印刷(PDF/155KB)はこちらから 2023年06月12日 研究開発
欧州血液学会(EHA)2023における開発中の抗がん剤TP-3654のフェーズ1/2試験に関するデータ発表のお知らせ
住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)の米国子会社であるスミトモファーマ・オンコロジー・インク(以下「スミトモファーマ・オンコロジー社」)は、欧州血液学会(EHA:European Hematology Association)の2023年年次総会(開催時期:6月8日~6月11日、開催場所:ドイツ フランクフルト)において、臨床試験実施中の抗がん剤である選択的経口PIM1キナーゼ阻害剤TP-3654(開発コード、以下「本剤」)のフェーズ1/2試験(以下「本試験」)の最新の予備的なデータをポスター発表しましたので、お知らせします。
本試験は、過去にJAK阻害剤による治療を受けた、またはJAK阻害剤による治療が不適格な骨髄線維症患者を対象とした、非盲検、用量漸増フェーズ1/2試験であり、安全性、薬物動態および薬力学マーカーを評価することを目的としています。
このたびのデータでは、本剤の単独療法により再発または難治性の骨髄線維症患者において脾臓容積減少(SVR)、総症状スコア(TSS)の改善が認められました。また、本剤が骨髄線維症の症状の改善と関連する可能性のあるサイトカインの変動を早期に促す可能性が示されました。
本試験において、2023年2月9日時点で、15人の患者が1日1回480mgから1日2回720mgまでの5つの用量群に登録されています。12週間以上の投与を受けた有効性の評価可能な患者10名中7名でSVRが観察され、10名中9名でTSSの改善が観察されました。また、本剤投与後にさまざまなサイトカインの減少が観察されました。投与12週目における解析では、サイトカインの減少が大きい患者ほどTSSの改善が大きいという相関が認められました。骨髄線維化のグレードが3から2への減少が1名の患者で認められ、その患者ではSVRおよびTSSの改善、ならびに骨髄線維症と関連するサイトカインの減少(IL6(68%)、IL12p40(83%)、MMP9(56%)、およびEN-RAGE(68%))が示されました。また、この患者は18カ月以上の投与を継続中です。
本剤に関する有害事象については、これまでに用量制限毒性(DLT)は観察されておらず、総じて良好な忍容性が示されました。最も多く観察された有害事象は、グレード1または2の下痢、吐き気、嘔吐でした。
【EHA2023でのポスター発表の概要】
抄録番号 | P1031 |
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演題 | Preliminary Data From the Phase 1/2 Study of TP-3654, an Investigational Selective PIM1 Kinase Inhibitor, Showed Cytokine Reduction and Clinical Responses in Relapsed/Refractory Myelofibrosis |
発表日時 | 2023年6月9日 午後6:00(現地時間) |
筆頭発表者 | Firas El Chaer, MD, Division of Hematology/Oncology, University of Virginia Health System, Charlottesville, VA |
- ※抄録の内容は、EHAのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
- https://library.ehaweb.org/eha/2023/eha2023-congress/385481/firas.el.chaer.preliminary.data.from.the.phase.1.2.study.of.tp-3654.an.html?f=listing%3D0%2Abrowseby%3D8%2Asortby%3D1%2Ac_id%3D385481
ご参考
TP-3654について
TP-3654は経口PIM1キナーゼ阻害剤であり、非臨床モデルにおいて、アポトーシスの誘導を含め複数の経路を通じて抗腫瘍および抗線維化活性が示されています。本剤は、臨床的に関連するJAK2V617F変異を発現したマウスおよびヒト造血細胞において腫瘍増殖を抑制し、アポトーシスを増加させることが認められています。また、本剤の単独投与およびルキソリチニブとの併用投与により、JAK2V617FおよびMPLW515Lの骨髄線維症マウスモデルにおいて、白血球および好中球数の正常化、脾臓サイズおよび骨髄線維化の減少が認められています。現在、米国・日本において中・高リスクの骨髄線維症患者を対象としたフェーズ1/2試験を実施しています。本剤は、2022年5月に骨髄線維症の適応で米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグ指定を受けています。
骨髄線維症について
骨髄線維症は、衰弱性の症状、脾臓の腫大、血球減少および骨髄線維化を伴う希少な血液悪性腫瘍です。骨髄線維症患者の造血細胞では、腫瘍の活性化に寄与することが知られているPIM1の発現が著しく上昇しており、骨髄線維症の治療標的であることが示唆されています。
以上
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