印刷(PDF/237KB)はこちらから 2025年11月04日 研究開発
米国血液学会(ASH)2025における開発中の抗がん剤enzomenib(DSP-5336)およびnuvisertib(TP-3654)に関する臨床データ発表のお知らせ
住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:木村 徹)の米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.(以下「SMPA社」)は、米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)の2025年年次総会(開催時期:12月6日~12月9日、開催場所:米国オーランド)において、抗がん剤として開発中の、メニン-MLLタンパク質結合阻害剤enzomenib(一般名、開発コード:DSP-5336)および選択的経口PIM1キナーゼ阻害剤nuvisertib(一般名、開発コード:TP-3654)に関する最新の臨床データを発表しますので、お知らせします。
enzomenibは、再発または難治性の急性白血病患者を対象としてフェーズ1/2試験が進行中であり、lysine
methyltransferase 2A(KMT2A)遺伝子の再構成、nucleophosmin
1(NPM1)遺伝子の変異、またはHOXA9/MEIS1が関連する白血病の他のサブタイプを有する患者に対し、治療効果を示す可能性のある幅広い投与量において有望な臨床活性が引き続き示されました。また、enzomenib単剤40mg
1日2回から400mg
1日2回までの用量漸増試験において、116例で用量制限毒性(DLT)が認められなかったことから、enzomenibは治療域が広く、白血病のタイプに応じて最適な治療効果が得られる投与量を調整できる可能性が示唆されました。また、200mg、300㎎および400mg
1日2回投与で持続的な完全寛解(CR)および部分的な血液学的回復を伴う完全寛解(CRh)が認められました。
さらに、NPM1遺伝子の変異またはMLL遺伝子の再構成を有する急性骨髄性白血病患者でのvenetoclax(VEN)/azacitidine(AZA)との併用において、300mg
1日2回までDLTは認められていません。また、enzomenibとVENの顕著な薬物相互作用の所見はなく、併用療法の忍容性は良好であることが示唆されました。特にVENまたはメニン阻害剤の前治療歴がない患者で、有望な初期の臨床活性が認められました。
白血病は造血組織に発生する血液悪性腫瘍の一種で、骨髄における血液細胞(通常は白血球)の無秩序な増殖を特徴とします。白血病の一種である急性白血病では、血液細胞が急速に増殖し、突然症状が現れるため、早急な治療が必要とされています。急性骨髄性白血病患者さんの約30%がNPM1遺伝子の変異を有し、5~10%がMLL遺伝子の再構成を有しているといわれています。
nuvisertibは、再発または難治性の骨髄線維症患者を対象としてフェーズ1/2試験が進行中であり、JAK阻害剤モメロチニブとの併用において、初期の臨床活性と良好な忍容性が認められ、モメロチニブとの併用療法の開発継続を支持する結果が示されました。また、nuvisertibの単剤投与において、良好な忍容性とDLTがないことが引き続き示されており、サイトカインプロファイルの顕著な変化と臨床反応の強い相関が認められました。
骨髄線維症は稀な血液悪性腫瘍の一種で、JAKシグナル伝達経路の調節異常によって骨髄に線維組織が蓄積することを特徴とし、血液細胞の産生に影響を及ぼすことがあります。骨髄線維症は重篤かつ希少な疾患であり、世界中で毎年10万人あたり0.7人が新たに発症しています。
【ASH2025での発表の概要】
enzomenib(DSP-5336)に関する口頭発表①
| 演題 | Monotherapy Update from Phase 1 Portion in Phase1/2 trial of the Menin-MLL Inhibitor Enzomenib (DSP-5336) in Patients with Relapsed or Refractory Acute Leukemia |
|---|---|
| セッション名 | 616. Acute Myeloid Leukemias: Investigational Drug and Cellular Therapies: Menin inhibitors and FLT3 inhibitors in AML |
| 発表日時 |
2025年12月8日(月) 午前10:00から正午(現地時間) プレゼンテーションは午前10:30(現地時間) |
| 場所 | Chapin Theater(320)(Orange County Convention Center) |
| 筆頭発表者 | Naval G. Daver, M.D. |
- ※抄録の内容は、ASHのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
- https://meetings-api.hematology.org/api/abstract/vmpreview/290681
enzomenib(DSP-5336)に関する口頭発表②
| 演題 | Preliminary data from the ongoing Phase 1 study of the menin-MLL inhibitor enzomenib (DSP-5336) in combination with venetoclax and azacitidine in patients with relapsed or refractory Acute Myeloid Leukemia |
|---|---|
| セッション名 | 616. Acute Myeloid Leukemias: Investigational Drug and Cellular Therapies: Menin inhibitors and FLT3 inhibitors in AML |
| 発表日時 |
2025年12月8日(月) 午前10:30から正午(現地時間) プレゼンテーションは午前11:00(現地時間) |
| 場所 | Chapin Theater(320)(Orange County Convention Center) |
| 筆頭発表者 | Justin M. Watts, M.D. |
- ※抄録の内容は、ASHのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
- https://meetings-api.hematology.org/api/abstract/vmpreview/290682
nuvisertib(TP-3654)に関する口頭発表
| 演題 | Preliminary data from the Phase I/II study of nuvisertib, an oral investigational selective PIM1 inhibitor, in combination with momelotinib showed clinical responses in patients with relapsed/refractory myelofibrosis |
|---|---|
| セッション名 | 634. Myeloproliferative Syndromes: Clinical and Epidemiological: Between a Rock and a Ropeg - Innovative Therapies for MPNs |
| 発表日時 |
2025年12月7日(日) 午前9:30から午前11:00(現地時間) プレゼンテーションは午前9:45(現地時間) |
| 場所 | W414AB(Orange County Convention Center) |
| 筆頭発表者 | John Mascarenhas, M.D. |
- ※抄録の内容は、ASHのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
- https://meetings-api.hematology.org/api/abstract/vmpreview/292527
nuvisertib(TP-3654)に関するポスター発表
| 演題 | Nuvisertib, an oral investigational selective PIM1 kinase inhibitor, showed clinical responses strongly correlating with cytokine modulation in patients with relapsed/refractory myelofibrosis in the ongoing global phase I/II study |
|---|---|
| セッション名 | 634. Myeloproliferative Syndromes: Clinical and Epidemiological: Poster I |
| 発表日時 |
2025年12月6日(土) 午後5:30から午後7:30(現地時間) プレゼンテーションは午後5:30(現地時間) |
| 場所 | West Halls B3-B4(Orange County Convention Center) |
| 筆頭発表者 | Lindsay A.M. Rein, M.D. |
- ※抄録の内容は、ASHのウェブサイトに掲載されています。(英語のみ)
- https://meetings-api.hematology.org/api/abstract/vmpreview/291259
ご参考
enzomenib(DSP-5336)について
enzomenibは、急性白血病およびその他の多様ながんにおける腫瘍細胞の増殖に関与する重要な分子機構であるメニンタンパク質とKMT2Aンパク質との結合を阻害する低分子経口剤です。KMT2A遺伝子の再構成やNPM1遺伝子の変異を有する急性骨髄性白血病では、メニンとKMT2Aの結合による、造血幹細胞の維持に必要となる遺伝子(HOXA9 および MEIS1 遺伝子)の異常発現が認められ、急性骨髄性白血病の発症・維持に関連しているといわれています。本剤は、非臨床試験において、メニンとKMT2Aの結合を阻害することにより、それらの遺伝子の発現減少を介した抗腫瘍作用が示されました。本剤は、米国食品医薬品局(FDA)から、2022年6月に急性骨髄性白血病の適応でオーファンドラッグ指定を、2024年6月にKMT2A遺伝子の再構成またはNPM1遺伝子の変異を有する再発または難治性の急性骨髄性白血病の適応でファストトラック指定を受けています。また、厚生労働省から、2024年9月に、再発または難治性のKMT2A遺伝子再構成陽性またはNPM1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病の適応で希少疾病用医薬品指定を受けています。
nuvisertib(TP-3654)について
nuvisertibはPIM1(proviral integration site for Moloney murine leukemia virus 1)キナーゼ阻害を介して炎症性シグナル経路を抑制します。PIM1キナーゼは、様々な血液がんおよび固形がんにおいて過剰発現し、がん細胞のアポトーシス回避、腫瘍増殖の促進につながる可能性があります。本剤は骨髄線維症の適応で、FDAから2022年5月にオーファンドラッグ指定を、2025年6月にファストトラック指定を、厚生労働省から2024年11月に希少疾病用医薬品指定を、欧州医薬品庁(EMA)から2025年7月にオーファンドラッグ指定を受けています。
以上
報道関係者の皆さまからのお問い合わせ