印刷(PDF/168KB)はこちらから 2022年09月29日 研究開発

北里研究所と住友ファーマとの共同研究 カルバペネム耐性菌感染症治療薬KSP-1007/メロペネム配合剤の Qualified Infectious Disease Product (QIDP)/Fast Track 指定

学校法人北里研究所(本部:東京都港区、理事長:小林 弘祐、以下「北里研究所」)と住友ファーマ株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:野村 博、以下「住友ファーマ」)は、このたび、両者の共同研究を通じて創出し、住友ファーマが米国でカルバペネム耐性菌感染症治療薬として開発中(フェーズ1試験実施中)であるKSP-1007(開発コード)とメロペネムの配合剤(以下「本剤」)が、米国食品医薬品局(以下「FDA」)から細菌性の複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、院内肺炎/人工呼吸器関連肺炎に対する適格感染症治療製品(Qualified Infectious Disease Product:以下「QIDP」)およびFast Track指定を受けましたので、お知らせします。

抗生物質インセンティブ法(Generating Antibiotic Incentives Act:GAIN法)に基づくQIDP指定を受けたことにより、本剤の開発プログラムは、米国開発において優先審査指定を受ける資格を有し、最終的にFDAの承認を受けた場合には、米国薬事規制上の独占期間(データ保護期間)が5年間延長されることになります。また、Fast Track指定のもと、FDAとのより綿密な連携や承認申請における逐次審査が可能となります。

住友ファーマは、まずは複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症を予定適応症として本剤の開発を進める予定です。

*本剤のフェーズ1 試験開始については、2022年1月13日付けのプレスリリースをご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20220113.html
北里研究所と住友ファーマとの共同研究は、2017年10月から10年間の予定で実施しています。本共同研究事業の詳細については、2017年10月24日付けのプレスリリース「薬剤耐性(AMR)菌感染症治療薬の創製を目的とした共同研究の実施について」および記者会見説明資料をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20171024.html(プレスリリース)
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/assets/pdf/pr20171024.2.pdf(記者会見説明資料)

(ご参考)
KSP-1007について
KSP-1007は、産学官の連携事業である国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「医療研究開発革新基盤創成事業(Cyclic Innovation for Clinical Empowerment:CiCLE)」に係る研究開発課題において実施している共同研究で見出されました。カルバペネム系抗菌薬を分解する細菌由来の酵素であるβ-ラクタマーゼを広域かつ強力に阻害する作用を有しており、世界的に汎用されているカルバペネム系抗生物質製剤メロペネム水和物(住友ファーマの国内製品名「メロペン®」)との配合剤とすることにより、カルバペネム耐性菌による感染症に対しても有効な治療選択肢となることが期待されています。

カルバペネム耐性菌感染症について
カルバペネム耐性菌感染症は、重症感染症治療において重要な抗菌薬であるメロペネムを始めとするカルバペネム系抗菌薬に対して耐性を示す腸内細菌科細菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ等による感染症の総称です。これらの耐性菌は、世界保健機関(WHO)が発表した「新規治療薬が緊急に必要な薬剤耐性菌」のリストにおいて「最高レベル(Critical)」のカテゴリーに分類されています。

複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、院内肺炎/人工呼吸器関連肺炎について
複雑性尿路感染症は、泌尿生殖器の機能的・構造的異常、カテーテルなどの人工物留置、基礎疾患がある場合に発症する、慢性または再発性の尿路感染症とされています。また、膀胱炎、腎盂腎炎、ウロセプシス、カテーテル関連尿路感染症などに大別されます。
複雑性腹腔内感染症は、感染源の臓器から腹腔、腸間膜などの腹部の無菌領域に広がり、膿瘍形成または腹膜炎を引き起こす重篤な感染症です。
院内肺炎は、入院48時間以降に新規に発症した肺炎と定義され、人工呼吸器関連肺炎は人工呼吸管理開始48時間以上経過した後に発症した肺炎でありICUにおける最頻の感染症です。

医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)について
産学官連携により、我が国の力を結集し、医療現場ニーズに的確に対応する研究開発の実施や創薬等の実用化の加速化等が抜本的に革新される基盤(人材を含む)の形成、医療研究開発分野でのオープンイノベーション・ベンチャー育成が強力に促進される環境の創出を推進することを目的とする国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の事業です。
北里研究所と住友ファーマの共同研究「薬剤耐性(AMR)菌感染症治療薬を目的とした創薬研究」(代表機関:住友ファーマ)は、2017年にCiCLEの第1回公募の研究開発課題に採択されました。

北里研究所について
北里研究所は、「いのちを尊(たっと)び、生命の真理を探究し、実学の精神をもって社会に貢献する」を理念とし、学祖北里柴三郎からノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智へと続く感染制御の伝統と実績をもって社会に貢献する使命を果たすべく、教育・研究・医療に注力しています。詳しくは、北里研究所のホームページ(https://www.kitasato.ac.jp)をご覧ください。

住友ファーマについて
住友ファーマは、人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献することを企業理念としています。この理念を実現するため、また、日本はもちろん世界の方々に革新的で有用な医薬品をお届けするため、新薬の研究開発に全力を注いでいます。詳しくは、住友ファーマのホームページ(https://www.sumitomo-pharma.co.jp)をご覧ください。

以上

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