うつ症状に対しての効果は限られています。そのため、併用療法が行われますが、残念ながら、気分安定薬に他の薬剤を追加した場合の有効性については、エビデンスがほとんどありません。本試験は、LATUDA®がリチウムまたはバルプロ酸という既存治療に追加された場合、うつ症状の有意な改善が見られ、体重増加やその他のメタボリック指標の変化量は少ないという事を示しています。」
以上
(ご参考)
【単剤療法試験(PREVAIL 2試験)について】
本試験は6週間投与プラセボ対照無作為二重盲検試験であり、成人の双極Ⅰ型障害うつの患者さんが、LATUDA®1日20mg - 60mg投与群(N=166) および1日80mg - 120mg投与群 (N=169)、またはプラセボ投与群 (N=170) に無作為に割り付けられました(平均MADRS総合スコアのベースライン:30.3、30.6 vs. 30.5)。 LATUDA®の単剤療法群は、両群共に、主要評価項目であるMADRSの6週目におけるベースラインからの平均変化量に関して、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意な減少を示しました(-15.4、-15.4 vs. -10.7; p<0.001; MMRM分析)。 また、副次的評価項目であるCGI-BP-Sの6週目におけるベースラインからの変化量においても、LATUDA1日20mg - 60mg投与群および1日80mg - 120mg投与群は、プラセボ投与群と比較して、統計学的に有意なスコアの減少を示しました(-1.8、-1.7 vs. -1.1; p<0.001; MMRM分析)。 本試験において、LATUDA®投与群で5%以上発現し、かつプラセボ投与群より多く認められた有害事象は、LATUDA® 1日20mg - 60mg投与群、1日80mg - 120mg投与群およびプラセボ投与群でそれぞれ、嘔気(10.4%, 17.4%, 7.7%)、頭痛(14.0%, 9.0%, 11.9%)、アカシジア(7.9%, 10.8%, 2.4%)、眠気(4.3%, 6.6%, 4.2%)、鎮静(3.0%, 7.2%, 1.8%)、口渇(6.1%, 3.6%, 4.2%)および嘔吐(2.4%, 6.0%, 1.8%)でした。LATUDA®投与群は、体重、BMI、脂質および血糖コントロールにおいて、低い変化量を示しました。
【併用療法試験(PREVAIL 1試験)について】
本試験は6週間投与プラセボ対照無作為二重盲検試験であり、成人の双極Ⅰ型障害うつの患者さんが、LATUDA®1日20mg - 60mg投与群(N=183)またはプラセボ投与群(N=165)による6週間併用療法(リチウムまたはバルプロ酸による前治療に追加)に無作為に割り付けられました(平均MADRS総合スコアのベースライン:30.6 vs. 30.8)。 LATUDA® 1日20mg - 120mg投与群(リチウムまたはバルプロ酸併用療法)は、主要評価項目であるMADRSの6週目におけるベースラインからの平均変化量に関して、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意な減少を示しました(-17.1 vs. -13.5; p<0.005; MMRM分析)。 また、副次的評価項目であるCGI-BP-Sの6週目におけるベースラインからの変化量においても、LATUDA®投与群は、プラセボ投与群と比較して、統計学的に有意なスコアの減少を示しました(-1.96 vs. -1.51; p< 0.003; MMRM 分析)。 本試験において、LATUDA®投与群で5%以上発現し、かつプラセボ投与群より多く認められた有害事象は、LATUDA®投与群およびプラセボ投与群でそれぞれ、嘔気(17.5% vs. 11.0%)、眠気(8.7% vs. 4.3%)、振戦(8.2% vs. 4.3%)、アカシジア(7.7% vs. 4.3%)、不眠(7.1% vs. 5.5%)でした。LATUDA®投与群は、体重、BMI、脂質および血糖コントロールにおいて、低い変化量を示しました。
【American Journal of Psychiatryについて】
American Journal of Psychiatryは米国精神科学会(American Psychiatric Association)が発行する月刊医学誌で、論文の引用回数も多く、精神医学分野では最も権威のある医学誌の一つです。
【双極性障害について】
双極性障害は、衰弱性の感情起伏を特徴とする精神障害とされ、米国において約1,040万人の成人が罹患しています。双極性障害は世界で障害の主要原因の6番目に挙げられており、米国においても障害の主要原因の10位以内に挙げられています。 双極Ⅰ型障害は、双極性障害のうち、躁状態または混合状態が少なくとも1回認められることを特徴とします。また、多くの場合、1回以上のうつ症状が認められます。 双極性障害うつは、双極性障害のうつ症状を指します。双極性障害の多くの患者さんは、躁症状よりもうつ症状を呈する傾向があります。双極性障害に関連するうつ症状は、重大な作業能力の低下や、家庭および社会機能の低下につながります。また、うつ症状は、自殺のリスクを増加さえると共に、直接的、間接的な医療コストの増加に関係します。 双極性障害うつの症状として、抑うつ、無関心、喜びの欠如、著しい体重減少、不眠、倦怠感、無価値観、集中力の低下、繰り返す自殺企図が報告されています。
【ルラシドンについて】
ルラシドンは、大日本住友製薬が創製した独自な化学構造を有する非定型抗精神病薬であり、ドーパミン-2、セロトニン-2A、セロトニン-7受容体に親和性を示し、アンタゴニストとして作用します。セロトニン-1A受容体にはパーシャルアゴニストとして作用します。また、ヒスタミンとムスカリン受容体に対してはほとんど親和性を示しません。 本剤は、当社グループのグローバル戦略品であり、米国においては、当社の米国子会社であるサノビオン社が統合失調症に対する承認を取得し、2011年2月より「LATUDA®」として販売しており、カナダにおいても同適応症で2012年9月より販売しています。また、米国においては2013年6月に米国食品医薬品局(FDA)より双極Ⅰ型障害うつの適応追加が承認されています。 欧州においては、提携先の武田薬品工業株式会社が、2012年9月に欧州医薬品庁(EMA)に統合失調症を適応症とした販売許可申請を提出し、同年10月に受理されています。スイスにおいては、武田薬品工業株式会社の100%出資子会社である武田ファルマAG(スイス)が、2013年8月に承認を取得しました。 国内においては、大日本住友製薬が統合失調症に対する承認取得を目指して第Ⅲ相臨床試験を実施しており、双極Ⅰ型障害うつおよび双極性障害メンテナンスについても2013年9月より第Ⅲ相臨床試験を開始しました。さらに、オーストラリア、台湾においても統合失調症に対して承認申請中であり、中国および東南アジアについても承認取得を進める計画です。
以上
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