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vol.13 海と陸はつながっている【目標14】【目標15】

海の生き物が減っている!?

Bさんが全国SDGsスピーチコンテストに地域の代表として出場することになったみたい。部室でお祝いをしているよ。

Bさん、おめでとう!!

応援してくれてありがとう!

すごいな~。地域大会の発表直前まで練習していたもんね。今日の夜はお祝い?

うん、代表に選ばれたらお寿司を食べにいく約束してるんだ。

いいね! お寿司といえば、近い将来、お寿司が食べられなくなるかもしれないって話を聞いたことがあるよ。

え⁉ 私の大好物なのに……。食べられなくなるってどういうこと?

今、海ではいろいろな問題が起きていて、海の生き物たちがピンチにさらされているんだって。

温暖化の影響で海水温が上がっているみたいだし、環境が変わって生きられなくなる生物がたくさんいるんだろうな。

大気中の二酸化炭素が増えたことで、それを吸収している海水が酸性に傾いてしまう「海洋酸性化」も起きているんだ。海洋酸性化が進むと、サンゴや甲殻類、貝類の成長や繁殖が妨げられたり、プランクトンの数が減ったりして、多くの生き物に影響が及んでしまうんだよ。

僕の大好きなカニも減っているのかもしれないな。自然環境のせいだけじゃなくて、人間が獲りすぎているのも問題なのかな?

うん。世界の海では、35.4%もの水産資源が獲りすぎによって減り続けている状態なんだ※1。日本ではすでに魚が獲れなくなっていて、40年前と比較して海産物の水揚げが約3分の1にまで減っているんだよ※2

獲りすぎている魚は、このままではいつかいなくなっちゃうんだよね?

その通り。だからクロマグロなどは国際的に漁獲量を規制して、数を増やす取組が進められているんだよ。日本でも、サンマやマアジ、マイワシ、スルメイカなどを対象に漁獲量を管理して、これ以上減らないようにしているんだ。

魚を食べる人が増えているのかな?

そうだね。世界的には、過去50年で魚介類の消費量は約2倍に増えているんだ※3。冷蔵や冷凍による輸送技術が発達して、内陸地域の人も魚を食べられるようになったのは要因の一つかもしれない。その他に、経済発展が進む新興国や途上国で、芋類のような伝統的な主食から、たんぱく質を多く含む肉や魚などに食生活の移行が進んでいることも要因だね。

健康志向が高まって、ヘルシーというイメージで食べる人も増えているみたい。

漁業の技術が進歩して一度に大量に獲れるようになったし、お金儲けのために規制を無視して違法な漁をしている人たちもいるんだ。

海のピンチと言えば、海洋プラスチックも問題になっているよね。ウミガメや海鳥の身体に釣り糸やビニール袋が絡まって、傷ついたり溺れたりしている写真を見たことがあるよ。

世界全体では、毎年少なくとも約800万トンのプラスチックゴミが海に流れ出ているというデータがあるんだ。2050年には、海洋中のプラスチックゴミの重さがすべての魚の総重量を上回ると試算されている※4

えーっ!ゴミが魚より多くなっちゃうの⁉

プラスチックゴミは自然に消えたりしないのかな?

海に流出したプラスチックは波や紫外線で砕かれて、マイクロプラスチックと言われる5mm以下のかけらになるんだ。でも自然分解されることはなくて、数十年~数百年も残り続けるんだよ。

マイクロプラスチックを餌と間違って食べてしまう生き物も多いっていうよね。その魚を僕たちが食べてしまうことも十分にありうる。身体に影響はないのかな?

すでに人間の母乳や血液からもマイクロプラスチックが検出されている。身体への影響はまだはっきりとわかっていないけど、マイクロプラスチックには添加物として有害物質が含まれているだけでなく、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、ダイオキシン、DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)など、海中の有害化学物質を吸着しやすいという性質もあるんだよ。

船の事故で流れ出た重油や、生活排水、工業廃水、農業廃水とかも海を汚染しているよね。どれも人間の暮らしが与えている影響だね。

そうだね。結果的に絶滅の危機に追いやられている生き物もたくさんいるんだ。一つの生き物が絶滅すると、それをエサにしていた他の生き物も生きていけなくなる。生物多様性が失われてしまうね。

人間だって困るよね。漁師さんたちは魚が獲れなくなったら生活できなくなるし、私たちもおいしい魚が食べられなくなるのは嫌だな。

考えてみよう

  • 1この1週間でどんなプラスチックゴミを
    捨てたかな?
  • 2①は全部でどのくらいの量になるかな?
    1年ではどれくらいになるかな?
  • 2プラスチックゴミを減らすために、
    どんな工夫ができるかな?

※1 Food and Agriculture Organization of the United Nations “The State of World Fisheries and Aquaculture 2022”
https://www.fao.org/3/cc0461en/cc0461en.pdf
※2 水産庁「漁業・養殖業の国内生産の動向」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r04_h/trend/1/t1_2_1.html
※3 水産庁「令和4年度 水産白書」第4章(2)世界の水産物消費
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r04_h/trend/1/t1_4_2.html
※4 World Economic Forum "The New Plastics Economy Rethinking the future of plastics"
https://www3.weforum.org/docs/WEF_The_New_Plastics_Economy.pdf

  • 14 海の豊かさを守ろう
  • SDGsの目標 14

    持続可能な開発のために、
    海洋や海洋資源を保全し
    持続可能な形で利用する

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ターゲット

14.1
2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含め、特に陸上活動からの汚染による、あらゆる種類の海洋汚染を防ぎ大幅に減らす。
14.2
2020年までに、重大な悪影響を回避するため、レジリエンスを高めることなどによって海洋・沿岸の生態系を持続的な形で管理・保護する。また、健全で豊かな海洋を実現するため、生態系の回復に向けた取り組みを行う。
14.3
あらゆるレベルでの科学的協力を強化するなどして、海洋酸性化の影響を最小限に抑え、その影響に対処する。
14.4
2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業、破壊的な漁業活動を終わらせ、科学的根拠にもとづいた管理計画を実施する。これにより、水産資源を、実現可能な最短期間で、少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量※1のレベルまで回復させる。
14.5
2020年までに、国内法や国際法に従い、最大限入手可能な科学情報にもとづいて、沿岸域・海域の少なくとも10%を保全する。
14.6
2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる特定の漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を完全になくし、同様の新たな補助金を導入しない。その際、開発途上国や後発開発途上国に対する適切で効果的な「特別かつ異なる待遇(S&D)」が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可欠な要素であるべきだと認識する。
14.7
2030年までに、漁業や水産養殖、観光業の持続可能な管理などを通じて、海洋資源の持続的な利用による小島嶼開発途上国や後発開発途上国の経済的便益を増やす。
14.a
海洋の健全性を改善し、海の生物多様性が、開発途上国、特に小島嶼開発途上国や後発開発途上国の開発にもたらす貢献を高めるために、「海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドライン」を考慮しつつ、科学的知識を高め、研究能力を向上させ、海洋技術を移転する。
14.b
小規模で伝統的漁法の漁業者が、海洋資源を利用し市場に参入できるようにする。
14.c
「我々の求める未来」※212の第158パラグラフで想起されるように、海洋や海洋資源の保全と持続可能な利用のための法的枠組みを規定する「海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)」に反映されている国際法を施行することにより、海洋や海洋資源の保全と持続可能な利用を強化する。
https://xsdg.jp/pdf/SDGs169TARGETS_200717.pdf をもとに作成 ※1 最大持続生産量:生物資源を減らすことなく得られる最大限の収獲量のこと。おもにクジラを含む水産資源を対象に発展してきた資源管理概念。最大維持可能漁獲量とも言う。 ※2 「我々の求める未来」:2012年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)で採択された成果文書。「The Future We Want」。

30年で日本の4.7倍の面積の森林が消滅!

生物多様性が失われつつあるのは、海の中だけじゃないよね。

今は、かつてないスピードで地球上の生き物が絶滅しつつある。確認されている生物の約28%に当たる44000種以上が絶滅の危機に瀕しているんだよ※1

え、そんなに……⁉

日本国内でも3700種以上が絶滅危惧種に指定されているんだ※2

やっぱり温暖化の影響かな?

バッグとかアクセサリーの材料のために密猟が行われているのも問題だよね。

そうだね、どちらも絶滅の原因の一つだと思う。みんなは「外来生物」「外来種」の存在は知っているかな?

他の国や地域から持ち込まれた生物のことでしょ?飼えなくなったペットを逃がしたらすみついちゃったり、輸入した植物に紛れて入ってきちゃったりするんだよね。

そうだね。繁殖力の強い外来生物や外来種は、もともといた生物(在来種)や、その餌を食べつくして、絶滅に追いやってしまうこともある。一度定着すると増え続ける一方だから、もとの生態系に戻すのが大変なんだよ。

森林破壊もいろんな生き物の暮らしを脅かしているよね。

うん。地球上では、森林に陸上生物の8割以上が住んでいるけど※3、この30年で、日本の約4.7倍にも相当する面積の森林が失われているんだよ※4

世界では、大規模な農園を作るために森林を伐採してるんでしょ?

パーム油の原料であるアブラヤシや、大豆、カカオ豆のプランテーションを作ったり、放牧地を広げたりするために森林が伐採されることが多いね。あと、電気やガスが通っていない地域では、今も薪を燃やして燃料や灯りにしているよね。世界的に人口が増えているから、伐採する面積も広がっているんだ。

調べてみよう!アブラヤシを原料とするパーム油の生産は、
熱帯林減少の最大の要因の一つと言われています。

  • 1パーム油は、商品の原材料にはどんな別名で表示されるかな?
  • 1パーム油は身の回りのどんなものに使われているかな?
  • 1パーム油の生産によってどんな問題が起きているのかな?

(参考:『パーム油ってな~に? ―企業の原材料調達―』廃棄物資源循環学会編
「循環とくらし」(6):2015.11 pp.34-37 )

最近は、温暖化の影響で大規模な自然火災が増えているよね。2019年に起きたオーストラリアの森林火災は半年間燃え続けたって……。

木材を生産するための違法な伐採も問題になっているんだよ。世界全体で生産されている木材の15~30%が違法伐採によるものだというデータがある※5。日本で安く流通している木材の中にも、違法伐採によって生産されたものが潜んでいる可能性があるんだよ。

森がなくなると土地が渇いて砂漠化が進んでしまうよね。飢餓や貧困にもつながるし……。

二酸化炭素を吸収する森が減ったら、温暖化も加速するんじゃないかな。

実は途上国を中心に16億人が森林資源で暮らしを立てているんだ※3。森が減ったら彼らの生活も立ち行かなくなってしまうね。

日本では、森林を放置することで問題が起きているよね。

人工林を放置すると木が密集して下草や低木が育たなくなる。すると雨水をとどめることができず直接川に流れてしまって、下流域で洪水を引き起こしてしまうんだね。

台風や大雨による大規模な土砂崩れも毎年のように起きているよね。

※1 THE IUCN RED LIST
https://www.iucnredlist.org/
※2 環境省「環境省レッドリスト2020の公表について」
https://www.env.go.jp/press/107905.html
※3 国連広報センター「陸の豊かさを守ることはなぜ大切か」
https://www.unic.or.jp/files/b5ca64ea888d51073c406b3ebe4e8512.pdf
※4  FAO『Global Forest Resources Assessment 2020』
https://www.fao.org/3/CA8753EN/CA8753EN.pdf
※5 外務省「違法伐採問題」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/bunya/bassai.html

  • 15 陸の豊かさも守ろう
  • SDGsの目標 15

    陸の生態系を保護・回復するとともに
    持続可能な利用を推進し、持続可能な森林管理を行い、
    砂漠化を食い止め、土地劣化を阻止・回復し、
    生物多様性の損失を止める

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ターゲット

15.1
2020年までに、国際的合意にもとづく義務により、陸域・内陸淡水生態系とそのサービス※1、特に森林、湿地、山地、乾燥地の保全と回復、持続可能な利用を確実なものにする。
15.2
2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を止め、劣化した森林を回復させ、世界全体で新規植林と再植林を大幅に増やす。
15.3
2030年までに、砂漠化を食い止め、砂漠化や干ばつ、洪水の影響を受けた土地を含む劣化した土地と土壌を回復させ、土地劣化を引き起こさない世界の実現に尽力する。
15.4
2030年までに、持続可能な開発に不可欠な恩恵をもたらす能力を高めるため、生物多様性を含む山岳生態系の保全を確実に行う。
15.5
自然生息地の劣化を抑え、生物多様性の損失を止め、2020年までに絶滅危惧種を保護して絶滅を防ぐため、緊急かつ有効な対策を取る。
15.6
国際合意にもとづき、遺伝資源の利用から生じる利益の公正・公平な配分を促進し、遺伝資源を取得する適切な機会を得られるようにする。
15.7
保護の対象となっている動植物種の密猟や違法取引をなくすための緊急対策を実施し、違法な野生生物製品の需要と供給の両方に対処する。
15.8
2020年までに、外来種の侵入を防ぐとともに、これらの外来種が陸や海の生態系に及ぼす影響を大幅に減らすための対策を導入し、優占種※2を制御または一掃する。
15.9
2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地域の計画策定、開発プロセス、貧困削減のための戦略や会計に組み込む。
15.a
生物多様性および生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源から資金を調達し大幅に増やす。
15.b
持続可能な森林管理に資金を提供するために、あらゆる供給源からあらゆるレベルで相当量の資金を調達し、保全や再植林を含む森林管理を推進するのに十分なインセンティブを開発途上国に与える。
15.c
地域コミュニティが持続的な生計機会を追求する能力を高めることなどにより、保護種の密猟や違法な取引を食い止める取り組みへの世界規模の支援を強化する。
https://xsdg.jp/pdf/SDGs169TARGETS_200717.pdf をもとに作成
※1 生態系サービス:生物・生態系に由来し、人間にとって利益となる機能のこと。
※2 優占種:生物群集で、量が特に多くて影響力が大きく、その群集の特徴を決定づけ代表する種。

海が森を助け、森が海を育んでいる

本来、森に降った雨は葉や土に蓄えられて、長い時間をかけて川にしみ出すんだよ。その過程で蓄えられた栄養分は海に流れて、植物プランクトンや海藻を育てている。森林を放置すると、栄養分のない濁った水が川に流れ込んでしまうから、海の生き物にも影響が及んでしまうんだ。

森からの栄養分で育った植物プランクトンを動物プランクトンが食べて、動物プランクトンを魚が食べて、魚を陸の生き物や人間が食べる。海と陸はつながっているんだね。

そうだね。実は海藻や海草、湿地や干潟も森林と同じように温室効果ガスを吸収する役割を担っていて、そうやって蓄えられた炭素のことを「ブルーカーボン」と言うんだよ。

海と陸、どちらも豊かじゃないと、この地球環境は保てないんだね。

僕たちも、水筒やエコバックを持ち歩いてプラスチックゴミを出さないようにするとか、できることはやらないと。

出てしまったゴミはリサイクルに出すことも大事だね。あと、ビーチクリーンやゴミ拾い活動に参加するのもいいかも!

いいね。他には、海や陸の豊かさを守るための認証マークもあるんだよ。持続可能な漁業で獲られた魚であることを示す「サステナブル・シーフード」のマークがMSC(Marine Stewardship Council)の「海のエコラベル」。養殖の水産物には、環境と社会への影響に配慮した養殖場で生産されたことを示すASC(Aquaculture Stewardship Council)ラベルがあるよ。国際的に管理された森林の資源を使っていることを示すFSC®(Forest Stewardship Council®)のマークも見たことがあるんじゃないかな?

FSCのマークは紙袋、牛乳パックや年賀ハガキについているのを見たよ。

MSCやASCのことはお母さんに教えてあげよう。魚を選ぶ時の判断材料にしてくれるといいな。

あとは、電気の無駄使いとか、温暖化につながることをできるだけしないようにしよう。

そうだね。よーし、海と陸の恵みに感謝して、お寿司をいっぱい食べてこよう!

発見! SDGsチャレンジャー(目標14) 漁獲量の減少を食い止めるアマモ場の再生活動 熊本県立芦北高等学校 林業科 高峰榮杜さん、川畑秀飛さん、藤澤莉杏さん(共に3年生)

  • 二酸化炭素の吸収源として注目されている「ブルーカーボン」。中でも藻場は「海のゆりかご」と言われるほど、多くの生き物が暮らす場所でもあります。しかし、海水温の上昇などにより、近年急速に失われています。

    熊本県立芦北高等学校の林業科が、アマモ(海草の一種)の生息する藻場の再生に取り組み始めたのは2003年のこと。林業の衰退などにより川から流入する土砂が堆積し、かつて町の沿岸に広がっていたアマモ場が縮小。漁獲量の減少も問題となっていました。漁協から相談を受けたことをきっかけに、課題研究としてアマモの再生活動を続けています。

    5~6月には林業の技術を応用した独自の方法でアマモの種子を散布、12月~3月には研究室で育てた苗を移植。それ以外の時期はアマモの生育の研究をしています。「今年は、苗の成長を早めるための栽培方法を研究しています」と高峰さん。苗の移植は海水温が15℃以下で、大潮の干潮時に当たる夜中の2~3時に実施します。学校に泊まり込み、真っ暗な冷たい海に入っての作業は、泥に足が取られて大変なのだとか。

  • 取組を始めて、今年で22年。当初は0.25haに減っていたアマモ場は、令和2年までに7haまで拡大しました。同年に発生した豪雨災害によって大量の土砂が流れ込み、5haが消失したものの、その後も諦めずにアマモの再生に取り組んでいます。先輩たちの姿に憧れて活動に参加したという藤澤さんは、「取材を受けたり講演会の依頼が来たり、すごいことをやっているんだと改めて感じました」と話します。「この活動がもっと広がるように、たすきを繋いでいきたい」と川畑さん。“地域とともに森を育て、川と海を育む”をスローガンに、芦北町の自然を守っていきます。

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14 SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」

発見! SDGsチャレンジャー(目標15) もとの生態系を取り戻したい お堀の外来生物駆除活動 兵庫県立篠山東雲高等学校 自然科学部 坂本光希さん、中沢啓悟さん(共に3年生)

  • 皆さんの身近にある水辺には、どんな生き物がいるか知っていますか?

    兵庫県立篠山東雲高等学校の自然科学部が、近くにある篠山城跡のお堀で外来生物の駆除活動を始めたのは2019年のこと。近隣住民から市役所に「ウシガエルの鳴き声がうるさくて眠れない」という苦情が出たことがきっかけでした。市役所から駆除の依頼を受けた自然科学部のメンバーは、定置網や「もんどり」と呼ばれる罠を設置し、ウシガエルと共に、アメリカザリガニや、アメリカ原産の淡水魚ブルーギルの駆除活動を行っています。

    4~9月の月に1回、前夜に仕掛けた網や罠を回収し、個体数を調査しています。「お堀の泥は深く、足を取られて身体が沈んでいくような感覚が最初は怖かったです」と中沢さん。臭いもきつく、大変な作業にも関わらず、成果が見えづらい時期もあったそうです。しかし、地道に活動を続けた結果、個体数は確実に減り、モツゴという在来種の淡水魚も増えてきていると言います。

  • そもそもなぜ外来生物を駆除しなくてはいけないのでしょうか?「ウシガエルやアメリカザリガニは繁殖力が強いうえ、雑食なので、もともといた生物を食べ尽くしてしまいます。ブルーギルも他の魚の卵を食べてしまい、放置していると生物多様性が失われてしまいます」と坂本さんは説明します。小学校や子ども会からの依頼で開催する川での「生き物観察会」では、外来生物の問題を知ってもらおうと、地域の子どもたちへの啓発活動も行っています。外来生物のいないお堀を取り戻すべく、これからも活動を続けていきます。

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15 SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」

SDGs目標14  「海の豊かさを守ろう」 に関する住友ファーマの取組 研究所での排水管理~海洋汚染を防ぐために〜

  • 排水処理場

    住友ファーマは、各事業所にて海洋汚染を防止するために排水管理を行っています。

    例えば、総合研究所では、下水道法や水質汚濁防止法という法律に則って届出を行い、発生した排水を敷地内の排水処理場にまとめ、pHのモニタリングや排水の定期的な水質検査を行うことで各分析項目について規制値以下の排水であることを確認しています。

    有害物質や遺伝子組み換え物質が含まれる廃液は、すべて回収し、産業廃棄物として処理して、周辺環境へ影響を与えないように厳格に管理しています。

    水質監視槽および排水ポンプ

  • 高薬理活性物質を扱う作業室の洗浄や製造する機器の洗浄に用いた水は、建物地下の専用貯水槽にすべて回収し、適切に処理をしています。

    種々の有害物質を用いた合成実験を行う棟には、その棟専用の水質監視槽を設置し、日ごろからpHを監視するなど、特に管理を厳重に行っています。また、万が一、この棟で有害物質の漏洩などの異常が発生した際には、「排水系異常時連絡網」に従って担当部門に連絡し、水質監視槽にある排水ポンプを停止して排水を回収するなど、さらなる流出防止措置を取ります。

    今後も当社は、排水の定期点検など継続的な監視を行うとともに、有害物質による汚染を未然に防止するための施策を講じ、監視体制の強化に努めていきます。

    ※高薬理活性物質:極めて少ない量(ナノグラム~マイクログラム)で人体に作用する物質。

    排水系異常時連絡網(イメージ)

SDGs目標15  「陸の豊かさも守ろう」 に関する住友ファーマの取組 製造における薬剤耐性(AMR)対策~自然環境を守るために~

  • 世界全体の課題として、薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)というものがあります。AMRとは、特定の種類の抗菌薬(抗生物質)の不適切な使用により細菌に対して薬が効きにくくなる、または効かなくなることです。このことにより、薬が効かずに症状が悪化したり、新たな疾患が生まれたりするなどの問題が発生しています。抗菌薬が適切に処理されないまま自然環境に放出されると、AMRのリスクを高める可能性があるため、製薬企業は抗菌薬の製造段階で発生する廃棄物や排水が適切に処理されるように管理しなければなりません。

    住友ファーマは、自社の抗菌薬の製造を行っている大分工場で、厳格にAMR対策を行っています。

    例えば、抗菌薬の製造を行っている場所は区域分けがされており、関係者のみが立ち入ることができます。

  • 該当の場所は、封じ込めの一環として二枚扉の構造になっていたり、室内の空気圧差を利用して空気圧の高い部屋から低い部屋への空気の流れを作ることで、抗菌薬を外へ持ち出さない設計になっています。

    他にも、設備等の洗浄排水は中和処理を行った後に排水処理施設で処理を行い、廃棄物を捨てる際はポリ袋に入れ噴霧器で次亜塩素酸ナトリウムをかけたりすることによって、廃棄物に付着した抗菌薬を不活性化させ、抗菌薬が自然環境へ流出することを防いでいます。

    今後も当社はAMR対策に真摯に取り組み、定期的に監査を行うとともに、適切に抗菌薬の製造を行います。

    ※封じ込め:環境汚染の防止だけでなく、交差汚染や健康障害の防止策として、高い薬効をもつ粉体を飛散・浮遊させないこと。

  • 【注】

    ・1つの部屋に2つ以上の扉がある場合、同時に両側の扉が開くことはありません。

    ・(---)(--)(-)は陰圧:部屋の気圧が外の気圧よりも低い状態、(±0)は外と同じ気圧、(+++)は陽圧:部屋の気圧が外の気圧よりも高い状態で、「空気の流れ」を作っています。

監修:蟹江憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)