薬ののみ忘れの影響を調べる
薬の自由研究ガイド Vol.5
今回は、だれでも一度は経験したことがある「薬ののみ忘れ」がテーマです。なぜ薬はのむ回数が決まっているのか、のみ忘れるとどのような影響があるのかを考えてみましょう。
薬を薬局でもらうときに渡される、または薬の箱の中に入っている説明書には、たとえば1日3回、1回2錠、食後といったように、それぞれ用法・用量が書かれてあります。でも、忙しかったり、うっかりしたりしてのみ忘れてしまうことがありますよね。1日3回のむ薬をのみ忘れたとき、あわててその場でのんでしまったり、次にのむときに忘れた分も合わせてのんだりしていませんか。
決まった回数や時間を守らないとどんな影響があるのか、のみ忘れたときはどうしたらいいのか、そんな疑問について、考えてみましょう。
なぜ、決められた時間に薬をのまなければならないのでしょうか。それは、薬の効き目が「血液の中の薬の量」によって決まるからです。薬をのんだ後に血液の中の薬の量がどのようになるのかを調べて、薬をのみ忘れてはいけない理由を考えてみてはどうでしょうか。
テーマ例
「薬ののみ忘れと薬の効き目について調べる」
薬は体の中に入ると、血液によって全身に運ばれます。そのとき血液中の薬の量を「血中濃度」と呼び、これがちょうどよい範囲のときに薬は一番効き目をあらわします。薬を少なくのんで血中濃度が低いと、薬の効き目が弱くて病気の症状がよくなりません。
逆に多くのんで血中濃度が高くなりすぎると、効き目が強すぎたり、薬によっては望ましくない症状(副作用)があらわれやすかったりします。
つまり、適切な血中濃度になるように、薬はのむ量が決められているのです。正しくのんだ場合とのみ忘れた場合の影響を調べて、考えてみましょう。
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ウェブサイトなどで調べる
- 薬の血中濃度と薬の効き目について、製薬会社や病院のウェブサイトを調べるとグラフや説明が出ています。
参考:薬が効くとは。体に広がる薬の成分 からだを旅する薬のこと Vol.2
また、のみ忘れ防止グッズなどをウェブサイトやお店で探して、のみ忘れない方法を試すのもいいですね。 -
「 血中濃度 」をグラフで体験
- ウェブサイトで調べたことや以下の参考資料をもとに、薬が体の中に入ったとき、血中濃度がどのように変化していくのか、自分で線グラフを書いてみましょう。
1日3回、食後正しく薬をのんだとき
(グラフ1)
※ 今回の自由研究のために、薬の血液中の量(血中濃度)の変化の例をつくりました。これをもとに考えてみましょう。
本来は薬の血中濃度には単位(例えば(ng/mL))がありますが、今回は比率を表しているので数字のみを記載しています。
1日3回、食後(朝・昼・夕)にのむかぜ薬で、ここでは、わかりやすいように薬をのむ時間を朝6時、昼13時、夜20時の7時間間隔とします。それぞれのんだ後の血中濃度に注目してください。
昼食後13時の服用を忘れてしまった!
(グラフ2)
ポイントは、昼食後13時から夕食後20時にのむまでの血中濃度の変化です。
のみ忘れとともに注意が必要なもののひとつに、1回忘れたからといって「次に2回分の量の薬をまとめてのんでしまう」ことが挙げられます。
では、どのような状態になるのか、グラフ3の表の血中濃度の参考例をもとに、自分で線グラフを書いてみましょう。
グラフで体験! 自分で書いてみよう!
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[ グラフの書き方のヒント! ]
- 昼食後ののみ忘れで血中濃度は0になったまま夕食後まで続くよ
- 血中濃度の表にある血中濃度の合計を、1時間ごとの線グラフにしよう
- 夕食後20時に2回分を服用すると、22時に血中濃度は薬がちょうどよく効く
範囲を超えてしまうよ
お昼に忘れて夜2回分のんでしまった!
(グラフ3)
線グラフの線がつながっていない部分に、表を参考に線を引いてみよう
血中濃度の変化から、1日3回、決められた正しい間隔で薬をのまなければいけない理由がわかってきましたか?家族や友達に血中濃度の変化を見せることで、なぜのみ忘れてはいけないかを考えてもらえるきっかけにしてみましょう。さらに、のみ忘れに役立つグッズや方法を調べてまとめに入れるのもいいですね。
研究テーマ
薬をのむタイミングと体の中での影響について。
このテーマを選んだ理由
かぜ薬をのんだとき、うっかりお昼にのみ忘れることが多かった。のみ忘れたらどうなるんだろう、と気になったので。
研究したこと
薬をのみ忘れると、体の中でどんなことが起きているのか。
研究結果
1日3回のむ薬をきちんとのんだときと、お昼にのみ忘れてしまったときの血中濃度を見たグラフを調べた。
参考資料:○○ウェブサイト「薬の正しい飲み方について」https://……
朝・昼・夜に正しい間隔で薬をのむと、血中濃度が落ちるころに次の薬をのむので、1日中「薬がちょうどよく効く範囲」に保つことができる。
お昼に忘れると、夕食後に服用するまで体の中に薬は残っていないため、薬が効いていない状態になることがわかる。
薬ののみ忘れを防ぐ工夫
決められたタイミングで薬をのもうと
思っていても、どうしても忘れがちになる。
便利な予防グッズや方法を調べてみた。
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- 薬カレンダー
- ポケット付きの壁かけのカレンダーに薬を
入れて順番にのんでいく - スマホアプリ
- スマホにダウンロードしておくと、のむ
タイミングをアラームで知らせてくれる - ピルケース
- 1回分の薬を小分けにして
しまっておける、持ち運びできるケース
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- 食事のときにテーブルに出しておく
- 薬のシートにのむ時間を書く
- 見えるところに置いておく
研究を終えての感想
自分も家族も薬をのみ忘れることが多く、気づいたときにあわててのんだり、忘れた分を一緒にのんだり、途中で止めてしまうこともあったが、ただのんでいるのでは意味がない。
薬がいちばん効き目をあらわすのは血中濃度が関係していることがよく理解できた。自分や家族の健康を守るためにも、これからは薬を薬局でもらうときに渡されたり、薬の箱の中に入っていたりする説明書通りに、のむタイミングや回数、量を守ってのむようにしたい。
いかがでしたか?
血中濃度の変化をグラフで見ることで、薬がどのように効くかが理解しやすくなりましたね。
「グラフで体験」で見てきたように、時間の経過とともに血液の中の薬の量は減っていくため、1日3回、決められた正しい間隔で薬をのみ、血液の中の薬の量をつねに「薬がちょうどよく効く範囲」に保っておくことが必要です。
のみ忘れたり、のみ忘れた分を次の分とまとめて2回分のんでしまうと、効き目が得られなかったり、多くのみすぎることで薬によっては効き目が強く出たり、副作用のリスクも高くなったりします。
このように薬を正しくのむ意味がわかれば、のみ忘れも防ぐことができますね。
監修:加藤哲太(日本くすり教育研究所代表)