印刷(PDF/163KB)はこちらから 2023年09月27日 研究開発
愛媛大学と住友ファーマによる新規マラリア発病阻止ワクチン開発に関わるGHIT Fundからの助成決定
国立大学法人愛媛大学プロテオサイエンスセンター(センター長:澤崎 達也、以下「愛媛大学」)と住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博、以下「住友ファーマ」)は、European Vaccine Initiative(ドイツ、以下「EVI」)、iBET(ポルトガル)と4者共同で進めている「新規赤血球期マラリアワクチンPfRipr5の前臨床開発(PfRipr5-PD)プロジェクト」(以下「本プロジェクト」)がこのたび、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(日本、Global Health Innovative Technology Fund、以下「GHIT Fund」)の助成案件に選定されましたので、お知らせします。
愛媛大学と住友ファーマは、マラリア感染阻止ワクチンおよびマラリア伝搬阻止ワクチンについても共同研究を実施しており、それぞれの研究がGHIT Fundの助成案件として選定されています。
本プロジェクトの対象となるワクチン製剤(以下「本剤」)は、愛媛大学と住友ファーマの共同研究で見出された新規赤血球期マラリアワクチン抗原(PfRipr5)と、住友ファーマが持つ新規ワクチンアジュバント(TLR7アジュバント:DSP-0546E)で構成されており、マラリア原虫の赤血球への侵入を阻害することによってマラリアの発病を阻止するワクチン候補製剤です。本剤が上市されれば、新規マラリア発病阻止ワクチンとして、流行地におけるマラリア防御の切り札となる可能性があります。
マラリアは、蚊で媒介される寄生虫病で、患者数は2005年頃から減少傾向にありましたが、2020年新型コロナウイルスによるパンデミック以降再び増加に転じ、依然として世界で2億人以上がマラリアに罹り、死亡者数も60万人以上に及んでいます(出典「World Malaria Report 2022」)。マラリア対策の切り札としてワクチン開発がこの40年間以上取り組まれてきましたが、2021年に世界保健機関(WHO)から推奨された蚊からヒトへの感染を防ぐ第一世代のマラリアワクチンRTS,S/AS01による有効性は約30%と低く、より有効な次世代マラリアワクチンが切望されています。
本プロジェクトは、2023年10月から2年間、EVIが代表者としてプロジェクト全体を管理および治験申請業務を担当し、iBETは、PfRipr5のGMP製造に向けたプロセス開発、CDMOへの技術移転およびGMP製造の監督を担当します。愛媛大学はPfRipr5のさらなる特性解析および本剤が誘導する抗体の機能評価を、住友ファーマはアジュバント製剤の提供および非臨床評価を担当します。4者は、本プロジェクトの終了後に、欧州において臨床試験を開始する予定です。
愛媛大学は、本プロジェクトを成功させることにより、画期的なマラリア発病阻止ワクチンの実現に向けた開発を推進し、グローバルヘルスの最重要課題の一つであるマラリア対策に貢献できることを期待しています。
住友ファーマは、愛媛大学および住友ファーマの共同研究にて得られた新規マラリアワクチン抗原および住友ファーマの持つ革新的な免疫アジュバント技術を活用して、新規マラリア発病阻止ワクチンの研究開発を行うことにより、グローバルヘルスに貢献することを目指します。
ご参考
両者のこれまでの共同研究について
愛媛大学および住友ファーマによるこれまでの共同研究の詳細は、以下のプレスリリースをご覧ください。
- マラリア発病阻止ワクチン(2019年4月9日)
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20190409.html - PfRipr5 熱帯熱マラリア発病阻止ワクチンの作用メカニズムを解明 ―マラリアワクチン開発を加速―(2020年4月21日)
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/assets/pdf/ne20200421.2.pdf - マラリア伝搬阻止ワクチン(2020年4月3日)
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20200403.html - マラリア感染阻止ワクチン(2021年3月31日)
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20210331.html
PfRipr5について
PfRipr5は、愛媛大学と住友ファーマの共同研究によって見出された、熱帯熱マラリア原虫に発現するタンパク質Rh5 interacting protein(PfRipr)の部分アミノ酸配列を有する新規マラリア発病阻止ワクチン抗原候補です。これまでのマラリア発病阻止ワクチン候補は、抗原多型によって有効性が示されませんでしたが、PfRipr5はマラリア流行地分離株において高度に保存されているために有効性が期待されることが愛媛大学の研究によって明らかにされています。
TLR7アジュバント(DSP-0546E)について
ウイルス由来のRNAを感知して自然免疫応答を引き起こすToll様受容体の一つであるTLR7を活性化させる物質です。抗原に添加することによって免疫原性を高める免疫増強作用を有します。
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金 (GHIT Fund:ジーヒット・ファンド)
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は、日本政府(外務省、厚生労働省)、製薬企業などの民間企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム、国連開発計画が参画する国際的な官民ファンドです。世界の最貧困層の健康を脅かすマラリア、結核、顧みられない熱帯病(NTDs)などの感染症と闘うための新薬開発への投資、ならびにポートフォリオ・マネジメントを行っています。治療薬、ワクチン、診断薬を開発するために、GHIT Fundは日本の製薬企業、大学、研究機関の製品開発への参画と、海外の機関との連携を促進しています。詳しくは、https://www.ghitfund.org/jpをご覧ください。
European Vaccine Initiative(EVI:ヨーロピアン・ワクチン・イニシアティブ)
EVIは、貧困による疾患や新たな感染症に対するワクチンの開発を支援するNPO団体であり、本プロジェクト全体の管理および治験申請業務を担当します。詳しくは、http://www.euvaccine.euをご覧ください。
iBET(アイベット)
iBETは、バイオテクノロジーおよびライフサイエンス分野における非営利の研究集約型企業です。iBETは1989年に設立され、Health&PharmaおよびFood&Healthに関連する分野での連携を確立することにより、大学と産業界の研究を橋渡ししています。主な専門分野は、ワクチン候補である組換えタンパク質およびウイルス様粒子などの複雑な機能性バイオ医薬品の製造および精製などで、プロセスのモニタリングおよび制御、製品の特性評価のための分析およびツールの開発にも取り組んでいます。
iBETは本プロジェクトにおいて、PfRipr5のGMP製造に向けたプロセス開発、CDMOへの技術移転およびGMP製造の監督を担当します。詳しくは、http://www.ibet.ptをご覧ください。
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