ドラッグストアの薬剤師
薬剤師の仕事 Vol.1

 

薬剤師はどこで働いている?

こんにちは!スコッピィだよ。みんな、薬剤師ってどんな仕事をしているのか知ってる?薬局や病院で見かけたことはあるんじゃないかな。薬の使い方を教えてもらったこともあるかもしれないね。薬剤師が働いているところって薬局や病院はもちろんだけど、ほかにもいろいろあるんだ。

今回からの「くすりの仕事図鑑」では、薬剤師の具体的な仕事について掘り下げていくよ。薬剤師は全国に約31万人いて、約6割が女性なんだって。※1どこで働いているのかみてみると、一番多いのが薬局で約6割、病院や診療所が約2割という感じだね(グラフ)。

薬剤師が働いているところの内訳

厚生労働省:平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況から作成

まずはみんなにとって一番身近な存在ではないかなと思われる、ドラッグストアにいる薬剤師の仕事を紹介するね。上の円グラフだと「医薬品関連企業」のところに入る人たちだよ。(注1)

(注1) 薬剤師の届け出に基づく集計のため、薬局併
設のドラッグストアに勤務する人が薬局勤務
として届け出ている場合もあります。

※1 厚生労働省:平成30年(2018年)
医師・歯科
医師・薬剤師統計の概況

薬剤師になるには?

大学の薬学部には6年制課程と4年制課程の2つがありますが、薬剤師になるには6年制課程を卒業し、年に1回ある薬剤師国家試験に合格しなくてはなりません。大学では薬に関するあらゆることを勉強するのはもちろん、薬局や病院で薬剤師の仕事を実際に体験する実習もあります。

ドラッグストアってどんな所?

ドラッグストアとは、医薬品や化粧品を中心とした健康と美容に関する商品、家庭用品、加工食品などを販売するお店を指します。※2 医薬品は、医師の処方せんがなくても買える市販薬(要指導・一般用医薬品)を販売していますが、薬剤師が薬の使い方や副作用のことなどを説明してからでなければ販売できない薬もあります。

ドラッグストアの中には、病院や診療所の医師が出した処方せんをもとに処方薬(医療用医薬品)を取りそろえる「調剤」を行い患者さんに販売する、薬局の機能も持ち合わせたところもあります。その場合、ドラッグストアの一角に「処方せん受付」「調剤受付カウンター」といった看板を掲げています。

ドラッグストアで販売できる薬、
販売できない薬

  薬局あり 薬局なし
薬剤師
必ずいる いる いない
処方薬(医療用医薬品) × ×
市販薬 要指導医薬品 ×
一般用医薬品 第1類 ×
第2類
第3類

○:販売できる ×:販売できない

※2 参考:総務省:日本標準産業分類(平成26年4月1日施行)

ドラッグストアの薬剤師の仕事とは?

ドラッグストアに勤務する薬剤師ならではの仕事といえばまず、不調や病気に悩むお客さんの相談を受け、お客さんが適切な市販薬を選べるように手伝うことが挙げられます。加えて生活習慣についてアドバイスしたり、場合によっては病院や診療所での受診をすすめたりもします。

近年では、日ごろから体調をチェックして具合が悪ければ必要に応じて市販薬などをうまく利用しましょうという「セルフメディケーション」という考え方が浸透してきました。市販薬選びの強い味方となるドラッグストアの薬剤師は、セルフメディケーションに欠かせない存在と言えるでしょう。

また、ドラッグストアでは氷枕やマスク、ガーゼ、ばんそう膏など、病気になったときやケガの手当てに必要な衛生用品も販売しているので、お客さんの要望に合わせ、これらの商品をすすめることもあります。薬の知識はもちろんのこと、人々の健康維持・増進に役立つ、たくさんの商品情報を身に着けておくことが望まれる仕事です。

薬局があるドラッグストアの場合は?

薬局を併設するドラッグストアであれば、病院や診療所を受診した患者さんが持ってくる処方せんをもとに調剤を行うのも重要な仕事の1つです。処方せんに書いてある通りに薬を出せば終わり、ではなく、処方せんに書いてある薬の品目や分量などに疑問があれば医師に問い合わせることもあります。患者さんのお薬手帳も参考にして、薬ののみ合わせやアレルギーの問題はないかなど確かめてから薬を用意します。

薬局では一般的に1,000品目以上もの薬を扱っていますから、間違いがないように細心の注意が必要です。薬の分量をはかる、包み分けるといった作業の機械化も進んでいますが、最終的には薬剤師が自分の目で確認したうえで、患者さんに薬の作用や使い方、副作用のことなどを説明します。たくさんの患者さんが併設の薬局を訪れるドラッグストアの場合、1日の仕事のほとんどから全部が薬局での調剤の仕事になることもあります。

プロフェッショナル インタビュー Vol.1 ドラッグストアの薬剤師編

薬剤師の専門性を
生かしつつ、商売としての
おもしろみもある

横浜を中心に70数店舗を展開する
ドラッグストアの薬剤師
R・H さん(30代・男性)

どうしてドラッグストアの薬剤師になったのですか。

化学が好きで薬学部に入りましたが、研究よりも販売や経営に興味がわいてきて。実家が自営の販売業だった影響もあったかもしれません。病院や薬局の薬剤師は主に病気をかかえる人を相手にする仕事ですが、ドラッグストアにはちょっと体調を崩している人や健康な人も訪れます。薬に関する相談にのるのはもちろんのことですが、地域の人々が健康で楽しい毎日を送るために必要とするものを提供し、ずっと寄り添っていけるのがドラッグストアの薬剤師です。薬学部で学んだことを生かしながらも幅広い対応が求められるこの仕事に魅力を感じました。

ドラッグストアの薬剤師ならではのやりがいは。

うちは薬局も併設しているので、薬局薬剤師としての仕事を行いながら店頭で市販薬の相談にものります。処方薬は1,500~2,000品目、市販薬は1,000品目以上の取り扱いがあり、処方薬と市販薬の両方のことを知っているのが強みになります。処方薬をとりに来られた方から市販薬のことを聞かれることもありますが、たとえば市販薬の塗り薬で、塗ったあとの感触はどうか、白く残りやすいかどうかなど、細かなことまでご案内できるのは、ドラッグストアで働いているからこそではないかと思います。

また、お客さんの相談は多種多様で薬だけでは解決しない悩みもあります。巻き爪(爪の両端の先端部が強く内側に曲がった状態、足の親指に生じやすい)が痛いので痛み止めの薬が欲しいという相談があり、薬とともに巻き爪用の爪切りをご案内して喜ばれたということもありました。このようにお客さんに感謝されたとき、一番やりがいを感じますね。

どういう人がドラッグストアの薬剤師に向いていますか。

お客さんの多くは近隣に住む方やお勤めの方で、週に何回も来られる方もいます。あいさつにはじまり世間話をする中で、今日は何にお困りなのかな?といったことをくみ取るコミュニケーション力が求められます。人と話をするのが好きというのが第一条件ではないでしょうか。また、商品をどのように並べたらお客さんの目に留まりやすいか、商品説明用の立て札(ポップ)の配置をどうするかなど、買ってもらうための工夫も必要になってきます。薬剤師としての専門性と商売のおもしろみの両方にやりがいを感じられる人に向いていると思います。

今後はどのような仕事をしていきたいですか。

入社以来10年間(注2)はずっと店舗勤務で、店長も経験しました。11年目となる本年度から複数の店舗を管理する立場となり、主に本社で勤務しています。会社が決めた店舗の運営方針をお店に伝えたり、現場のスタッフの声を吸い上げたり、店舗の人手が足りないときは応援に出ることもあり、週に1日は終日店舗で勤務しています。以前は自分の勤務する店舗のことだけを考えていればよかったのですが、複数の店舗の状況、そして会社全体のことまで考えるようになり、大変ですがおもしろみも増えました。ゆくゆくは経営のことにもかかわっていくのかもしれません。今はまだ目の前のことをこなすのに手いっぱいですが(笑)。

(注2) R・H さんが薬剤師の資格を取得したころは、4年制課程の大学薬学部の卒業または卒業見込みで薬剤師国家試験が受けられた。

1日の仕事スケジュールR・Hさんの場合(店舗勤務の日)
9:00
出勤、薬の在庫チェックや発注、商品の搬入や陳列、店舗内の清掃
10:00
開店、市販薬を買いにきた人の相談に対応
処方せんを持ってきた人への対応
13:00
~15:00
ほかのスタッフと交代で昼休みをとる
昼休み後
午前中と同様の作業
18:00
営業時間が長い店舗では、交替するスタッフへの引き継ぎを行い退勤

監修:亀井美和子 (帝京平成大学薬学部教授)