印刷(PDF/265KB)はこちらから 2023年04月10日 研究開発

うつ病検出・重症度評価支援プログラム「SWIFT」(仮称)が厚生労働省による初めてのプログラム医療機器の優先審査対象品目に指定

慶應義塾大学医学部の岸本泰士郎特任教授の研究グループ、住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)およびi2medical合同会社(開発責任者:Kuo-ching Liang)は、3者共同で実用化に向けて取り組んでいる「うつ病検出・重症度評価支援プログラム『SWIFT』(仮称)(以下「本品」)」が、厚生労働省による初めてのプログラム医療機器(SaMD)の優先審査対象品目(注1)に指定されたことを、お知らせします。

1.概要

本品は、リストバンド型のウェアラブルデバイスから収集される患者の生体活動および生体データを解析し、精神疾患の世界的診断基準である「精神疾患の診断・統計の手引き第5版」(DSM-5)で定義される抑うつエピソードを満たすか否かの推定結果を出力するとともに、ハミルトンうつ病評価尺度(注2)の推定点数を出力することにより、うつ病または双極性障害の抑うつエピソード(注3)の検出および重症度評価を支援するシステムです。医師が診断する際に判断材料となる情報を提供する医療機器を目指して開発を進めています。

近年、人工知能技術等のデジタル技術を活用したプログラム医療機器の開発が世界的な潮流となっています。しかし、日本における開発・実用化は遅れをとっている現状から、産学官が連携して速やかに開発を行えるような仕組みが望まれていました。この度、2023年3月29日付けで、本品が初の「プログラム医療機器に係る優先的な審査等の対象品目」に指定されました。この制度は、プログラム医療機器実用化促進のため、画期性や有用性などの要件を満たしたプログラム医療機器(SaMD)を優先的に審査するもので、厚生労働省が昨年9月に開始した制度です。この指定により、本品の承認審査において優先相談、事前評価の充実、優先審査やコンシェルジュがおかれるといった他の品目よりも優先した取り扱いを受けられることになります。

2.今後の展開

本研究開発では、慶應義塾大学医学部が多くの精神科病院、診療所と協力して精緻な臨床データを収集、i2medical社が抑うつエピソードの有無の判定や重症度推定を行うための最適な機械学習アルゴリズムの構築を、住友ファーマがシステム開発、臨床開発、薬事申請準備および事業化検討を担当しています。本研究チームは、現在実施中の臨床研究を加速し、十分量のデータを蓄積するとともに、推定精度を向上させ、3年以内に治験を開始することを目指しています。

3.特記事項

本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)医工連携・人工知能実装研究事業「リストバンド型ウェアラブルデバイスデータを用いてうつ病スクリーニングおよび重症度評価を可能とするソフトウェア医療機器の開発」の支援を受けています。

【用語解説】

(注1)プログラム医療機器(SaMD)の優先審査指定制度:厚生労働省が2022年度に試行的に導入した制度であり、画期性や有用性、世界に先駆けて日本で開発・申請する意思といった要件を満たしたプログラム医療機器(SaMD)を優先的に審査する制度です。2022年9月に公募が開始され、2023年3月、本品を含む3品目が同制度による初の指定を受けました。

(注2)ハミルトンうつ病評価尺度:うつ病の重症度を17項目で評価する尺度。

(注3)抑うつエピソード:抑うつ気分、興味・喜びの減退、食欲の減退、不眠、疲労感、気力の減退、思考力・集中力の減退などの症状がある状態。抑うつエピソードの状態が持続するとうつ病と診断される。

報道関係者の皆さまからのお問い合わせ