印刷(PDF/153KB)はこちらから 2025年06月13日 研究開発

開発中の抗がん剤nuvisertib(TP-3654)について FDA「ファストトラック指定」受領のお知らせ

住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:木村 徹)は、米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.(以下「SMPA社」)が、開発中の抗がん剤であるnuvisertib(一般名、開発コード:TP-3654)について、米国食品医薬品局(FDA)より中等度または高リスクの骨髄線維症を対象とした「ファストトラック指定(Fast Track Designation)」を受領したことを発表しましたので、お知らせします。

Nuvisertibは、選択的経口PIM1キナーゼ阻害剤であり、2025年欧州血液学会(EHA、開催場所:イタリア ミラノ)において、最新のフェーズ1/2試験の予備的なデータが発表されており、症状の反応と相関するサイトカインおよび脾臓容積の改善を含む臨床効果が示唆されました。

FDAの「ファストトラック指定」は、重篤または生命を脅かす恐れのある疾患に対する治療法のうち、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患に対して治療効果が期待される治療法に付与されます。本指定により、FDAとの協議をより頻繁に行うことや申請資料を段階的にFDAに提出することが可能となり、FDAは全データの提出を待たずに提出されたデータから順次審査を進めることができます。さらに、今後得られる臨床試験結果によって、優先審査の対象となることも期待されます。

骨髄線維症は、重篤かつ希少な血液悪性腫瘍であり、JAKシグナル伝達経路の異常によって骨髄に線維組織が蓄積することを特徴とします。骨髄線維症の臨床症状には、脾臓の腫大(脾腫)、著しい全身症状、およびヘモグロビンや血小板の減少などが含まれ、世界で50万人に1人が罹患するとされています。骨髄線維症に対しては、持続的かつ高い奏効率を示し、血液毒性の少ない、併用療法を含む新たな治療選択肢の開発が強く求められています。

再発または難治性の骨髄線維症患者を対象としたnuvisertibのフェーズ1/2試験の最新データを2025年6月12日に開催されたEHAで発表しました。予備的なデータによると、nuvisertibの単剤療法は良好な忍容性を示し、用量制限毒性(DLT)は認められませんでした。評価可能な患者において、脾臓容積減少(SVR25 22.2%)、全身症状軽減(TSS50 44.4%)、骨髄線維化の改善(42.9%)、ヘモグロビン値の改善(24%)、血小板数の改善(26.7%)を含む臨床活性が認められました。また、nuvisertibの治療により、炎症性サイトカイン(EN-RAGE、MIP-1β等)の減少および抗炎症性サイトカイン(アディポネクチン等)の増加を含むサイトカインの著しい変化が認められ、これらの変化と症状の改善および脾臓容積の改善に有意な相関(p<0.001)が示されました。

非臨床試験データおよび現在進行中の治験データより、nuvisertib単剤療法のみならずJAK阻害剤との併用療法が骨髄線維症の患者さんに対して有望な選択肢となる可能性が示唆されています。

ご参考

nuvisertib(TP-3654)について

nuvisertib(TP-3654)は選択的経口PIM1キナーゼ阻害剤であり、非臨床モデルにおいて、アポトーシスの誘導を含め複数の経路を通じて抗腫瘍および抗線維化活性が示されています。本剤は、骨髄線維症の主たる原因遺伝子の一つであるJAK2V617F変異を発現するマウスおよびヒト血液細胞において腫瘍性増殖を抑制し、アポトーシスを誘導させることが認められています。また、本剤の単独投与およびルキソリチニブとの併用投与により、JAK2V617FおよびMPLW515Lを造血細胞特異的に発現させることで作成した骨髄線維症マウスモデルにおいて、白血球および好中球数の正常化、脾臓サイズおよび骨髄線維化の減少が認められています。本剤の安全性および有効性については現在、米国・日本において中等度または高リスクの骨髄線維症患者を対象としたフェーズ1/2試験において評価しています。本剤は、2022年5月に骨髄線維症の適応でFDAからオーファンドラッグ指定を受けました。また、2024年11月に骨髄線維症の適応で厚生労働省から希少疾病用医薬品指定を受けています。

以上

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