印刷(PDF/167KB)はこちらから 2023年09月12日 研究開発

ビベグロンの前立腺肥大症を伴う過活動膀胱を対象としたフェーズ3試験の良好な解析結果の速報について

住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)の米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.(以下「SMPA社」)およびスイス子会社であるSumitomo Pharma Switzerlandは、2023年9月11日(現地時間)、β3アドレナリン受容体作動薬「GEMTESA®」(販売名、一般名:ビベグロン、以下「本剤」)について、前立腺肥大症を伴う過活動膀胱(OAB)を対象とした、本剤1日1回75mg投与による有効性、安全性および忍容性を評価することを目的としたフェーズ3試験であるURO-901-3005試験(以下「本試験」)において、主要評価項目を達成したという、良好な解析結果の速報を発表しましたので、お知らせします。

本試験は、前立腺肥大症に対して薬物治療を受けているOAB患者1,105名を対象とした、多施設共同、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照比較試験であり、本剤75mg/日を24週間投与した際の本剤のプラセボ投与群に対する有効性、安全性および忍容性を評価しました。
有効性に関する2つの主要評価項目である、投与12週目の「1日あたり平均排尿回数」のベースラインからの変化量(最小二乗平均)(本剤投与群:-2.04、プラセボ投与群:-1.30、p<0.0001)および「1日あたり平均尿意切迫感(制御が困難な突然の排尿衝動)回数」のベースラインからの変化量(本剤投与群:-2.88、プラセボ投与群:-1.93、p<0.0001)において、本剤投与群は、プラセボ投与群に対し、統計学的に有意な減少を示しました。
副次評価項目である、投与12週目の「一晩あたり平均夜間排尿回数」のベースラインからの変化量(本剤投与群:-0.88、プラセボ投与群:-0.66、p=0.0015)、「1日あたり平均切迫性尿失禁回数」のベースラインからの変化量(本剤投与群:-2.19、プラセボ投与群:-1.39、p=0.0034)および「国際前立腺症状スコア」のベースラインからの変化量(本剤投与群:-3.0、プラセボ投与群:-2.1、p<0.0001)においても、本剤投与群は、プラセボ投与群に対し、統計学的に有意な減少を示しました。また、投与12週目の「1回あたり平均排尿量」のベースラインからの変化量(本剤投与群:25.63mL、プラセボ投与群:10.56mL、p<0.0001)においても、本剤投与群は、プラセボ投与群に対し、統計学的に有意な増加を示し、全ての副次評価項目を達成しました。

本試験において、本剤の安全性および忍容性が評価され、これまでに実施したOABを対象とした臨床試験と比較して新たな安全性シグナルは認められず、一貫した安全性プロファイルが示されるとともに、総じて良好な忍容性が示されました。主な有害事象(本剤投与群で2%以上かつプラセボ投与群よりも発現割合が高かったもの)は、高血圧(本剤投与群:9.0%、プラセボ投与群:8.3%)、新型コロナウイルス感染症 (本剤投与群:4.0%、プラセボ投与群:3.1%)および尿路感染症(本剤投与群:2.5%、プラセボ投与群:2.2%)でした。重篤な有害事象の発現頻度は、いずれの投与群においても同程度でした(本剤投与群:4.3%、プラセボ群投与群:2.9%)。

本試験を完了した患者には、追加で28週間、合計52週間の長期の安全性、忍容性および有効性を評価する本剤のオープンラベルの継続投与試験(URO-901-3006試験、以下「継続投与試験」)に参加する機会が提供されました。本試験の本剤投与群では、継続投与試験の結果、1日あたり平均排尿回数および1日あたり平均尿意切迫感回数の減少が投与52週目まで維持されたことが示されました。夜間排尿、切迫性尿失禁、国際前立腺症状スコアの減少および1回あたり平均排尿量の増加も投与52週目まで維持されました。また、本剤の総じて良好な忍容性が示されるとともに、これまでに実施した臨床試験と比較して新たな安全性シグナルは認められず、一貫した安全性プロファイルが示されました。

SMPA社のChief Medical OfficerであるArmin Szegedi(アーミン・セゲディ)は、次のように述べています。「何百万人もの男性が、頻尿や尿意切迫感、排尿困難または排尿遅延、そして排尿のために夜中に目が覚めるなど、前立腺肥大症によってさらに悪化するOABの煩わしい症状に苦しんでいます。これらの症状は、長期的な睡眠不足など、患者さんの生活に大きな悪影響を与える可能性があります。本試験のデータは、本剤の可能性と泌尿器疾患を患う人々のアンメット・ニーズに応えるという私たちのコミットメントを表しています」

SMPA社のPresident兼CEOであるMyrtle Potter(マートル・ポッター)は、次のように述べています。「本剤の試験結果を共有できることをうれしく思います。このたびの試験結果は、私たちの基幹製品の一つである本剤のさらなる可能性を示しています。また、これらの良好な結果をもとに、私たちはOABの症状や前立腺肥大症を患う人々にとっての選択肢として、本剤の可能性を探求できることを楽しみにしています」

SMPA社のCEO of Biopharma Commercial UnitであるAdele Gulfo(アデル・ガルフォ)は、次のように述べています。「OABは臨床症状ではなく、加齢に伴って生じるものであると誤解されることがよくあります。本剤の発売以来、本剤はOABを患う20万人以上の患者さんの治療に貢献してきました。私たちは泌尿器疾患を患う人々のために、継続的にイノベーションを創出し、新たな治療選択肢を提供することに尽力しています」

本試験および継続投与試験の結果は、今後の学会等で発表する予定です。

※ 国際前立腺症状スコア:前立腺肥大症の自覚症状を評価し、重症度を判定することを目的とした評価尺度です。排尿障害の症状に関する7項目の質問で構成され、各項目を0点(症状なし)から5点(ほとんどいつも)の点数で評価されます。

ご参考

GEMTESA®(ビベグロン)について

ビベグロンは、1日1回投与のβ3アドレナリン受容体作動薬です。β3アドレナリン受容体に選択的に作用し、膀胱排尿筋を弛緩させて膀胱容量を増大させることで、OABの症状を改善します。米国では、2021年4月に「GEMTESA®」として発売し、成人の切迫性尿失禁、尿意切迫感および頻尿の症状を伴うOABの適応症を有しています。現在、米国では、前立腺肥大症を伴うOABを対象に開発中であり、中国では、OABを対象としたフェーズ3試験を実施しています。

過活動膀胱(OAB)について

OABは、膀胱の筋肉が不随意に収縮したときに発生する症状であり、尿意切迫感(制御が困難な突然の排尿衝動)、切迫性尿失禁(緊急の排尿が必要になった直後の意図しない排尿)、頻尿(通常24時間に8回以上)などの症状を呈します。米国では約3,300万人がOABの煩わしい症状に苦しんでいます。

前立腺肥大症(BPH)について

BPHは、前立腺が肥大する疾患です。BPHの患者の約60%が下部尿路症状(LUTS)の治療を受けています。LUTSは蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状に分けられます。BPHの患者の半数以上が蓄尿症状を、約4分の1が排尿症状を有しているといわれています。これらは、BPHと診断された患者の多くがOABを患っている可能性があることを示唆しています。症状の治療を受ける患者の多くは、BPHによる膀胱の閉塞があると考えられています。51歳から60歳までの男性の約半数が、また、80歳以上の男性の90%がBPHを患っています。

以 上

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