薬の「種類」と「工夫」
薬の自由研究ガイド Vol.1

自由研究のテーマは決まりましたか?まだなら「薬」について調べてみてはいかがでしょうか。薬ができるまでのことや薬の種類、働き、使い方、薬の歴史、

薬に関するお仕事など、いろいろなテーマがありそうです。
ここでは、薬に関する自由研究の方法や研究のまとめ方についてガイドします。

くすりのカタチのなぜ?に迫る 薬の「種類」と「工夫」を調べよう

STEP1 研究を始める前に

錠剤、カプセル剤、粉薬……。薬の形状は、実にさまざまです。まずは思いつく薬の種類を書き出してみましょう。口からのむ「内用薬」だけではなく、湿布や目薬などの「外用薬」、そして「注射薬」もありますよ。

いくつありましたか? 薬を飲む。薬の入口とその種類 からだを旅する薬のこと Vol.1でも紹介している通り、たくさんの種類があります。  

研究を始める前に

STEP2 テーマを絞り込む

どうしてこんなにたくさんの種類の薬があるのでしょうか。それにはちゃんと理由があります。効かせたい場所に適切なタイミングで、適切な量の薬の成分を届けるには、それぞれに適した形状があるからです。「なぜこの薬は錠剤なのだろう」「なぜ表面が甘いのだろう」「水なしでのめる薬ってどうなっている?」そんな風に疑問に思ったことを調べてみては?

みんなもそれぞれテーマを見つけてみよう!

テーマ例:錠剤の種類と特徴をまとめる

多くの人にとって、一番身近な薬の形状として挙げられるのは、まず錠剤ではないでしょうか。薬の成分に、のみやすい大きさに整えるための“かさ増し”成分や、固まりやすくするための成分などを加えて固めたものを錠剤と呼びますが、その種類は多種多様です。主なものをリストアップしてみると……

素錠(裸錠)、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、徐放錠、口腔内崩壊錠(OD錠)、舌下錠、チュアブル錠などがあります。

それぞれについて、どのような薬なのか、どういう薬に使われているのか、のみ方の注意点など、調べてみましょう。

みんなもそれぞれテーマを見つけてみよう!

STEP3 調べ方

薬の情報が集まっているウェブサイトを見る

薬のことを調べるなら、薬を製造・販売する各企業のウェブサイトや、こうした企業が集まって運営している団体のウェブサイトなどに載っている情報を参考にするのがお薦めです。
たとえば、

日本製薬工業協会(製薬協)外部リンク

研究開発志向型の製薬企業が加盟する団体(任意団体)。薬の情報をQ&A形式でまとめた「くすりの情報Q&A」や、小中学生が薬について学ぶための「くすり研究所」などのページがあります。

くすりの適正使用協議会 外部リンク

医薬品の適正使用を推進する団体(一般社団法人)。薬を正しく安全に使うために必要な情報を集めた「くすりの使い方」、薬の情報を調べるための「くすりの検索」などのページがあります。

もちろんこの、すこやかコンパス内の情報も参考にしてください。
今回のテーマなら、薬を飲む。薬の入口とその種類 からだを旅する薬のこと Vol.1が参考になりそうです。

 

添付文書を見る

個々の薬について、一番信頼できる情報源は添付文書です。まずは、家に常備してある薬の添付文書を見てみましょう。たとえば市販の便秘薬の中には、効かせたい場所である腸に薬の成分を届けるために、胃では溶けず、腸で溶けるようにした「腸溶錠」という形状のものがあります。添付文書の「用法・用量」や「用法・用量に関連する注意」といった項目を見てみると……
かんだり、つぶしたりせずに、そのまま服用してください。
制酸剤(注)や牛乳と同時に服用しないでください。
(注)制酸剤:多くの胃薬に含まれている成分で、胃酸を中和する働きを持つ。
といったことが書いてあります。「なぜかんだり、つぶしたりしたらいけないのだろう?」「制酸剤や牛乳と同時に服用してはいけないのはなぜ?」という疑問が浮かんでくるのではないでしょうか。それを詳しく調べてみましょう。

なお添付文書のことは、薬のよくある副作用 クスリはリスク Vol.2でも紹介しています。

疑問に思ったことは、 スコッピィくん:ドンドン調べてみよう!

 

本で調べる

「薬の事典」「薬の○○○がわかる本」というような名前を付けた薬の解説本が多数出ています。
学校や市区町村の図書館で探してみては?

STEP4 研究をまとめる

正しい?間違い?

いろいろな資料を調べることになりますが、ここで注意点が1つ。インターネットを使えば、キーワードを入れるだけで簡単に情報が得られます。しかし、全ての情報が正しいというわけではなく、書いている人の誤解や勘違いもあれば、中にはわざと間違った情報が流されていることもあります。

少なくとも、資料を作った人、団体などが明記されている資料を参考にしてください。そして、どの資料を参考にしたかについても、研究レポートに書きましょう。そうすることで、あなたの研究レポートの信頼性は上がります。

腸溶錠を中心に、錠剤の種類と特徴をまとめた例を以下に示します。いくつかの錠剤について同様に調べてみるのもいいでしょうし、調べているうちに、各製薬企業が開発した独自の製法が見つかったら、それについて深く探るのもいいでしょう。

イラストや表なども使って、分かりやすくまとめてください。

正しい?間違い?

 

まとめ方の例

研究テーマ

錠剤のかたちについて(特に腸溶錠のこと)

 
このテーマを選んだ理由

家にある便秘薬の添付文書に書いてある注意書きを見て、
疑問に思うことがあったから。

 
研究したこと

腸溶錠の用法・用量に関する注意点について
主な錠剤の種類と特徴

 
研究結果
便秘薬の「○○○」の添付文書には下記のように書いてあった。
かんだり、つぶしたりせずに、そのまま服用してください。
制酸剤(注)や牛乳と同時に服用しないでください。
(注)制酸剤:多くの胃薬に含まれている成分で、胃酸を中和する働きを持つ。
○○○の添付文書(2016年2月改訂)から転載

 
どうしてかんだりつぶしたりしてはいけないのか

この薬は腸溶錠という種類のもの。腸で効かせたいので、胃では溶けずに腸で溶けるように有効成分をいくつもの層で覆っている。かんだりつぶしたりしたら、この層が壊れてしまい、有効成分が腸に届きにくくなってしまうし、薬の成分が胃を刺激して、胃の調子を悪くすることもある。だからかんだりつぶしたりしてはいけない。

便秘薬「◯◯◯」の構造
参考資料:○○○社のウェブサイトhttp://………のイラスト

 
腸溶錠を水でのんだ場合と牛乳でのんだ場合
参考資料:薬の○○○がわかる本(○○○出版)、
○~○ページ、 2016年4月発行
制酸剤や牛乳と同時に服用していけない理由

胃の中は酸性だから、この薬は酸性では有効成分を包む層が溶けないように作られている。中性の腸に届いたら溶けて有効成分が腸に広がる。だから胃酸を中和する制酸剤を一緒にのんだり、胃を中性に傾ける牛乳でのんだりすると、薬が胃で溶けてしまい腸に届きにくくなる。かんだりつぶしたりしてはいけない理由と同様に、薬の成分が胃を刺激して、胃の調子を悪くすることもある。

腸溶錠を水でのんだ場合と牛乳でのんだ場合
参考資料:
薬の○○○がわかる本(○○○出版)、○~○ページ、 2016年4月発行

 
主な錠剤の種類と特徴

腸溶錠と、その他の主な錠剤の種類と特徴、利用するときの注意点をまとめた。

まとめ表

参考資料:
○○○社のウェブサイトhttp://………、
薬の○○○がわかる本(○○○出版)○ページ 2016年4月発行

 
 
研究を終えての感想

薬は、水じゃない飲み物でのんでもいいのではないか、のみ込めるなら水なしでのんでもいいのではないか、かんだりしても大丈夫なのではないかと思っていたが、用法・用量を守らないと、きちんとした効果が得られないばかりか副作用を起こしやすくなるということがよく分かった。添付文書には、その薬をのむときの注意点が書いてあるので、使う前によく読むようにしたい。

 

コラム

住友ファーマの「ユニバーサルデザイン製剤」

住友ファーマは、だ液で溶かして服用する口腔内崩壊錠(OD錠)を販売してきました。OD錠は、薬をうまくのみ込めない子どもや、のみ込む力が低下した高齢の患者さんなどにとって、便利な薬です。のみ込みにくいという“バリア”を解消した「バリアフリー製剤」に位置付けられます。

しかし、特に高齢の患者さんの場合、のまなくてはならない薬の種類が多くなりがちです。OD錠であっても、水でのまなくてはならない薬と一緒にのむ場合は水でのむことになります。これではOD錠の利点が生かされないばかりか、OD錠が大きくてのみ込みにくい、と感じられる場合もあります。また、口の中で溶けやすくするために、錠剤がもろくなってしまうという問題点もありました。

住友ファーマでは、子どもや高齢者といった特定の患者さんに限らず、錠剤を服用するあらゆる患者さんにとって服用しやすい「ユニバーサルデザイン製剤」を目指し、「SUITAB®(スータブ)」(注)という独自の新技術を開発し、従来のOD錠を改良しました。

具体的には、薬の小型化が可能となり、溶けやすさは保ちつつ硬さを出すことに成功。また、有効成分の微粒子をコーティングすることで、口の中で溶けたときのざらつきや苦味を軽減しています。

より服用しやすいユニバーサルデザイン製剤の登場で、患者さんの利便性はさらに向上したと言えるでしょう。

(注)スータブについては、製剤技術ー苦味マスキング技術で詳しく紹介しています。

参考:薬剤学 71(1):17-20, 2011

ユニバーサルデザイン製剤:すべての患者さんのために バリアフリー製剤:特定の人のために
 

監修:加藤哲太(日本くすり教育研究所代表)