印刷(PDF/187KB)はこちらから 2024年03月28日 研究開発

米国における「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療」に関する企業治験開始のお知らせ

住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)は、iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療(以下「本治療」)に関する企業治験(以下「本治験」)のIND申請(Investigational New Drug Application)を2024年2月に米国食品医薬品局(FDA)に対して行い、このほどFDAによる30日調査が完了し、本治験を開始する準備が整いましたことを、お知らせします。なお、本治験では、凍結した細胞を用います。

本治療に関連して、米国では、2023年11月にカリフォルニア大学サンディエゴ校による非凍結品を用いた医師主導治験が開始されています。また、日本では、2018年より京都大学医学部附属病院による非凍結品を用いた医師主導治験が実施されました。

本治験は、当社が注力している再生・細胞医薬事業における他家iPS細胞由来の分化細胞を用いた当社初の米国臨床試験であり、再生・細胞医薬事業における米国開発を推進するうえでの大きな一歩となります。

【本治験の概要】

被験細胞 DSP-1083 他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞(凍結品)
開発段階 フェーズ1/2
対象 パーキンソン病
治験デザイン(目標症例数) 多施設共同、二重盲検、ランダム化試験(数十例規模:投与観察群およびSham観察群)
主要評価項目 安全性:有害事象の発現頻度と程度
副次評価項目(有効性) 運動症状評価 他
治験実施者 Sumitomo Pharma America, Inc.(当社の米国子会社)

*米国における医師主導治験の開始については、2023年12月26日に開示しています。https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20231226.html

ご参考

パーキンソン病

パーキンソン病は、脳内のドパミン神経細胞の変性・脱落に伴い線条体のドパミン含量が著明に減少することにより、脳の運動機能をつかさどる大脳基底核神経回路の働きに不均衡が生じることによって運動症状が発現すると考えられている慢性進行性の神経変性疾患です。

パーキンソン病に特徴的な運動症状は、振戦、筋強剛、動作緩慢および姿勢反射障害の4大症状です。運動症状は、多くは振戦から始まり、次いで動作緩慢や筋強剛が認められ、一側の上肢または下肢より他肢へと緩徐に進展します。更に進行すると、姿勢が不安定になる姿勢反射障害が見られるようになります。このように運動症状は四肢より体幹部へと拡大し、緩徐に進行していきますが、運動症状以外にも、自律神経症状や精神症状、睡眠障害等の非運動症状も認められます。

ドパミン神経前駆細胞

ドパミンは神経伝達物質の一つで、ドパミン神経細胞の中で作られます。パーキンソン病は、ドパミン神経細胞が進行性に失われ、ドパミン産生量が減少することにより発症します。ドパミン神経前駆細胞は、ドパミン神経細胞に分化する手前の細胞です。パーキンソン病モデル動物を用いた研究から、ドパミン神経前駆細胞を移植することによって脳内に成熟ドパミン神経細胞を効率的に生着させられることが明らかになっています。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)

体細胞を遺伝子導入・タンパク質導入・薬剤処理等により人為的に初期化して得られる細胞または当該細胞の分裂により生ずる細胞であって、内胚葉、中胚葉および外胚葉の細胞に分化する性質を有し、かつ、自己複製能力を維持しているものです。

以上

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