印刷(PDF/335KB)はこちらから 2023年03月23日 サステナビリティ

住友ファーマと国立国際医療研究センター、薬剤耐性(AMR)対策と抗菌薬適正使用の実現に向けた国際研究の共同プロジェクト(第2回)をベトナムで開始

住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博、以下 「住友ファーマ」)と国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(所在地:東京都新宿区、理事長:國土 典宏、以下 「NCGM」)はこのほど、ベトナムにおける抗菌薬適正使用と薬剤耐性(AMR)対策に貢献するため、共同して第2回となる薬剤感受性サーベイランス研究(以下「本研究」)を開始しましたので、お知らせします。

近年、薬剤耐性の問題は国際的に取り組むべき社会課題として認識されています。特にベトナムでは、緑膿菌やアシネトバクター属を代表とする各種グラム陰性桿菌の抗菌薬に対する耐性率が非常に高いとの報告があり、その改善が喫緊の課題となっています。
このような背景のもと、2019年に両者が始動した本研究(第1回)※1では、ベトナム国内の10病院施設を対象に合計1,200株を超える重要グラム陰性桿菌4菌種(大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター属)の新鮮臨床分離株を収集し、ベトナムで臨床使用される主要抗菌薬に対する感受性を測定、病院施設ごと・地域ごと等の最新の薬剤耐性状況を調査しました。得られたデータに基づいたアンチバイオグラム※2を共有すると共に、先進国で普及しているPK-PD理論※3活用に関する技術訓練など、各病院施設がエビデンスに基づいて抗菌薬を選択・使用するためのキャパシティービルディングに取り組み続けています。
薬剤感受性サーベイランス研究は、継続的な実施により疫学情報をアップデートすることが重要です。ポストコロナを見据えて対面での日越交流が再開されつつある中、ベトナム保健省の認可のもと、第2回となる本研究を実施することとしました。第1回から継続して参画する10病院施設を含む計11病院施設を対象とし、初回研究の結果を踏まえ、より現地の医療ニーズに沿った研究内容への補強を図るとともに、現地への社会実装を重視した新たな研究実施体制により実施します。

本研究(第2回)の開始に当たり、2023年2月12日に、ベトナム・ハノイ市にて、ベトナム保健省や在ベトナム日本国大使館をはじめとする日越のステークホルダーを招いてキックオフセレモニーを開催しました。なお、本セレモニーは、日越の交流と医療発展を一層促進する性質から、日越外交関係樹立50周年事業および日本ASEAN友好協力50周年記念事業の認定を受けての開催となりました。

住友ファーマは、本研究の継続的な共同実施とその結果の共有を通じて、各医療機関が治療に最適な抗菌薬を選択する際の判断材料として、日常検査における薬剤感受性データ活用の重要性の認識をさらに浸透させることを目指します。

NCGMは、こうした産学官連携を通じて、新しい研究開発プロジェクトを生み出す場としての国際臨床研究プラットフォーム運営をより積極的に展開しつつ、感染症や難病、顧みられない疾患をはじめとする多種多様な疾患における国際臨床試験を通じた医薬品の研究開発促進事業を実施するとともに、公益性の高い企業活動を後押しし、日本の国際医療展開と産業振興に貢献していきたいと考えています。

※1 本研究(第1回)開始時の詳細については、2019年7月9日付けのプレスリリースをご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/assets/pdf/ne20190709.pdf
※2 アンチバイオグラム(Antibiogram):特定の病院ごと(または複数施設の集計としての地域ごと、国ごと等)で、一定期間に分離された細菌の各種抗菌薬に対する感性率(%Susceptible)を一覧にしたもの。先進国の病院ではその整備、活用が進んでおり、「細菌感染症の経験的治療(初期治療)における適切な抗菌薬選択」や「耐性菌の監視による感染対策、抗菌薬の適正使用の評価」等に用いられています。
※3 PK-PD理論:薬物動態(Pharmacokinetics:PK)と薬力学(Pharmacodynamics:PD)を組み合わせて関連づけることで、薬剤の用法・用量と作用(有効性、副作用)の関係を明らかにし、薬剤の有効性や安全性の観点で最適な用法・用量を設定し、適正な臨床使用を実践するための理論。特に抗菌薬ではその研究が基礎・臨床ともに進んでおり、公知化された理論が薬物治療設計の参考とされる機会が増しています。

(ご参考)
本研究の名称
「ベトナムにおいて分離された各種グラム陰性細菌のin vitro 薬剤感受性および薬剤耐性機序に関するサーベイランス研究」
(英名:Surveillance study of in vitro antibiotic susceptibility and antibiotic resistance mechanism of various Gram-negative bacteria isolated in Vietnam)

ベトナムにおける住友ファーマの抗菌薬事業について
住友ファーマは、2017年より、Zuellig Pharma社を通じて、ベトナムを含む東南アジア5カ国および香港において、当社が創製したカルバペネム系抗生物質製剤「MERONEM®」(一般名:メロペネム水和物、国内販売名:「メロペン®」)を販売しています。また、当社は、医薬品の成長市場であるアジア事業の強化に注力しており、2021年にベトナム(ホーチミン市)にベトナム駐在員事務所を開設しました。

NCGMのAMR対策について
NCGMは、日本のAMR対策アクションプランに基づき設立したAMR臨床リファレンスセンターが、臨床疫学事業と情報・教育支援事業を行っています。抗菌薬使用量などの全国のサーベイランスシステムを構築し、収集した情報をもとに、各地域と連携して耐性菌アウトブレイク対策の実地支援を行っています。また、ガイドラインやマニュアルの作成、一般向け、医療従事者向けの啓発素材の作成、情報提供を行っています。

以上