印刷(PDF/219KB)はこちらから 2024年11月07日 研究開発

米国血液学会(ASH)2024における開発中の抗がん剤nuvisertib(TP-3654)およびenzomenib(DSP-5336)に関する臨床データ発表のお知らせ

住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:木村 徹)の米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.(以下「SMPA社」)は、米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)の2024年年次総会(開催時期:12月7日~12月10日、開催場所:米国サンディエゴ)において、開発中の抗がん剤であり、再発または難治性の骨髄線維症を対象とした選択的経口PIM1キナーゼ阻害剤nuvisertib(一般名、開発コード:TP-3654)および再発または難治性の急性白血病を対象としたメニン-MLLタンパク質結合阻害剤enzomenib (一般名、開発コード:DSP-5336)に関する最新の臨床データを発表しますので、お知らせします。

nuvisertibの再発または難治性の骨髄線維症患者を対象としたフェーズ1/2試験の結果では、nuvisertib単剤投与において、用量制限毒性(DLT)がなく、良好な忍容性が示されるとともに、有望な初期の臨床活性が認められました。現在、グローバルに実施している本試験では、nuvisertibと初めて承認されたJAK阻害剤であるルキソリチニブ、貧血を伴う骨髄線維症患者を対象に承認されたJAK阻害剤であるモメロチニブとの併用におけるnuvisertibの安全性および臨床活性も評価しています。

enzomenibの再発または難治性の急性白血病患者を対象としたフェーズ1/2試験の結果では、幅広い投与量において、DLTやenzomenibと関連のある有害事象による投与中止は観察されておらず、良好な忍容性が示されるとともに、有望な初期の臨床活性が認められました。

SMPA社のChief Medical Officer, OncologyであるJatin Shah(ジェイティン・シャー)は次のように述べています。「再発の急性骨髄性白血病や骨髄線維症に罹患している患者さんのために、これらのがんに見られる予後不良を有意義に改善するための新しい効果的な治療選択肢を提供することが極めて重要です。このたび、再発または難治性の骨髄線維症および急性白血病の治療における有望なデータを得られたことをうれしく思うとともに、これらのデータを基に両剤の開発を迅速に進めていきます。12月に開催されるASHの年次総会で、nuvisertibおよびenzomenibの開発をさらに支持する新たなデータを共有できることを楽しみにしています。私たちは両剤の開発推進に引き続き全力を尽くします」

【ASH2024での発表の概要】

1.nuvisertib(TP-3654)に関する口頭発表・ポスター発表

演題 Nuvisertib (TP-3654), an Investigational Selective PIM1 Kinase Inhibitor, Showed Durable Clinical Response and Sustained Hematological Improvement in Relapsed/Refractory Myelofibrosis Patients
セッション名 634. Myeloproliferative Syndromes: Clinical and Epidemiological: Advancing Treatment Paradigms in Myeloproliferative Neoplasms and Mastocytosis
発表日時 2024年12月8日(日) 午後4:30から午後6:30(現地時間)
プレゼンテーションは午後4:30(現地時間)
場所 Grand Hall D (Manchester Grand Hyatt San Diego)
筆頭発表者 Firas El Chaer, M.D.
演題 Cytokine Modulation Correlates Strongly with Symptom Improvement in Patients with Myelofibrosis Treated with Nuvisertib (TP-3654), an Investigational Selective PIM1 Kinase Inhibitor
セッション名 634. Myeloproliferative Syndromes: Clinical and Epidemiological: Poster II
発表日時 2024年12月8日(日) 午後6:00から午後8:00(現地時間)
場所 Halls G-H (San Diego Convention Center)
筆頭発表者 Lindsay A.M. Rein, M.D.

2.enzomenib(DSP-5336)に関する口頭発表

演題 Phase 1/2 First-in-Human Study of the Menin-MLL Inhibitor enzomenib (DSP-5336) in Patients with Relapsed or Refractory Acute Leukemia
セッション名 616. Acute Myeloid Leukemias: Investigational Drug and Cellular Therapies: Menin Inhibitors in AML
発表日時 2024年12月7日(土) 午後2:00から午後3:30(現地時間)
プレゼンテーションは午後2:30(現地時間)
場所 Ballroom 20CD (San Diego Convention Center)
筆頭発表者 Joshua F. Zeidner, M.D.

ご参考

enzomenib(DSP-5336)について

enzomenib(DSP-5336)は、メニンタンパク質とMLL(mixed-lineage leukemia)タンパク質との結合を阻害する低分子化合物です。メニンは核に局在し、細胞増殖、細胞周期、ゲノム安定性、造血などの多くの生物学的経路において遺伝子の発現やタンパク質間相互作用といった重要な役割を果たす足場タンパク質です。非臨床研究において、本剤はメニンとMLLのタンパク質の結合を阻害することでKMT2A(MLL)再構成またはNPM1遺伝子変異を有するヒト急性白血病細胞株において選択的な増殖阻害を示しました。さらに、本剤を処理したMLL再構成またはNPM1遺伝子変異を有するヒト急性白血病細胞株において、白血病発症に関与するHOXA9およびMEIS1遺伝子の発現を低下させるとともに、正常血液細胞における終末分化マーカーであるCD11b遺伝子の発現上昇を示しました。本剤の安全性および有効性については現在、再発または難治性の急性白血病患者を対象としたフェーズ1/2用量漸増および用量拡大試験において評価しています。本剤は、2022年6月に急性骨髄性白血病の適応で米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグ指定を受けています。また、2024年6月にMLL再構成またはNPM1遺伝子変異を有する再発または難治性の急性骨髄性白血病の適応で米国食品医薬品局(FDA)からファストトラック指定を受けました。さらに、2024 年9 月に再発または難治性のMLL 遺伝子再構成陽性またはNPM1 遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病の適応で厚生労働省から希少疾病用医薬品指定を受けています。

nuvisertib(TP-3654)について

nuvisertib(TP-3654)は経口PIM1キナーゼ阻害剤であり、非臨床モデルにおいて、アポトーシスの誘導を含め複数の経路を通じて抗腫瘍および抗線維化活性が示されています。本剤は、骨髄線維症の主たる原因遺伝子の一つであるJAK2V617F変異を発現するマウスおよびヒト血液細胞において腫瘍性増殖を抑制し、アポトーシスを誘導させることが認められています。また、本剤の単独投与およびルキソリチニブとの併用投与により、JAK2V617FおよびMPLW515Lを造血細胞特異的に発現させることで作成した骨髄線維症マウスモデルにおいて、白血球および好中球数の正常化、脾臓サイズおよび骨髄線維化の減少が認められています。本剤の安全性および有効性については現在、米国・日本において中間・高リスクの骨髄線維症患者を対象としたフェーズ1/2試験において評価しています。本剤は、2022年5月に骨髄線維症の適応でFDAからオーファンドラッグ指定を受けています。

以上

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