印刷(PDF/167KB)はこちらから 2023年06月19日 研究開発

北里研究所と住友ファーマとの共同研究 カルバペネム耐性菌感染症治療薬KSP-1007/メロペネムに関するデータを米国微生物学会(ASM Microbe 2023)において発表

学校法人北里研究所(本部:東京都港区、理事長:小林 弘祐、以下「北里研究所」)と住友ファーマ株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:野村 博、以下「住友ファーマ」)は、両者の共同研究を通じてカルバペネム耐性菌感染症治療薬を創出しました。この治療薬はKSP-1007(開発コード)にメロペネムが併用されており、米国フェーズ1試験(以下「本試験」)が実施されました。本試験では、重篤な有害事象は認められず、良好な薬物動態が示されました。本試験結果とともに世界的に問題視されている多剤耐性菌に対する活性も含めて、米国微生物学会(開催時期:6月15日~19日、開催場所:米国ヒューストン、以下「ASM Microbe 2023」)において発表されましたので、お知らせします。

上記のほか非臨床薬効薬理データおよび非臨床薬物動態データを含めて、合計8演題のポスター発表、1演題の口頭発表が実施されました。

【ASM Microbe 2023での発表概要】
<口頭発表>

講演題目 KSP-1007, a Broad-Spectrum Inhibitor of Serine- and Metallo-β-Lactamases for Combination with Meropenem
セクション番号 Session CTS018 - New Agents (AAR)
発表情報 4:30 PM – 5:00 PM, June 17, 2023
370 A-F-GRB Center

<ポスター発表>
セクション番号:
P007. AAR08 New Antimicrobial Agents: New Small Molecules? Beta-Lactamase Inhibitors (BLIs)

発表情報:
10:00 AM - 5:00 PM, June 16, 2023
Exhibit and Poster Hall (Hall BCD)

ポスター番号 講演題目
519 Safety, Tolerability, And Pharmacokinetics Of KSP-1007 After Single And Multiple Ascending Doses Alone Or In Combination With Meropenem In Healthy Subjects
497 The Broad-Spectrum β-Lactamase Inhibitor KSP-1007:
Biochemical Characterization of Inhibitory Activity against Various β-Lactamases (BL)s
503 The Broad-Spectrum β-Lactamase Inhibitor KSP-1007: In Vitro Activity in Combination with Meropenem (MEM) against Gram-Negative Bacteria (GNB) Including Carbapenemase Producers
500 The Broad-Spectrum β-Lactamase Inhibitor KSP-1007:
Bactericidal Activity, Effects of Human Plasma, Serum Albumin, Urine and Medium pH on the In Vitro Activity in Combination with Meropenem (MEM) against Carbapenemase-Producing Enterobacterales (CPE)
505 The Broad-Spectrum β-Lactamase Inhibitor KSP-1007:
In Vivo Activity in Mouse Model of Systemic and Urinary Tract Infection (UTI) Due to Carbapenemase-Producing Gram-Negative Bacteria (CP-GNB)
498 The Broad-Spectrum β-Lactamase Inhibitor KSP-1007:
In Vivo Activity against Carbapenemase-Producing Acinetobacter baumannii (CP-Ab) in a Mouse Lung Infection Model
499 The Broad-Spectrum β-Lactamase Inhibitor KSP-1007:
Pharmacokinetics /pharmacodynamics in Combination with Meropenem (MEM) against Carbapenemase- Producing Klebsiella pneumoniae (CP-Kp) and Acinetobacter baumannii (CP-Ab) in a Neutropenic Murine Thigh Infection Model
501 The Broad-Spectrum β-Lactamase Inhibitor KSP-1007:
Pharmacokinetics, Distribution, Metabolism, And Excretion In Nonclinical Studies

ご参考

KSP-1007について

KSP-1007は、産学官の連携事業である国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「医療研究開発革新基盤創成事業(Cyclic Innovation for Clinical Empowerment:CiCLE)」に係る研究開発課題の研究で見出されました。世界的に問題視されている高度耐性菌は、カルバペネム系抗菌薬まで分解するβ-ラクタマーゼを産生しますが、KSP-1007は、このβ-ラクタマーゼを広域かつ強力に阻害する作用を有しています。さらに、世界的に汎用されているカルバペネム系抗生物質製剤メロペネム水和物(住友ファーマの国内製品名「メロペン®」)と併用することで、カルバペネム耐性菌感染症に対しても有効な治療選択肢となることが期待されています。
本剤は、2022年8月に、米国食品医薬品局から細菌性の複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、院内肺炎/人工呼吸器関連肺炎に対する適格感染症治療製品(Qualified Infectious Disease Product)およびFast Track 指定を受けました。詳細は2022年9月29日付けのプレスリリース(https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/assets/pdf/ne20220929.pdf)をご参照ください。

カルバペネム耐性菌感染症について

カルバペネム耐性菌感染症は、重症感染症治療において重要な抗菌薬であるメロペネムを始めとするカルバペネム系抗菌薬に対して耐性を示す腸内細菌科細菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ等による感染症の総称です。これらの耐性菌は、世界保健機関(WHO)が発表した「新規治療薬が緊急に必要な薬剤耐性菌」のリストにおいて「最高レベル(Critical)」のカテゴリーに分類されています。

医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)について

産学官連携により、我が国の力を結集し、医療現場ニーズに的確に対応する研究開発の実施や創薬等の実用化の加速化等が抜本的に革新される基盤(人材を含む)の形成、医療研究開発分野でのオープンイノベーション・ベンチャー育成が強力に促進される環境の創出を推進することを目的とする国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の事業です。
北里研究所と住友ファーマの共同研究「薬剤耐性(AMR)菌感染症治療薬を目的とした創薬研究」(代表機関:住友ファーマ、研究総括責任者:北里大学花木秀明)は、2017年にCiCLEの第1回公募の研究開発課題に採択されました。

北里研究所について

北里研究所は、「いのちを尊(たっと)び、生命の真理を探究し、実学の精神をもって社会に貢献する」を理念とし、学祖北里柴三郎からノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智へと続く感染制御の伝統と実績をもって社会に貢献する使命を果たすべく、教育・研究・医療に注力しています。詳しくは、北里研究所のホームページ(https://www.kitasato.ac.jp)をご覧ください。

住友ファーマについて

住友ファーマは、人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献することを企業理念としています。この理念を実現するため、また、日本はもちろん世界の方々に革新的で有用な医薬品や医療ソリューションをお届けするため、研究開発に全力を注いでいます。詳しくは、住友ファーマのホームページ(https://www.sumitomo-pharma.co.jp)をご覧ください。

以上

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