薬と健康食品の境界線はどこ? 薬ってなんだろう Vol.2

薬と健康食品の境界線はどこ?
薬ってなんだろう Vol.2

「薬になるから食べなさい」って、お母さんやお父さんに言われたこと、ありませんか?食べ物に含まれるさまざまな栄養素は、からだを作ったり、調子を整えたりするほか、病気にならないようにからだの機能を守り、高めるために使われます。
でも、食べ物って薬になるのでしょうか。

「薬になる食べ物」

「薬になるから……」と勧められたのは、健康を守るために、もっと健康になるために、日々とっておきたい栄養素を豊富に含む食べ物ではないでしょうか。例えば、ビタミンCが豊富なピーマンとか、カルシウムが豊富な小魚とか。あるいは、風邪をひいたときに「これを飲んで寝たら治るよ」と、しょうが湯やくず湯を作ってもらったこと、あるかもしれません。

確かに、食べ物に含まれる成分が、薬として使われることは多々あります。ビタミンCやカルシウムの薬もありますし、しょうが湯やくず湯の成分が入っている風邪薬もあります。

実はそもそも、話が逆なのです。
薬は、私たちが日ごろから食べているものをはじめ、自然界に存在する動物や植物、鉱物から「これは効きそう」という成分を見つけ出して作られたのが始まり。だから食べ物に、ある種の薬の成分が含まれることもあるのは当然と言えます。

薬は品質が一定

そんな“薬になる食べ物”と薬はどこが違うのでしょうか。最大の違いは「質」と「量」です。昨日食べたピーマンと今日食べた別のピーマン。同じような味に感じたとしても、含まれる成分の質や量には多かれ少なかれ違いがあります。そして、薬として使われるビタミンCのほかにも、いろいろな成分が含まれています。

一方、薬の場合は、その薬の効果を発揮するためや、品質を一定に保つために必要な成分が、必要な量だけ入っています。決められた方法で保管してあれば、使用期限内は一定の質と量が保たれます。

サプリメントは食べ物?薬?

カプセルや錠剤になっていて、見た目は薬そっくりのサプリメントも薬ではありません。サプリメントを含め、「健康に良いと売られている食品」すべてを健康食品と呼びますが、健康食品はその名の通り、あくまでも食品であり、薬とは違います。

具合が悪いときにサプリメントをのんだことがあるという人もいるでしょう。でもサプリメントを含む健康食品は、健康な人を対象とする食べ物です。だから、野菜や果物などと同じように、誰でも自由に買えますし、薬のように、いつ、どのくらいのまなくてはならない、という決まりもありません。

薬と健康食品の3つの違い

健康食品
製品としての品質が一定 同じ製品でも品質は一定とは限らない
病気の人が対象 健康な人が対象
医師・薬剤師の管理下で利用 選択・利用は消費者の自由

参考:(独)国立健康・栄養研究所:健康食品・サプリメントの適切な使用の考え方

ただし、ある特定の成分を多量に含むようなサプリメントもあります。普段の食事からは、どう頑張ってもとれないような量が、カプセル1つでとれるような場合も。だから、とりすぎないように注意が必要です。サプリメントのパッケージには「1日1~2粒を目安に、水またはぬるま湯とともにお召し上がりください」などと書いてあります。利用するときは、このような表示に注意してください。

「これは効きそう」が薬になるまで

では、「これは効きそう」という成分が薬になるには?
この世の中には、私たちのからだになんらかの影響を及ぼす物質が、たくさん存在します。薬になるものもあれば、毒になるものも。これらをまとめて「薬物」と呼びます。

薬物の作用はまず、理科の実験のように試験管などの道具を使って調べられます。「薬になりそうだけど、よくない作用も強い」「薬の作用もあるけれど、それほど効かない」「薬じゃなくって毒になる」といったものを除外し「これは本当に薬になりそうだ」というものが見つかったら、今度は動物に試してみます。どのくらい使えば効くのか、安全に使えるかなど検討します。この段階で「やっぱりこれは効かない」「効くけど安全性に問題がある」として、ダメになるものもたくさんあります。

そして最終的には、人に効くかどうか、安全に使えるかどうかを調べ、クリアしたものだけが「医薬品」となり、病気やケガの治療や予防に使われます。医薬品は単に「薬」とも呼ぶので、このサイトでも医薬品を薬と表記しています。

「これは効きそう」な成分は、このように何段階もの検討を経て薬になります。しかしそれでも、よくない作用、つまり「副作用」がまったくないような薬はありません。副作用が出るかもしれないというマイナス面を補って余りあるプラスの作用が期待できるものだけが薬になるのです。

なお、薬の始まりは自然界から見つけてきた「これは効きそう」という成分でしたが、現在では、薬のもととなる成分の情報を集め、たくさんの種類を合成し、「化合物ライブラリー」を作った上で効きそうな成分を合成し、効果を調べるのが主流になっています。

コラム

薬+サプリメントで副作用も

サプリメントは食品ですが、栄養補給や健康の維持・増進に役立つという「よい作用」を期待し、何らかの成分を一定量含むように作られています。よい作用があれば、副作用もあり得ます。特に薬をのんでいる間は飲み合わせに注意が必要です。

米国で行われた調査※1によると、病院や診療所に通っている1795人のうち、約4割(710人)がサプリメントを利用していました。そのうちの3人に1人、236人は、サプリメントと薬を一緒にとったり同時期にとったりする「飲み合わせ」の影響で、何らかの副作用を経験していました。

この236人で確認できた副作用は369件ありました。副作用の強さを調べてみると、約3割(107件)は治療が必要なほどの重大な副作用だったのです。薬を使うときは、「サプリメントは食品だから大丈夫」と自己判断せず、医師や薬剤師に「このサプリメントものんでいいですか」と相談しましょう。

※1  Sood A et al.:American Journal of Medicine 121(3):207-11, 2008