市販薬の「添付文書」を読み解く
薬の自由研究ガイド Vol.6
市販薬(一般用医薬品など)の箱の中には、薬と⼀緒に「添付⽂書」と呼ばれる使⽤説明書が⼊っています。添付⽂書には、薬を正しく使うための⼤切な情報が、わかりやすく、簡潔に記載されています。今回は、この添付⽂書の役割について調べてみましょう。
薬を正しく使うには、まず、使⽤⽅法を知らなくてはなりません。添付⽂書は、薬を正しく使うために必要な⼤切な情報が簡潔に記載されている、いわば薬のトリセツ(取扱説明書)に当たるものです。薬を使う前に必ず⽬を通すのはもちろんのこと、薬を使い切るまで、捨てずに保管しておかなくてはなりません。なぜ、添付⽂書は重要なのでしょうか。⾃宅にある常備薬の添付⽂書を探して、調べてみましょう。
なぜ、薬には添付文書が必要なのでしょうか。薬の効果を最大限に得つつ、副作用または事故を防止するためには、用法・用量や使用上の注意などを使用前に必ず確認しなければなりません。たとえば、持病がある人や、他の薬を服用している人は薬の作用が変わることがあり、妊娠している人や授乳中の人などは、服薬した本人だけでなく胎児・乳児へ影響を及ぼすことがあるので、安全面で特に注意が必要です。だれもが安心して正しく薬を使うためには、どんな情報が必要でしょうか。添付文書に書かれている内容とその役割について、調べてみましょう。
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実物を観察する
- 自宅にある常備薬の箱の中から、添付文書を取り出して調べてみましょう。
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ウェブサイトなどで調べる
- 自宅に常備薬がなかったり、添付文書が見つからなかったりする場合は、インターネットで調べることができます。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトでは、医薬品(一般用医薬品、要指導医薬品、医療用医薬品)の添付文書を検索して閲覧することができます。PMDAのホームページで、薬局で購入できる市販薬(一般用医薬品と要指導医薬品)について調べてみましょう。「販売名」に、テレビコマーシャルなどで耳にしたことのある医薬品の名前を入れて検索してみてください。 - 参考:独⽴⾏政法⼈医薬品医療機器総合機構 ⼀般⽤医薬品・要指導医薬品情報検索
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcSearch/
研究テーマ
薬の添付文書には、どんな目的で何が書かれているか
このテーマを選んだ理由
かぜ薬をのもうと思い、薬の外箱を開けたら、薬の取扱説明書(添付文書)が入っていることに気がついた。今までじっくり読んだことがなかったけど、けっこう重要そうなことが書いてあるみたい、と気になったので。
研究したこと
添付文書に書かれている内容とその役割
研究の流れ
(1)添付文書の項目と役割を書き出す
添付⽂書の⼀番上には、改訂年⽉が書かれている。これは「使⽤上の注意」など重要な注意事項など記載内容が改訂された時点を⽰しており、同じ薬を継続して使⽤している⼈も、必ず確認しなくてはならない。
使⽤上の注意は、症状の悪化や副作⽤・事故等を防ぐために、注意喚起を⽬的として書かれている項⽬だ。特に「してはいけないこと」には、この薬を使⽤してはいけない⼈や部位、併⽤(⼀緒に使⽤)できない薬の種類などが書かれており、必ず守らなくてはならない。
「相談すること」には、医師や薬剤師、登録販売者に相談が必要な事項が書かれている。たとえば、妊娠している⼈や⾼齢者、アレルギー体質の⼈などは、薬を絶対に使⽤してはいけないということではなく、症状や状況などによっては使⽤できるので、相談する必要がある。
(2)複数の添付⽂書を⽐べる
どの添付⽂書にも、同じ項⽬が同じ順番で書かれている。
なぜ同じ順番なのか調べたところ、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)第52条において、各医薬品の基準によって添付⽂書に記載しなくてはいけない項⽬が定められていることがわかった。添付⽂書は重要な情報がきちんと読み⼿に伝わる内容でなければ、使⽤する⼈をリスクから守ることができないからだ。
(3)同じ症状に対する複数の薬の添付⽂書を⽐べる
頭痛薬A・B・Cの添付⽂書に記載されている、15歳以上が服⽤する場合の「⽤法・⽤量」と「成分」を⽐べてみた。
(4)同じ薬の改訂前後の添付⽂書を⽐べる
同じ薬でも、使⽤期間中に添付⽂書の記載内容が改訂されることがある。独⽴⾏政法⼈医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトで改訂する前と後の添付⽂書を検索し、どこが変更されているか調べてみた。
参考:改訂前後の添付文書の違いを見つけるには
PMDAのホームページでは、一部の市販薬で過去の添付文書も閲覧できます。それぞれの版では改訂箇所に*(アスタリスク)や下線が付いていますので、最新版の添付文書しか掲載されていない場合も最新の改訂箇所はわかります。
研究結果
添付文書は法律で義務付けられた文書であり、薬を正しく使う上で大切な情報が、統一された順番でわかりやすく書かれている。同じ症状に対するものでも、薬によって使用方法や成分にちがいがあるため、使用する前には必ず確認しなければならない。
また、一度使用したことがある医薬品であっても、添付文書の内容が改訂されていることがあるので、購入するたびに必ず読まなくてはいけないこともわかった。
研究を終えての感想
添付文書を確認し、記載されていることを守って薬を使用しないと、十分な効能・効果が得られないだけでなく、副作用にもつながりかねないため、使用する前には添付文書を必ず読まなくてはいけないことを実感した。
医師による処方せんが必要な医療用医薬品の添付文書には、もっと詳しい内容が書かれているらしい。添付文書に興味が出てきたので、ウェブサイトなどでさらに調べてみたい。
添付文書を、実際にきちんと読んでいる人はどのぐらいいるのでしょうか。
朝日新聞社が行ったアンケート(2011年実施、集計対象者1000人)で一般用医薬品の添付文書を読むかどうかたずねたところ、「いつも読む」人が41.6%、「ときどき読む」人が38.1%で、「あまり読まない」人は20.2%もいました。
「いつも読む」と答えた人も、すみずみまできちんと目を通している人は、それほど多くないのではないでしょうか。家族や友達に、添付文書を読んだことがあるか聞いてみましょう。もし「あまり読まない」という人がいたら、とても大事な情報が書かれていることをぜひ教えてあげてください。
出典:OTC医薬品- OTC医薬品の進歩で可能性が広がるこれからのセルフメディケーション-集計結果報告書(朝日新聞東京本社広告局)
https://www.jsmi.jp/reserch/asahi/1104.pdf
※1 出典内の棒グラフをもとに円グラフを作成
薬の外箱にも、その薬の効能、用法・用量、注意などの重要な情報が書かれているため、購入するときは必ず確認しなければなりません。ただし、添付文書ほどくわしい情報は書かれていないことが多いため、外箱の情報だけでは自分に適した薬かどうか判断がつかないことがあります。薬局には薬剤師が常駐しているので、薬剤師に相談しましょう。
また、外箱には副作用被害救済制度のお問い合わせ先が書かれています。薬を使用して副作用が起こった場合には、すぐに医師や薬剤師に相談してください。薬を適正に使用したにもかかわらず副作用が発生し、健康被害を受けた人が副作用救済給付の対象となった際、医療費の給付などが行われます。
いかがでしたか?
薬局で購入できる市販薬であっても、誰もが使っていい薬であるとは限りません。自分の体に入れるものに責任を持つのはもちろんのこと、家庭の常備薬は家族でシェアすることも多いので、添付文書の内容をしっかり確認することは、家族の健康を守ることにもつながります。薬を購入するごとに、添付文書にきちんと目を通す習慣をつけたいですね。
監修:亀井美和子(帝京平成⼤学薬学部教授)