印刷(PDF/168KB)はこちらから 2023年12月12日 研究開発

米国血液学会(ASH)2023における開発中の抗がん剤DSP-5336に関する有望な新規の臨床データ発表のお知らせ

住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)の米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.(以下「SMPA社」)は、米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)の2023年年次総会において、再発または難治性の急性白血病患者を対象にフェーズ1/2試験を実施中の抗がん剤であるメニン-MLLタンパク質結合阻害剤DSP-5336(開発コード)に関する新規の臨床データを発表しましたので、お知らせします。

ASH2023では、関連する遺伝子が変異している再発または難治性の急性白血病患者を対象に、DSP-5336を200mgまで、1日2回経口投与するフェーズ1/2試験の非盲検用量決定試験のデータが発表されました。実施中のフェーズ1/2試験では、用量漸増を続けており、現在は治療域に達しています。

ASH2023で発表された予備的な結果には、DSP-5336を200mg、1日2回投与した4例の評価可能な患者が含まれ、うち3例は客観的奏効を示しました。また、部分的血液学的回復を伴う完全寛解(CRh)および血球数回復が不完全な完全寛解(CRi)が1例、CRiが1例、形態学的無白血病状態(MLFS)が1例で達成され、末梢血における白血病芽球の消失が全例で確認されました。これまでにおいて、DSP-5336は良好な忍容性を示しており、特にQT延長を含む治療関連性の心臓への影響は認められていません。また、DSP-5336を200mg、1日2回投与において分化症候群は観察されていません。

白血病は、血液細胞のがんであり造血器官である骨髄中において腫瘍性の白血球(白血病細胞)が異常増殖することで正常造血が阻害されることを特徴としています。白血病の一種である急性白血病は、白血病細胞が急速に増殖し、突然症状が現れるため、早急な治療が必要とされています。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター白血病研究提携プログラム部白血病科部長であり、ASH2023におけるDSP-5336に関するポスターの筆頭発表者であるNavel Daver(ネイベル・デイバー)医師は、次のように述べています。「これらのデータは初期段階のものですが、DSP-5336の有望な臨床活性とともに、特に安全性シグナルが限定的であり、これまでにおいて良好な忍容性プロファイルが確認されていることをうれしく思います。DSP-5336は、メニン-MLLタンパク質の結合を阻害する開発中の標的治療薬です。メニン-MLLタンパク質の結合を阻害することで、MLL融合タンパク質の白血病誘発活性を逆転させることができる可能性があり、急性白血病の将来の治療選択肢となることが期待されます」

SMPA社のChief Oncology Development OfficerであるJatin Shah(ジェイティン・シャー)は次のように述べています。「再発または難治性の急性白血病の治療においては、多くの患者さんが治療の選択肢が限られていたり、既存の治療法に反応しなかったりするため、新しい革新的なアプローチに対する高いアンメットニーズがあります。私たちは、実施中の臨床試験において、DSP-5336の適切な治療用量の決定に近づいていると考えており、ASH2023において血液腫瘍学をリードされている方々とこの結果について議論できたことをうれしく思っています。DSP-5336の単剤療法の試験を継続するとともに、追加で併用試験を実施することを検討しています」

SMPA社は、ASH2023において、JAK阻害剤による前治療歴があるまたはJAK阻害剤による治療対象とならない、再発または難治性の骨髄線維症患者を対象に実施中のTP-3654のフェーズ1/2試験の有望な予備的な結果についても口頭発表しました。

ご参考

DSP-5336について

DSP-5336は、メニンタンパク質と MLL(mixed-lineage leukemia)タンパク質との結合を阻害する低分子化合物です。メニンは核に局在し、細胞増殖調節、細胞周期制御、ゲノム安定性、骨発達、造血などの生物学的経路においてさまざまな重要な役割を果たす足場タンパク質です。非臨床研究において、本剤はメニンとMLLのタンパク質の結合を阻害することでKMT2A (MLL)再構成または NPM1遺伝子変異を有するヒト急性白血病細胞株において選択的な増殖阻害を示しました。さらに、本剤を処理したMLL再構成を有するヒト急性白血病細胞株において、白血病発症に関与するHOXA9およびMEIS1遺伝子の発現を顕著に低下させるとともに、正常血液細胞における終末分化マーカーであるCD11b遺伝子の発現上昇を示しました。これらの非臨床研究の結果から、本剤はMLL再構成または NPM1遺伝子変異を有するヒト急性白血病細胞の増殖を抑制し、正常分化を誘導する作用機序に基づく治療効果が期待されています。このような細胞増殖阻害および遺伝子発現変動は、本剤を処理したMLL再構成または NPM1遺伝子変異を有するヒト急性白血病患者検体においても確認されています。本剤の安全性および有効性については現在、米国・日本において再発または難治性の急性白血病患者を対象としたフェーズ1/2試験において評価しています。本剤は、2022年6月に急性骨髄性白血病の適応で米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグ指定を受けています。

TP-3654について

TP-3654は経口PIM1キナーゼ阻害剤であり、非臨床モデルにおいて、アポトーシスの誘導を含め複数の経路を通じて抗腫瘍および抗線維化活性が示されています。本剤は、骨髄線維症の主たる原因遺伝子の一つであるJAK2V617F変異を発現するマウスおよびヒト血液細胞において腫瘍性増殖を抑制し、アポトーシスを誘導させることが認められています。また、本剤の単独投与およびルキソリチニブとの併用投与により、JAK2V617FおよびMPLW515Lを造血細胞特異的に発現させることで作成した骨髄線維症マウスモデルにおいて、白血球および好中球数の正常化、脾臓サイズおよび骨髄線維化の減少が認められています。本剤の安全性および有効性については現在、米国・日本において中間・高リスクの骨髄線維症患者を対象としたフェーズ1/2試験において評価しています。本剤は、2022年5月に骨髄線維症の適応でFDAからオーファンドラッグ指定を受けています。

以上

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