唾液の力でウイルス感染を予防

2021.01.29

気温が低く乾燥する冬は、ウイルスが好む環境となり、感染力が強まります。新型コロナウイルスはもちろん、インフルエンザの流行にも注意が必要です。とくに受験シーズンという人は、大切な試験の前に体調を崩さないよう、いつも以上に気をつけなければいけませんね。

ウイルスは、目、鼻、そして口の粘膜を介して感染します。予防にはマスクの着用や小まめなうがい・手洗いが有効ですが、もう一つ、口の中で感染予防に一役買っているものがあります。唾液です。

唾液は、健康な成人で1日に1.0~1.5リットル分泌されるといわれています。※1口の中を潤し、舌や頰の内側を滑らかにして、食べ物を飲み込んだり発声したりといった機能をサポートするだけでなく、歯や粘膜の表面を防御する役割も担っています。
また、一部の病原体は、唾液に含まれる免疫物質や抗菌物質の働きによって退治することができます。中でもIgAという免疫物質は、唾液や鼻汁、涙腺など、全身の粘膜に存在し、身体の中に入ろうとするさまざまなウイルスや細菌などの侵入を防ぐことが知られています。

最近、唾液と、そのなかに含まれるIgAの分泌量が、食べ物の種類によっては増加するという興味深い研究が報告されてきています。たとえばある研究では、被験者(ひけんしゃ)*にヨーグルトを12週間毎朝約100gずつ食べてもらったところ、唾液の分泌量とインフルエンザA型の防御に有効なIgAの唾液中濃度がともに増加するという結果が得られました。※2また、食べ物だけでなく、適度な負荷を加える運動でも同様の効果を示すという研究結果もあります。※3

新型コロナウイルスに対する唾液の防御作用については、まだ明らかになっていませんが、口の中を唾液で潤し、乾燥させないようにすることはウイルス感染予防においてとても大切だと考えられます。唾液の分泌量を減らさないよう、水分を充分にとり、よく噛んで食べることを心がけて「唾液力」アップを目指しましょう。

※1 厚生労働省 e-ヘルスネット 健康用語辞典

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-004.html外部リンク

※2 Keiichi Tsukinoki et al. Acta Odontologica Scandinavica 77(7):517-524, 2019

※3 Trochimiak T. et al. Sport 29:255-261, 2012

* 試験や研究の対象となる人。

監修:川田浩志(東海大学医学部教授)