“ながら食べ”は肥満のもと!?
2020.08.31
スマートフォン(スマホ)やパソコンを操作しながら、雑誌を読みながら食事をする“ながら食べ”。「行儀が悪い」としかられた経験がある人もいるかもしれませんが、飲食店などでは大人、子どもにかかわらずやっている人を見かけるし、別に目くじらを立てることではないのでは?という気もしてきそうです。しかし、行儀がどうこうという問題もさることながら、“ながら食べ”をすると必要以上に食べ過ぎてしまったり、満腹感が得られにくかったりするようです。
18歳から28歳までの男女62人に、スマホの画面を見ながら、印刷物を見ながら、どちらも見ないという3パターンで、バイキング形式で好きなものを満足するまで食べてもらう様子をビデオ撮影し、食事内容を比較するという試験が行われました。バイキングに出された料理は3回とも同じです。その結果、スマホの画面や印刷物を見ながら食事をすると、どちらも見ない場合に比べて摂取カロリーが15%も高くなったことがわかりました。理由は明確にはなっていませんが、スマホの画面や印刷物を見ながらの食事では脂質の摂取を増加させる傾向もみられました。「食事中に気が散るものがあると、脳はどれだけ食べたかがわからなくなって満腹感が得られにくくなるのではないか」と研究者らは考察しています。※1
別の試験では、18歳から65歳までの43人がパソコン作業をしながらピザを食べた場合と作業を中断してピザを食べた場合を比較。どちらも同じ味のピザを満足するまで食べてもらいました。すると食べた量には差がなかったものの、パソコン作業をしながら食べた方が、満腹感が得られにくいという結果に。パソコン作業前後のストレス度も調べたところ、作業を中断してピザを食べた場合はストレス度が低くなりましたが、作業をしながら食べた場合はストレス度が高くなっていました。※2
一般的に食事にはストレス解消効果が期待できますが、“ながら食べ”ではせっかくのメリットが得られにくくなってしまうと言えそうです。
“ながら食べ”はやめて、ゆっくりと食事を楽しみましょう。
※1 Renata Fiche da Mata Gonçalves et al. Physiol Behav 204:93-9, 2019
※2 Feng Ding et al. Nutrients 11(7):1545, 2019
監修:川田浩志(東海大学医学部教授)