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vol.9 大量生産・大量消費は誰の責任?【目標12】

未来の資源を食いつぶしている?!?

Aさんがたくさんのビニール傘を抱えてSDGs部の部室に入ってきたよ。

どうしたの?!その傘!

これ全部、学校に置き忘れて放置されていたものだよ。処分するって聞いて、もらってきたんだ。どうにかならないかな?

こんなにたくさん……。どれもまだ十分使えるのに、もったいないね。

「もったいない」って気持ち、とても大事だね。大量に物を作って、大量に消費し、廃棄するという今の社会の在り方が、世界中で問題になっているんだよ。

大量消費社会って言うんだよね。

うん。物を作るのには、たくさんの資源とエネルギーを使うよね。昔は、地球上の全ての人が1年間暮らすために必要な資源の量は、地球の生態系が1年間に生み出す資源の量よりも少なかったんだ。それが1970年代以降、消費する資源の量がどんどん多くなっている。今では、地球1.8個分もの資源を消費していると言われているんだ。※1

資源は無限にあるわけじゃないんだから、そんなに使ったらいつか足りなくなるよね。

僕たちの便利で快適な暮らしは、未来の資源を消費することで成り立っているってことか。

その通りだね。このように地球環境に与える負荷を数値化したものを「エコロジカル・フットプリント」と言うんだよ。日本のエコロジカル・フットプリントは、減少傾向にあるけれど、それでも2018年のデータでは世界平均の1.7倍に当たるんだ。※2 世界中の人が日本人と同じ暮らしをした場合、地球は2.9個分必要だと言われているよ。※1

この傘……やっぱり捨てるなんておかしいよね。

※1 How many Earths? How many countries? │EARTH OVERSHOOT DAY
https://www.overshootday.org/how-many-earths-or-countries-do-we-need/

※2 Global Footprint Network公表資料(下記URLは外部のサイトへ遷移します)
https://data.footprintnetwork.org/#/compareCountries?type=EFCpc&cn=110,5001&yr=2018

食品の3分の1は捨てられている

そういえば、給食も毎日たくさん残るよね。

そうそう。まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことを「食品ロス」って言うでしょ。給食の残りは、まさに食品ロスだね。

世界全体だと、どれくらいの量の食べ物が捨てられているか、みんな想像つくかな?なんと、作られた量の3分の1(約13億トン)にのぼるんだ。※1

3分の1も!? 世界には飢餓に苦しんでいる人もたくさんいるのに……。

日本でも、令和2年度には年間522万トンの食べ物が捨てられているんだよ。国民全員が毎日お茶碗1杯分の食べ物を捨てていることになる。※2

どうしてこんなに食品ロスが多くなっちゃうんだろう?

生産、流通、販売、消費、いろんな段階で廃棄が起きているからね。食品ロスは大きく2つに分かれるんだ。一つは「事業系食品ロス」で、スーパーやコンビニのような小売店での売れ残りや返品、飲食店での食べ残し、畑や工場で出る規格外品。もう一つが「家庭系食品ロス」だ。君たちの家ではどんなことが原因で食品ロスが起きていると思う?

食べ残しとか、賞味期限切れが多いかな。

野菜の皮や茎とか、食べられるところまで捨てちゃうこともあるよね。

そうだね。食品ロスによって、その食べ物だけでなく、生産や輸送のために使われた水や燃料、肥料や家畜のエサもすべて無駄になってしまう。

食品ロスによって出たゴミを燃やすのにもエネルギーが必要だから、大量の温室効果ガスの排出にもつながってしまうね。

ちなみに、「フードロス」という言葉も聞いたことがあるかな?「食品ロス」と似た言葉だけど、日本語の「食品ロス」と英語の「フードロス」は解釈が違うことがあるんだよ。英語の場合は、生産や流通などの過程で発生する食品廃棄を「フードロス」、家庭内や飲食店などでの食品廃棄を「フードウェイスト」としているんだ。日本語の「食品ロス」には、この両方が含まれる。だから、「フードロス」という言葉を使うときにはちょっと注意が必要だね。

※1 農林水産省『aff』20年10月号「食品ロスの現状を知る」
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html

※2 環境省 食品ロスポータルサイト
https://www.env.go.jp/recycle/foodloss/general.html

服1着を作るのにかかる環境負荷

私、洋服も結構無駄にしているかも。そんなに着ていないのに、飽きちゃったり、サイズが合わなくなっちゃったりして処分した服や靴がたくさんある。安いと、つい買っちゃうんだよね。

流行の移り変わりも早いしね。

そうだね。じゃあ、洋服を作るのに、一体どれくらいの水やエネルギーが必要だと思う? 水は綿花の栽培や、羊の飼育、染色などいろんな場面で使われるけど、1着作るのになんと平均約2300リットル(お風呂11杯分)も必要なんだ。機械を動かしたり、できたものを輸送したりするのに、二酸化炭素は1着当たり平均25.5キロ排出されている。ちょっとイメージしにくいだろうけど、これは500mlペットボトルを255本作るのと同じくらいの排出量なんだ。※1

1着作るだけでもそれだけの資源やエネルギーを使っているのに、みんなが私みたいな浪費を続けていたら、地球への負荷は大変なことになってしまうね。

大量生産、大量消費の見直しは、SDGsにも掲げられているんだ。

  • 5 ジェンダー平等を実現しよう
  • SDGsの目標 12

    持続可能な消費・生産形態を
    確実にする

ターゲット

12.1
先進国主導のもと、開発途上国の開発状況や能力を考慮しつつ、すべての国々が行動を起こし、「持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)」を実施する。
12.2
2030年までに、天然資源の持続可能な管理と効率的な利用を実現する。
12.3
2030年までに、小売・消費者レベルにおける世界全体の一人あたり食品廃棄を半分にし、収穫後の損失を含めて生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減らす。
12.4
2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクル全体を通して化学物質や廃棄物の環境に配慮した管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小限に抑えるため、大気、水、土壌への化学物質や廃棄物の放出を大幅に減らす。
12.5
2030年までに、廃棄物の発生を、予防、削減(リデュース)、再生利用(リサイクル)や再利用(リユース)により大幅に減らす。
12.6
企業、特に大企業や多国籍企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう促す。
12.7
国内の政策や優先事項に従って、持続可能な公共調達の取り組みを促進する。
12.8
2030年までに、人々があらゆる場所で、持続可能な開発や自然と調和したライフスタイルのために、適切な情報が得られ意識がもてるようにする。
12.a
より持続可能な消費・生産形態に移行するため、開発途上国の科学的・技術的能力の強化を支援する。
12.b
雇用創出や地域の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して、持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12.c
税制を改正し、有害な補助金がある場合は環境への影響を考慮して段階的に廃止するなど、各国の状況に応じて市場のひずみをなくすことで、無駄な消費につながる化石燃料への非効率な補助金を合理化する。その際には、開発途上国の特別なニーズや状況を十分に考慮し、貧困層や影響を受けるコミュニティを保護する形で、開発における悪影響を最小限に留める。

https://xsdg.jp/pdf/SDGs169TARGETS_ver1.2.pdfをもとに作成

消費する側の心がけと、生産する側の努力や技術開発の両方が必要だってことがわかるね。「つくる責任」と「つかう責任」、それぞれ具体的にどんなものがあるのか、一緒に考えてみよう。

※1 環境省「これからのファッションを持続可能に」
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/

「つくる責任」とは、何だろう?

たとえば食品メーカーが「つくる責任」を果たすとしたら、どんなことができるかな?

農薬や化学肥料を使わない有機栽培の食材を使う。あとは、国産や地元産の食材を使えば、輸送で排出される二酸化炭素を減らせるよね。

作りすぎないことも大事だよね。売れ残りが出ないように、過去のデータを分析したりして、作る量を調整するといいんじゃないかな。

最近は、パッケージをプラスチックから紙やバイオマスプラスチックに替えるお菓子メーカーも出てきたよね。すごくいいと思う。

飲料メーカーも、ペットボトルを回収してリサイクルしているよ。

製造過程で出た食品ゴミを家畜のエサや燃料にしているところもある。やれることはたくさんありそうだね。じゃあ、ファッションだったら、どんな「つくる責任」が考えられるかな?

長く着られる服を作ることが大事だと思うな。色落ちしにくい染色とか、ほつれにくい縫製とか。破れたり部品が壊れたりすると補修してくれるメーカーもあるよね。

オーガニックコットンのように環境負荷の少ない素材を使うのもいいんじゃないかな。パイナップルやバナナの皮みたいに、これまで捨てられていたものからとった繊維も、エコな素材として注目されているみたいだよ。

ここ数年は、ガスの排出量や水の使用量、排水の質などの情報を公開しているメーカーもあるんだ。情報を見せるっていうことも「責任」の一つだし、自信があるからこそできることだよね。

「つかう責任」とは、何だろう?

「つかう責任」についても一緒に考えてみよう。

「エシカル(倫理的)消費」って最近よく聞くけど、環境や社会や人に配慮して物を買ったり使ったりすることでしょ。これってまさに「つかう責任」だよね。

その通りだね。たとえばファッションだったら、エシカル消費ってどういうことだろう?

オーガニック素材やリサイクル素材のように環境にやさしい素材で作られた服を選ぶことかな。

友達はフリマアプリをフル活用してるって言ってた。古着を買って、着なくなったら売って、また別の古着を買うんだって。今、流行っている服もたくさん出品されているらしくて、いつもかわいい格好をしてるの。再利用して新しく消費しないっていう意味では、これもエシカル消費なのかな?

服を買わずにレンタルするサービスも広がっているよね。毎月定額で流行りの服が借りられるサブスクリプションって、すごくいいよね。

そうだね。先生も昔はみんなと同じように流行りを追いかけていたんだけど、最近は「着心地が良い」とか、「着ていると明るい気持ちになる」とか、そういう理由で服を選ぶことが多くなったな。周りに合わせるんじゃなくて、自分が心から気に入って買った服は、長く大事に着ているよ。

長く大事に着るって、シンプルだけどすごくいいね!

うん!流行りの服もかわいいけど、自分らしい格好をしている子って、すごく素敵だしね。私もそんなおしゃれを目指そうかな。

考えてみよう!

  • レストランで食事をするとき

  • 料理をするとき

  • スーパーで買い物をするとき

  • 家で食事をするとき

本当に必要なものを買って、長く使おう

“3つのR”については、知っているかな?Reduce(ゴミを減らす)、Reuse(再利用する)、Recycle(リサイクルする)。これを意識することも「つかう責任」だね。

ゴミを減らすために、マイバッグやマイボトルを持ち歩く人は増えたよね。

私は、旅行の時にマイ歯ブラシを持っていくようにしているよ。

傘だって、出かける時にちゃんと天気予報を確認すれば、外出先でビニール傘を慌てて買わなくて済むんだよね。

本当に必要なものだけを、必要な分だけ買って、長く大切に使う。これって当たり前のようだけど、とても大事なことだね。「安いから買う」は、もうやめよう!

安い物を何度も買うより、良い物を長く使う方が、経済的にも得かもしれないよね。

他には「どう作られているか」を意識してみるのもいいかもしれないよ。

環境に配慮した商品につけられる認証マークがいくつかあったよね。買い物をするときにチェックしてみよう。

そうだ!この大量のビニール傘、今度雨の日に、駅前で必要な人に配ってみるのはどう?今日、話したことをまとめたリーフレットも添えて。

それ、すごくいいアイデア!!みんなが意識すれば、ゴミも減っていくはずだよね。

考えてみよう!

有機JAS認証

農林水産省「有機食品の検査認証制度」
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html

レインフォレスト・
アライアンス認証

レインフォレスト・アライアンス
ra.org/ja

FSC®認証

FSC® Japan
https://jp.fsc.org/jp-ja

エコマーク

エコマーク事務局
https://www.ecomark.jp/

省エネラベル

エネルギー庁「統一省エネラベルを見てみよう!」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/retail/pdf/touitsu_shoene_label_221001.pdf

■参考
環境省 
https://www.env.go.jp/policy/hozen/green/ecolabel/touroku.html
豊島区 
https://www.city.toshima.lg.jp/149/machizukuri/shizen/coolchoice/2107271505.html

発見! SDGsチャレンジャー 資源の循環で“思い”をつなぐ捨てられるはずのおからでグラノーラを製造販売 Fairy Forest ~もったいないに架け橋を~山崎佐知子さん

  • 食品ロスを減らし持続可能な社会を実現させたいという思いから、豆腐屋さんで捨てられてしまうおからを原料にグラノーラを作り販売している山崎さん。小学生の頃に祖父から聞いた戦時中の食糧難の話、そして牧場で牛の世話をする「カウガールスクール」での体験が、その活動のきっかけとなりました。

    牛の世話を通じて、牛乳など一つの食べ物を作るのにたくさんの人が関わっていることを知り、無駄にしてはいけないという思いを強くした山崎さん。循環型農業を実践するその牧場では、こし餡を作る時に残る小豆の皮やカットフルーツ工場で出る果物の皮、豆乳の搾りカスであるおからなど、食品工場から出る廃棄物を牛のエサとして与えていました。山崎さんはそのひとつである「おから」に注目し、食品ロスを減らせないかと考えました。「おからは栄養豊富で、グラノーラにすれば日持ちがするし、忙しい人にも毎日食べてもらえる」と、自宅のオーブンを使い試作を始めました。

    安心して食べてほしいという思いから、甘味料や油、添加物を一切使わず、地元産のおからと有機オートミール、国産米粉のみで作ることに。ほぼ手探りで2カ月にわたって試作を続けました。完成後も、製造場所としてキッチンを貸してもらう

    校内で「ジェンダーカルタ会」を開催!
  • これからの活動について3人で話し合い

    完成後も、製造場所としてキッチンを貸してもらうため、10カ所以上の飲食店にプレゼンやお願いをして回りました。結果、山崎さんの思いに共感してくれたカフェのオーナーの協力を得ることができ、牧場でのマルシェやイベントでの販売に漕ぎつけることができました。

    余計なゴミを出さないよう、商品は袋詰めするのではなく、量り売りやリサイクルできる瓶で販売するのもこだわりの一つ。また収益は、おからのケーキや売れ残ったグラノーラと共にすべて子ども食堂に寄付しています。「ありがとうという言葉が何よりの励みです。お豆腐屋さん、お客さん、子ども食堂の方、それぞれの思いや言葉を繋げていけるのも楽しいですね」。

    現在高校3年生の山崎さんは、大学では循環型社会のための街づくりとしてカフェの運営もしてみたいとのこと。「環境問題に興味を持つきっかけになってくれたらうれしいですし、心地よい空間で肩肘張らずに循環の輪を広げていけたらいいですね」。

    ※循環型農業:従来の化学肥料や農薬などだけに頼るのではなく、一般家庭から出る生ごみや家畜の糞尿を堆肥化して作物の栽培に使い、畑で発生した野菜屑や加工場で出る食品ロスなど本来であれば廃棄される物を家畜のエサにして循環させる農業。

Fairy Forest ~もったいないに架け橋を~
https://fairyforest1171146.wixsite.com/website-1

SDGs目標12 「つくる責任、つかう責任」に関する住友ファーマの取り組み ~事業活動のあらゆる段階で環境負荷を低減~

住友ファーマでは、医薬品の研究や生産をはじめとする事業活動にさまざまな資源や化学物質を利用しています。つくる側、つかう側のどちらの立場でもある当社は、限りある資源を有効利用することに加え、事業活動の過程で発生する廃棄物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)に積極的に取り組んでいます。

事業活動
  • エネルギーについては、エネルギー効率のより良い設備の導入、一人ひとりの空調の温度管理や使用の低減、エコドライブなどを推進することで使用量を削減しています。さらに、エネルギーの使用に伴い発生する温室効果ガスの排出量をゼロにすることを目指し、再生可能エネルギーを積極的に採用しています。また、水についても節水機器の導入などにより有効利用に努めるとともに、使用した水は水質分析などによって継続的に監視することで、排水による環境汚染を防止しています。

    廃棄物には、埋め立て場所のひっ迫、処理の際に発生する温室効果ガスなど、さまざまな環境問題があります。医薬品の研究・生産過程では廃棄物を出さないようにさまざまな改良を行い、原材料

  • 廃棄物には、埋め立て場所のひっ迫、処理の際に発生する温室効果ガスなど、さまざまな環境問題があります。医薬品の研究・生産過程では廃棄物を出さないようにさまざまな改良を行い、原材料や化学物質の使用量を削減しています。例えば、医薬品の容器や包装は、医薬品の品質や安定性に影響しない範囲で覆っているフィルムや箱を小さくしたり、薄くしたりするなどの工夫をしています。こうした取り組みは、当社の中だけでなく、医薬品を使用する病院や薬局などでの廃棄物の削減にも貢献できます。やむを得ず発生した廃棄物はリサイクル業者を積極的に活用することで、新たな素材などに再生されています。

    や化学物質の使用量を削減しています。例えば、医薬品の容器や包装は、医薬品の品質や安定性に影響しない範囲で覆っているフィルムや箱を小さくしたり、薄くしたりするなどの工夫をしています。こうした取り組みは、当社の中だけでなく、医薬品を使用する病院や薬局などでの廃棄物の削減にも貢献できます。やむを得ず発生した廃棄物はリサイクル業者を積極的に活用することで、新たな素材などに再生されています。

    医薬品の研究開発、生産、営業、さらには病院や薬局、患者さんに届いた後の薬の使用に至るあらゆる段階において、私たちの事業活動は、環境にさまざまな影響を与えています。住友ファーマは今後もこれらの環境影響を全従業員が意識し、環境負荷の低減に努めていきます。

監修:蟹江憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)