印刷(PDF/174KB)はこちらから 2026年06月16日 研究開発

欧州血液学会(EHA)2026における開発中の抗がん剤であるnuvisertibおよびenzomenibに関する最新データ発表のお知らせ

住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:木村 徹)の米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.は、欧州血液学会(EHA:European Hematology Association)の2026年年次総会(開催時期:6月11日~6月14日、開催場所:スウェーデン・ストックホルム)において、抗がん剤として開発中の選択的経口PIM1キナーゼ阻害剤nuvisertib(一般名)および選択的経口メニン阻害剤enzomenib(一般名)に関する予備的な臨床データおよびトランスレーショナル研究の新たな知見を発表しましたので、お知らせします。

本学会では、再発または難治性の骨髄線維症患者を対象としたnuvisertibとモメロチニブの併用療法の予備的な臨床データが初めて発表され、進行中のnuvisertibのフェーズ1/2試験において骨髄線維症患者で観察されたヘモグロビン改善の作用機序に関する新たなトランスレーショナル研究の知見が示されました。これらに加え、急性白血病におけるenzomenibの耐性機構に関する新たな研究データが報告されました。

nuvisertibとモメロチニブの併用療法については、安全性と有効性を評価する目的でグローバルフェーズ1/2試験が進行中であり、2025年12月6日時点において、再発または難治性の骨髄線維症で貧血を伴う患者26例が登録されました。全例が骨髄線維症患者の標準治療であるJAK阻害剤による前治療歴があり、41%の患者に高分子リスク変異が認められました。

nuvisertib(240、360、480、720mg 1日2回、食後投与)とモメロチニブ(200mg 1日1回)の併用療法は良好な忍容性を示し、用量制限毒性(DLT)は認められませんでした。20%以上の患者で認められた主な治療関連有害事象は下痢、悪心および血小板減少であり、このうちグレード3は出血を伴わない血小板減少が3例でした。また、24週間の治療期間を通じて、ヘモグロビン平均値および血小板数は安定して推移しました。

有効性評価が可能で、少なくとも12週間の投与を完了した患者(15例)においては、臨床活性が観察されました。脾臓容積25%以上減少(SVR25)が認められた患者の割合は12週時点で73%、24週時点で100%(n=5)に達し、全身症状スコア50%以上軽減(TSS50)した患者の割合は12週時点で53%、24週時点で60%(n=5)でした。また、IWG ELN2024基準に基づく貧血改善がいずれかの時点で認められた患者は50%でした。さらに、24週時点において60%の患者が、症状改善、脾臓縮小および貧血改善の3つの指標をすべて満たすトリプルレスポンスを達成しました。

nuvisertibとモメロチニブの併用療法の開発は、骨髄線維症の進展に関与する複数のシグナル経路を包括的に抑制する必要性に基づいています。従来の治療法は、JAKシグナル経路の阻害が中心ですが、PIM1の発現はしばしば亢進しており、NF-κBやERGといったJAK非依存的な代替経路によって誘導される可能性が指摘されており、これらの経路はJAK阻害剤治療下でも疾患の存続・進行を可能にする要因となります。nuvisertibとモメロチニブの併用により、これらの代替シグナル経路も包括的に抑制することで、より持続的な治療効果が期待されています。

nuvisertibの作用機序をより明確化するためのトランスレーショナル研究では、nuvisertibはPIM1阻害作用に加えてACVR1にも結合・阻害し、鉄代謝の主要な調節因子であるヘプシジンのmRNA発現が低下するというin vitro試験および生化学的なデータが示されました。これらの知見と一致して、nuvisertib単剤療法のフェーズ1/2試験において、再発または難治性の骨髄線維症患者でヘプシジン濃度の低下が認められ、ヘモグロビン値の安定化および改善効果の作用機序である可能性が示唆されました。

また、白血病およびメニン阻害に関するトランスレーショナル研究では、急性白血病患者におけるenzomenib治療後の獲得耐性と関連するMEN1遺伝子の特異的な変異パターンが同定されました。治療前後で遺伝子の状態を連続的に調べた結果、E368K変異が再発時に最も多く見られる耐性獲得の要因であることが明らかになり、初回治療では効果があったものの再発した患者のうち53%でこの変異が認められました。前臨床研究では、このE368K変異がenzomenibの主要な耐性変異となることが予測されるとともに、この変異が他のメニン阻害剤の活性に影響を及ぼさない可能性が示唆されました。これらの知見は、急性白血病患者における治療成績の改善に向けて、逐次的なメニン阻害療法のさらなる検討を支持するものです。

本学会で発表した結果は、骨髄線維症および急性白血病といった血液腫瘍に対して、複数の作用機序に基づく治療アプローチの重要性を示すものであり、引き続きnuvisertibおよびenzomenibの臨床開発を推進していきます。

ご参考

骨髄線維症について

骨髄線維症は、重篤かつ希少な血液悪性腫瘍であり、JAKシグナル伝達経路の異常によって骨髄に線維組織が蓄積することを特徴とします。骨髄線維症の臨床症状には、脾臓の腫大(脾腫)、著しい全身症状、およびヘモグロビンや血小板の減少などが含まれ、世界で10万人に0.7人が罹患するとされています。骨髄線維症に対しては、持続的かつ高い奏効率を示し、血液毒性の少ない、併用療法を含む新たな治療選択肢の開発が強く求められています。

白血病について

白血病は造血組織に発生する血液悪性腫瘍の一種で、骨髄における血液細胞(通常は白血球)の無秩序な増殖を特徴とします。白血病の一種である急性白血病では、血液細胞が急速に増殖し、突然症状が現れるため、早急な治療が必要とされています。急性骨髄性白血病患者さんの約30%がNPM1遺伝子の変異を有し、5~10%がKMT2A遺伝子の再構成を有しているといわれています。

nuvisertibについて

nuvisertibはPIM1(proviral integration site for Moloney murine leukemia virus 1)キナーゼ阻害を介して炎症性シグナル経路を抑制します。PIM1キナーゼは、様々な血液がんおよび固形がんにおいて過剰発現し、がん細胞のアポトーシス回避、腫瘍増殖の促進につながる可能性があります。本剤は骨髄線維症の適応で、FDAから2022年5月にオーファンドラッグ指定を、2025年6月にファストトラック指定を、厚生労働省から2024年11月に希少疾病用医薬品指定を、欧州医薬品庁(EMA)から2025年7月にオーファンドラッグ指定を受けています。

enzomenibについて

enzomenibは、急性白血病およびその他の多様ながんにおける腫瘍細胞の増殖に関与する重要な分子機構であるメニンタンパク質とKMT2Aタンパク質との結合を阻害する低分子経口剤です。KMT2A遺伝子の再構成やNPM1遺伝子の変異を有する急性骨髄性白血病では、メニンとKMT2Aの結合による、造血幹細胞の維持に必要となる遺伝子(HOXA9およびMEIS1遺伝子)の変異発現が認められ、急性骨髄性白血病の発症・維持に関連しているといわれています。本剤は、非臨床試験において、メニンとKMT2Aの結合を阻害することにより、それらの遺伝子の発現減少を介した抗腫瘍作用が示されました。本剤は、米国食品医薬品局(FDA)から、2022年6月に急性骨髄性白血病の適応でオーファンドラッグ指定を、2024年6月にKMT2A遺伝子の再構成またはNPM1遺伝子の変異を有する再発または難治性の急性骨髄性白血病の適応でファストトラック指定を受けています。また、厚生労働省から、2024年9月に、再発または難治性のKMT2A遺伝子再構成陽性またはNPM1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病の適応で希少疾病用医薬品指定を受けています。

以上

報道関係者の皆さまからのお問い合わせ