印刷(PDF/237KB)はこちらから 2024年12月17日 企業

再生・細胞医薬事業の会社分割(簡易吸収分割)および 子会社の株式譲渡に関するお知らせ

当社は、2024年10月30日に行われた当社の2024年度(2025年3月期)第2四半期決算に係る決算説明会において開示いたしました通り、住友化学株式会社(本社:東京都中央区、以下「住友化学」)との共同出資による新会社の設立を含む、当社の再生・細胞医薬事業(以下「本事業」)の再編について検討してきました。当該検討の結果、当社は、2024年12月17日開催の取締役会において、本事業について、住友化学、株式会社RACTHERA(ラクセラ。以下「RACTHERA」)およびS-RACMO株式会社(エスラクモ。当社と住友化学の合弁会社。以下「S-RACMO」)との間で、以下の再編(以下「本件再編」)を行うことを決議しましたので、お知らせします。

  1. 当社の本事業を分割し、RACTHERAおよびS-RACMOに承継させること(以下「本吸収分割」)。
  2. 本吸収分割の効力発生後にRACTHERAの株式の66.6%を住友化学に譲渡すること(以下「本株式譲渡」)。

1.本吸収分割および本株式譲渡の目的

当社は、早期の業績回復と再成長を果たすため、2024年度を当社グループの再成長への転換点とすべく、全社一丸となって様々な施策に取り組んでいます。

当社は、本事業において、①アカデミア、ベンチャー、異業種とのオープンイノベーションを通じたネットワーク、②多能性幹細胞からの分化誘導技術に代表されるiPS細胞の実用化に必要な技術蓄積を基盤とする研究開発力、および、③細胞製造に関わる技術・ノウハウ、インフラ、人材等の豊かな製造ケイパビリティを強みとし、iPS細胞を用いた細胞製品開発の「フロントランナー」として、世界初のiPS細胞由来製品を上市し、再生医療でしか実現できない新たな価値の提供を目指しています。

住友化学は、再生・細胞医薬分野において、ES細胞を活用した基盤研究および当社との共同研究を進めてきました。また、再生・細胞医薬分野におけるCDMO(Contract Development and Manufacturing Organizationの略で、製法開発、製造などの受託)事業をはじめとした先端医療関連事業を新成長領域のコアとし、次世代の成長ドライバーとすべく当社と共同でS-RACMOへの出資を行ってきました。

当社と住友化学は、本吸収分割および本株式譲渡により再生・細胞医薬分野の医薬品事業をRACTHERAに再編します。また、本吸収分割により、関連製造機能を同分野でCDMO事業を展開しているS-RACMOに集約します。本事業におけるグループ連携を一層強化し、RACTHERAおよびS-RACMOを一体運営することにより、iPS細胞由来製品の早期の実用化および上市に向けた研究開発および生産設備への投資を実行します。また、当社は再生・細胞医薬分野における技術・知見を最大限活用し、RACTHERAによるiPS細胞由来製品の開発をサポートします。

本件再編により、iPS細胞由来製品の実用化および上市に向けて必要となる研究開発・生産設備への投資を株式保有割合に応じて負担する形とすることで、当社は、現在の厳しい損益および財務状況下における、当面の研究開発費負担が低減される一方で、住友化学との技術シナジーにより本事業の基盤を強化することが期待できると考えています。また、本株式譲渡により、当社は、 RACTHERAの収益に加えて、住友化学から、株式譲渡対価として一時金約20億円を受領します。加えて、本株式譲渡に係る契約所定の条件を満たす場合には、住友化学から開発達成に応じた開発マイルストン(最大で約40億円)、事業の発展度合いに応じた販売マイルストン(最大で約1,500億円)を受領します。さらに、 開発の一層の加速や事業の拡大に向け、住友化学と共同で最適な事業体制を引き続き検討していく考えです。このように、当社は、本件再編が当社の企業価値の向上と持続的成長に大きく貢献するものであると考えています。

2.本吸収分割および本株式譲渡の日程

本吸収分割および本株式譲渡契約締結の承認に係る取締役会決議日 2024年12月17日
本吸収分割および本株式譲渡契約締結日 2024年12月17日
本吸収分割効力発生日 2025年2月1日(予定)
本株式譲渡実行日 2025年2月1日(予定)

本吸収分割については、当社において、会社法第784条第2項に規定する簡易分割であるため、当社の株主総会の承認を得ることなく行います。

3.本吸収分割の要旨

(1) 会社分割の方式

当社を分割会社とし、RACTHERAおよびS-RACMOを承継会社とする吸収分割(簡易分割)とします。

(2) 会社分割に係る割当ての内容

当社は、本吸収分割の対価としてRACTHERAから同社の普通株式 999株の交付およびS-RACMOから約20.7億円の交付を受けます。

(3) 会社分割に伴う新株予約権および新株予約権付社債に関する取扱い

当社は新株予約権および新株予約権付社債を発行していません。

(4) 会社分割により増減する資本金

分割による当社の資本金の増減はありません。

(5) 承継会社が承継する権利義務

RACTHERAは、当社が本事業(製造を除きます。)に関して有する資産、負債、契約上の地位(雇用契約を除きます。)を吸収分割契約に定める範囲において承継します。

S-RACMOは、当社が本事業の製造に関して有する資産、負債、契約上の地位(雇用契約を除きます。)を吸収分割契約に定める範囲において承継します。

なお、債務の承継については免責的債務引受の方法によるものとします。

(6) 債務履行の見込み

本吸収分割後における当社、RACTHERAおよびS-RACMOの債務については、その履行の見込みがあるものと判断しています。

4.本吸収分割および本株式譲渡に係る割当ての内容の根拠等

(1) 割当ての内容の根拠および理由

RACTHERAは、本吸収分割に際し、RACTHERAに承継される事業(以下「対象事業(RACTHERA)」)の対価として普通株式999株を発行し、分割会社である当社に対し交付します。

S-RACMOは、本吸収分割に際し、S-RACMOに承継される事業(以下「対象事業(S-RACMO)」)の対価として約20.7億円を、分割会社である当社に対し交付します。

(2) 算定に関する事項

①算定機関の名称ならびに当社、RACTHERA、S-RACMOおよび住友化学との関係

本株式譲渡の対価の算定にあたって公正性を担保するための措置の一環として、当社は、当社、RACTHERA、S-RACMOおよび住友化学から独立した第三者算定機関としてデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(以下「DTFA」)を選定し、本株式譲渡に係る株式価値の算定を依頼しました。なお、DTFAは、当社、RACTHERA、S-RACMOおよび住友化学の関連当事者には該当せず、当社、RACTHERA、S-RACMOおよび住友化学との間で重要な利害関係を有していません。

②算定の概要

DTFAは、対象事業(RACTHERA)および RACTHERAの価値評価の分析にあたって、将来の事業活動の状況を評価に反映するために、同事業により得られる見込みのキャッシュ・フローに基づきその価値を評価するディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(DCF法)を採用して算定を行い、当社が提供した事業計画に基づきRACTHERA株式価値の算定を行いました。DTFAの算定において、RACTHERA株式価値の想定レンジは、全体として7,539百万円~24,908百万円となりました。なお、本株式譲渡の対象はRACTHERA株式の66.6%であり、上記レンジの66.6%は5,021百万円~16,589百万円に相当します。

当社は、DTFAに提出する事業計画作成にあたり、対象事業 (RACTHERA)において臨床開発段階にあるパイプラインの最新開発計画を反映し、開発の成功確率については外部データを参照して設定しています。また、将来の事業収益に関しては、対象疾患についての外部疫学データや有識者ヒアリング結果を参考に対象製品の市場規模および価格の前提を設定しています。なお、当該事業計画は、当社経営陣による確認のうえで、後述の通りグループ会社間取引利益相反監督委員会でも報告されたものです。

DTFAは、開発の成功確率等の諸前提を当社が上記手順にて設定したことを確認しておりますが、独自にその内容の評価を行っておらず、DTFAの価値算定は、事業計画が当社経営陣により現時点で得られる最善の努力により作成されたものであることを前提としています。なお、DTFAの価値算定は、当社が経営判断のための参考資料として社内利用することを唯一の目的としています。

当社は、対象事業(RACTHERA)が医薬品開発リスクを有していること、当面の間は研究開発および設備投資が必要となることに鑑み、相手方である住友化学との間で協議した結果、本株式譲渡に係る対価を譲渡の実行時点で一括して支払うのではなく、一時金に加えて、開発達成に応じた開発マイルストンおよび事業の発展度合いに応じた販売マイルストンを設定することに合意しました。具体的には、当社は、一時金約20億円に加えて、 契約所定の条件が満たされた場合には、開発マイルストン(最大約40億円)、販売マイルストン(最大約1,500億円)を受領します。当社における初期的な検討の結果、事業計画に基づき実現の可能性およびその時期を考慮して割引計算を行ったこれら全体の現在価値は、DTFAによる株式価値算定結果と整合しています。上記の対価の決定に際して、当社は、事業価値およびDTFAによる株式価値算定結果を勘案し、住友化学との協議・交渉を経て最終決定しています。

S-RACMOへの本吸収分割における分割対価については、対象事業(S-RACMO)の価値を算定するに当たって複数の算定手法を検討しました。対象事業(S-RACMO)は、有形固定資産が対象資産の多くを占めており、将来重要な無形資産が生じることは想定されません。外部専門家との議論も踏まえ、当社は、そのような類型の事業の価値算定においてはコスト・アプローチ(簿価ベース)が合理的な算定手法の一つであると判断し、対象事業(S-RACMO)の評価について当該手法を用いることといたしました。本吸収分割に際しては、第三者機関による価値算定は実施していません。

(3) 上場廃止となる見込みおよびその事由

該当事項はありません。

(4) 公正性を担保するための措置

RACTHERAへの本吸収分割における、対象事業(RACTHERA)の対価は株式であり、当社およびRACTHERA間の取引に関する公正性は、同社が当社の100%子会社であることから適正と判断しています。

住友化学への本株式譲渡およびS-RACMOへの本吸収分割における公正性を担保するための措置は、後述の「11. 支配株主との取引等に関する事項」の「(2)公正性を担保するための措置および利益相反を回避するための措置」に記載しています。

(5) 利益相反を回避するための措置

住友化学への本株式譲渡およびS-RACMOへの本吸収分割に関する取引は親会社との取引に該当することから、後述の「11. 支配株主との取引等に関する事項」の「(2)公正性を担保するための措置および利益相反を回避するための措置」に記載する通り利益相反に関する適切な対応を取っています。また、住友化学の取締役を兼務している当社取締役新沼宏氏は、当社の取締役会での審議に当社の業務執行を担当していない取締役として参加していますが、当社における意思決定の公正性を担保し、利益相反を回避する観点から、本件再編に関する一連の住友化学との協議および当社の取締役会での決議に参加していません。なお、当社代表取締役酒井基行氏については、2024年6月までは住友化学の代表取締役でありましたが、現在は住友化学との兼務関係は存在しないことを踏まえ、当社の代表取締役副社長執行役員として、本件再編に関する一連の当社取締役会での審議および決議に参加しています。

5.分割会社の概要(2024年9月30日現在)

(1) 名称 住友ファーマ株式会社
(2) 所在地 大阪市中央区道修町二丁目6番8号
(3) 代表者の役職・氏名 代表取締役社長 木村 徹
(4) 事業内容 医療用医薬品等の製造および販売等
(5) 資本金 224億円
(6) 設立年月日 1897年5月14日
(7) 発行済株式数 397,900,154株
(8) 決算期 3月31日
(9) 従業員数 2,709名
(10) 主要取引先 株式会社メディセオ、アルフレッサ株式会社、株式会社スズケン
(11) 主要取引銀行 三井住友銀行、三井住友信託銀行、三菱UFJ銀行
(12) 大株主および
持株比率
住友化学株式会社 51.76%
(13) 直前事業年度の財政状態および経営成績(2024年3月期(連結))
資本 156,136百万円
資産 907,506百万円
1株当たり親会社所有者帰属持分 392.82円
売上収益 314,558百万円
営業利益(△は損失) △354,859百万円
当期利益(△は損失) △314,929百万円
1株当たり当期利益 △792.79円
1株当たり配当金 0円

6.承継会社の概要(2024年12月17日現在)

承継会社① 承継会社②
(1) 名称 株式会社RACTHERA S-RACMO株式会社
(2) 所在地 東京都中央区日本橋2-7-1
(当社の東京本社内)
大阪府吹田市江の木町33-94(当社の総合研究所内)
(3) 代表者の役職・氏名 代表取締役社長 池田 篤史 代表取締役社長 土田 敦之
(4) 事業内容 再生医療等製品、特定細胞加工物および再生・細胞医薬関連製品の研究、開発、製造、販売および輸出入 再生・細胞医薬分野の製法開発、製造などの受託
(5) 資本金 100万円 5,000万円
(6) 設立年月日 2024年11月15日 2020年9月1日
(7) 発行済株式数 1株 1,000株
(8) 決算期 3月31日 3月31日
(9) 従業員数 0 29
(10) 主要取引先 住友ファーマ株式会社 住友ファーマ株式会社、
住友化学株式会社
(11) 主要取引銀行 三井住友銀行 三井住友銀行
(12) 大株主および
持株比率
当社の100%子会社 住友化学 66.6%、当社 33.4%
(13) 当社と当該会社の関係
資本関係 当社はRACTHERAの発行済株式の100%を保有しています。 当社はS-RACMOの発行済株式の33.4%を保有しています。
人的関係 当社から1名出向しています。 当社から18名出向しています。
取引関係 該当事項はありません。 当社は当該会社に、大阪府吹田市において工場の土地等を貸与し、製造委託および試験委託をしています。また、資金の貸付をしています。
関連当事者への該当状況 当社の連結子会社 当社の関連会社
(14) 直前事業年度の財政状態および経営成績(2024年3月期(連結))
資本 153百万円
資産 2,149百万円
1株当たり親会社所有者帰属持分 153,000円
売上収益 791百万円
営業利益(△は損失) 133百万円
当期利益(△は損失) 83百万円
1株当たり当期利益 83,000円
1株当たり配当金 0円 0円

7.分割する事業部門の概要

(1) 分割する事業の内容

承継会社 分割する部門の事業内容
RACTHERA 当社の本事業のうち、製造プラントに関する事業を除く
S-RACMO 当社の本事業のうち、製造プラントに関する事業

(2) 分割する部門の経営成績

売上収益(2024年3月期):0円

(3) 分割する資産、負債の項目および金額(2024年9月30日現在)

<RACTHERA>
資産 負債
項目 帳簿価額 項目 帳簿価額
流動資産 68百万円 流動負債 290百万円
固定資産 4,321百万円 固定負債 458百万円
合計 4,389百万円 合計 748百万円
<S-RACMO>
資産 負債
項目 帳簿価額 項目 帳簿価額
流動資産 0百万円 流動負債 3百万円
固定資産 2,078百万円 固定負債 0百万円
合計 2,078百万円 合計 3百万円

注)実際に承継する金額は上記金額に効力発生日までの増減を調整したものになります。

8.分割後の当社、RACTHERAおよびS-RACMOの状況

分割後の当社、S-RACMOの名称、事業内容、本店所在地、代表者、資本金、決算期に変更はありません。

当社は、本吸収分割後、本株式譲渡の実行日をもって、RACTHERAの株式の66.6%(666株)を住友化学に譲渡する予定です。本株式譲渡に伴い生じる変更は、以下の通りです。なお、RACTHERAの名称、事業内容、本店所在地、資本金、決算期に変更はありません。

変更前 変更後
(1) 代表者の役職・氏名 代表取締役社長 池田 篤史 代表取締役社長 池田 篤史
(2) 大株主および
持株比率
当社100% 住友化学 66.6%
当社 33.4%
(3) 所有株式数 当社1,000株 住友化学 666株
当社 334株
(4) 議決権所有割合 当社100% 住友化学 66.6%
当社 33.4%

分割後の当社の資本および資産は、現在精査中であり、判明次第、お知らせします。

本株式譲渡の相手先の概要(2024年3月31日現在)
(1) 名称 住友化学株式会社
(2) 所在地 東京都中央区日本橋2丁目7番1号
(3) 代表者の役職・氏名 代表取締役社長 岩田 圭一
(4) 事業内容 アグロ&ライフソリューション、ICT&モビリティソリューション、アドバンストメディカルソリューション、エッセンシャル&グリーンマテリアルズ、その他(2024年10月1日現在)
(5) 資本金 90,059百万円(2024年10月1日現在)
(6) 設立年月日 1925年6月1日
(7) 直前事業年度(2024年3月期(連結・IFRS))
資本 11,644億円
資産 39,348億円
(8) 大株主および
持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 14.14%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 6.02%
住友生命保険相互会社 4.33%
BNYMSANV AS AGENT/CLIENTS LUX UCITS NON TREATY 1 (常任代理人 株式会社三菱UFJ銀行) 2.94%
日本生命保険相互会社 2.50%
(9) 当社と当該会社の関係
資本関係 当社の議決権の51.78%を所有する親会社です。
人的関係 当社の大分工場の製造部門の134名、その他3名を当該会社から出向者として受け入れています。
取引関係 当社は当該会社から大阪市此花区、大分県大分市等において研究所、工場の土地等を賃借し、これらの研究所、工場で使用する電力やスチーム等の用役を購入しています。主に大分工場で原薬を製造する際に使用する原料を購入しています。また、当社は、金融機関からの借入債務および売掛債権売却に係る債務につき、当該会社からの債務保証を受けています。
関連当事者への該当状況 親会社および主要株主である筆頭株主

9. 会計処理の概要

適用する会計基準については現在精査中です。

10. 今後の見通し

本吸収分割および本株式譲渡による当社の連結業績への影響は、株式譲渡対価の構成要素であるマイルストン の公正価値等について現在算定中であるため、判明次第公表します。

11. 支配株主との取引等に関する事項

(1) 支配株主との取引等の該当性および少数株主の保護の方策に関する指針への適合状況

S-RACMOは、当社と同一の親会社(住友化学)をもつ会社であり、S-RACMOへの本吸収分割は支配株主との取引に該当します。また、RACTHERAへの吸収分割および 吸収分割後の住友化学への本株式譲渡は、一連の取引として支配株主との取引に該当します。

当社は、2024年7月1日に開示したコーポレート・ガバナンスに関する報告書において、支配株主との取引等を行う際における少数株主の保護の方策に関する指針(以下「本指針」)を定めています。本指針において、当社が親会社と取引を行う場合には、当社の企業価値の向上の観点からその公正性および合理性を確保するために、独立社外取締役が出席する取締役会において承認を得ることとするなど、当社は、支配株主との取引について、取引の重要性に応じて適切に監督しています。また、当社の親会社またはその子会社(当社およびその子会社を除く。)との重要な取引等については、取締役会の諮問機関として設置した、すべての独立社外取締役によって構成されるグループ会社間取引利益相反監督委員会において、少数株主の利益保護の観点から審議を行うこととしています。なお、「コーポレート・ガバナンスに関する基本方針」において、取締役会はグループ会社間取引利益相反監督委員会の答申を尊重する旨が定められています。

当社は、今回の取引にあたり、コーポレート・ガバナンスに関する基本方針に則り、後述(2)に記載の通り、グループ会社間取引利益相反監督委員会における審議と答申を踏まえ、意思決定を行いました。今回の取引は、本指針に適合しており、その手続きは適正であると判断しています。

(2) 公正性を担保するための措置および利益相反を回避するための措置

当社の グループ会社間取引利益相反監督委員会は、本吸収分割および本株式譲渡の評価にあたり、2024年7月31日から2024年11月29日までに、合計4回の委員会会議を開催したほか、必要に応じて随時協議を行い、本件再編の目的、背景、本件再編の趣旨、概要、事業内容、事業価値の内容および本件再編に関する住友化学との諸条件の交渉経緯について把握し、検討を行いました。その後、当委員会は、2024年12月17日開催の委員会会議において、本件再編の経済条件を含む取引条件の交渉経緯と決定過程について説明を受け、取引目的の適切性、取引条件の妥当性および取引手続きの公正性の各論点について慎重に審議、検討をした結果、今回の取引を行うことの決定は当社の少数株主にとって不利益ではないとの結論に至り、同日開催の取締役会において答申しました。

当社の取締役会は、上記のグループ会社間取引利益相反監督委員会の答申を踏まえて、2024年12月17日開催の取締役会において、本吸収分割および本株式譲渡にかかる契約の締結を承認し、当社は、2024年12月17日に、当該契約を締結しました。

なお、住友化学の取締役を兼務している当社取締役新沼宏氏は、前述の「4. 本吸収分割および本株式譲渡に係る割当ての内容の根拠等」の「(5)利益相反を回避するための措置」に記載の通り、当社の取締役会での審議に当社の業務執行を担当していない取締役として参加していますが、当社における意思決定の公正性を担保し、利益相反を回避する観点から、本件再編に関する一連の住友化学との協議および当社の取締役会での決議に参加していません。また、当社代表取締役酒井基行氏については、2024年6月までは住友化学の代表取締役でありましたが、現在は住友化学との兼務関係は存在しないことを踏まえ、当社の代表取締役副社長執行役員として、本件再編に関する一連の当社取締役会での審議および決議に参加しています。

(3) 当該取引等が少数株主にとって不利益なものではないことに関する、支配株主と利害関係のない者から入手した意見の概要

RACTHERAの本株式譲渡、S-RACMOの本吸収分割について、2024年12月17日開催のグループ会社間取引利益相反監督委員会の審議および答申の概要は以下の通りです。

RACTHERAの本株式譲渡

本事業は当社が長い年月をかけて培ってきた技術と叡智の結集であり、当社のコアビジネスに該当する。本事業の事業化には、継続的な研究開発投資および生産体制構築に向けた設備投資が必要であるものの、当社の現在の財務状況から研究開発段階の事業への投資は限定的にならざるを得ない。また、当社単独で本事業を継続する場合は、研究開発体制および事業モデルの抜本的な見直しが必要であり、当社 の 研究開発型医薬品会社としての事業基盤を維持するためには、本事業への資金を外部から調達する施策が必要である。本株式譲渡により、住友化学から本事業を行うRACTHERAへの66.6%の出資を受け入れることで、事業最大化のために必要な研究開発・設備投資資金を、当社単独で事業推進するよりも安定的に確保することが可能となる。

住友化学とは、臨床段階のパイプラインについて継続して開発を進めることが合意されている。また、当社は、出資および役員派遣を通じて引き続きRACTHERAの意思決定および事業運営に関与することが担保されている。本事業の最速事業化には当社がこれまで培ってきた経験、ノウハウおよびファーマ機能を活かすことが極めて重要である。住友化学グループ内における当社とRACTHERAとの間の連携は、これを最大限に活用できる枠組みであるといえる。

本件再編によって、当社のコスト負担は自社単独時の33.4%に軽減されるとともに、本株式譲渡の譲渡対価である一時金、および、将来 契約所定の条件が満たされた場合におけるマイルストン受取りによるキャッシュインが期待され、損益およびキャッシュ・フローの改善が見込める。その結果、当社が進める開発品へ研究開発予算を配分することが可能となり、研究開発戦略に柔軟性を持たせることができる。加えて、RACTHERAと当社との連携は、当社のファーマ基盤の維持および強化につながり、当社社員のモチベーション維持および向上にも資すると考えられる。

したがって、本件再編は当社の経営方針と事業戦略に合致し、当社の企業価値向上に資するものであるから、本取引の取引目的には適切性があると判断した。

株式譲渡対価は、前述の「4.本吸収分割および本株式譲渡に係る割当ての内容の根拠等」の「(2) 算定に関する事項」に記載の通り、第三者機関から取得した価値算定結果に基づいており、住友化学と交渉・協議を行った結果、決定されている。株式譲渡対価においては、一時金約20億円に加えて、RACTHERA事業の発展に より契約所定の条件が満たされた場合に受け取る最大で1,500億円超のマイルストンが設定されている。

このような対価形態は医薬品業界の導出入における一般的な対価設定手法であり、医薬品ビジネスである本事業の合弁化という性質に鑑みて合理的である。また、本事業の各パイプラインの科学的革新性を踏まえると、開発リスクは高いものの、将来事業が発展した際にその発展規模に応じた対価を受領できる開発および販売マイルストンの設定は、本事業成功時に大きなリターンを期待している当社株主の期待に沿っている。本株式譲渡の対価設計にマイルストンを含むことについては、住友化学とも協議を行い、事業化に投資と時間を要する本事業の特質から適切なものであるとの合意を得ている。

当面研究開発投資によるキャッシュアウトが続くと想定される本事業の性質に鑑み、本株式譲渡の対価において、RACTHERA事業の発展により契約所定の条件が満たされた場合に受領するマイルストンに比して、一時金を小さくすることは合理的であると認められる。販売マイルストンは、開発中のパイプラインの開発成否を踏まえて網羅的にケースを検討し、事業計画と成功確率、マイルストン発生時期を踏まえた現在価値を考慮の上で設定されている。また、事業計画を踏まえ、当社と住友化学の双方の利益のため、マイルストンタイミングを可能な限り平準化するように設計されている。一時金に加えて、開発および販売マイルストンを達成した場合に受領する収益に成功確率と時期を考慮して算出した全体の現在価値は、当社の初期的な検討の結果、DTFAによる株式価値算定結果のレンジ内である。

以上の検証の結果、本株式譲渡の取引価格の算定プロセスには透明性・妥当性が認められる。

また、当事者間の契約は、すべて双方の法務部門または当社と利害関係のない外部弁護士によって確認されており、取引価格以外の契約条件について不合理な点は存在しない。

したがって、本件再編の取引条件は当社の少数株主にとって不利益なものではなく、妥当性が認められると判断した。

さらに、本株式譲渡に関する意思決定の手続きは、「11. 支配株主との取引等に関する事項」の「(2) 公正性を担保するための措置および利益相反を回避するための措置」に記載の通り本指針に適合しており、その手続きは公正であると判断した。

以上より、本株式譲渡を行うことの決定は、当社の少数株主にとって不利益ではないと判断した。

S-RACMOの本吸収分割

本事業は、当社のコアビジネスであり、当社の再生・細胞製造プラントであるSMaRTはその生産機能を担う重要設備である。また、当社と住友化学の合弁会社であるS-RACMOは、再生・細胞医薬製品のCDMO事業を業とし、 対象事業(S-RACMO)は当該領域におけるモノづくりを支える戦略上重要な事業と位置づけている。したがって、対象事業(S-RACMO)は当社のコアビジネスに該当する。S-RACMOが担う再生・細胞医薬製品のCDMO事業は、モノづくりの高度化・ノウハウの蓄積を通じて、当該事業領域における競争優位性を確保している。一方、当社の 再生・細胞製造プラントであるSMaRTは、iPS細胞を使った細胞医薬品製造専用施設として世界初の生産設備であり、当社がiPS細胞由来の細胞医薬品の研究開発を進めるにあたって重要な資産である。従来より、当社の製造プラントの組織とS-RACMOは、細胞医薬品製造に関する技術連携および人的資本連携を図っており、本吸収分割による一体化で技術革新への取り組みが加速し、CDMO事業の基盤強化につながると考えられる。また、当社の製造関連施設・組織とS-RACMOが一体化することで技術連携の深化を図り、技術基盤の強化と新たな技術革新につなげ、外部からの認知度の向上と、将来的な新規顧客開拓が期待できる。さらに、再生・細胞医薬製品の製造関連施設を集約することで技術およびコストシナジーを見込むことができ、原価率低減が期待できる。加えて、住友化学との合弁会社であるS-RACMOが生産拠点の中心となることで、当社にとって設備強化に係る投資の負担を軽減できると考えられる。

本吸収分割後も、当社は出資および役員派遣を通じて引き続き S-RACMOの意思決定および事業運営に関与することが可能である。また、再生・細胞医薬分野における製造・生産の重要性に鑑みると、S-RACMOの本吸収分割の実行は、当社と、住友化学およびRACTHERAとの緊密な連携を可能にするものであり、大きなメリットがあると考えられる。

したがって、S-RACMOの本吸収分割は当社の経営方針と事業戦略に合致し、当社の企業価値向上に資するものであるから、取引目的には適切性があると判断した。

S-RACMOの事業運営に係る意思決定の方法については本吸収分割によって変更はなく、出資比率に相応であり、従来どおり当社が事業運営に関与することが可能である。また、当事者間の契約は、すべて双方の法務部門または当社と利害関係のない外部弁護士によって確認されており、取引価格以外の契約条件について不合理な点は存在しない。さらに、対象事業(S-RACMO)の主要資産は有形固定資産であり、将来重要な無形資産が生じることは想定されないことから、コスト・アプローチ(簿価ベース)にて評価することが適切であると考えられ、取引価格の算定プロセスには透明性・妥当性が認められる。

したがって本件再編の取引条件は当社の少数株主にとって不利益なものではなく、妥当性が認められると判断した。

さらに、S-RACMOの本吸収分割に関する手続きは、「11. 支配株主との取引等に関する事項」の「(2) 公正性を担保するための措置および利益相反を回避するための措置」に記載の通り本指針に適合しており、その手続きは公正であると判断した。

以上より、S-RACMOの本吸収分割を行うことの決定は、当社の少数株主にとって不利益ではないと判断した。

以上

報道関係者の皆さまからのお問い合わせ