肝臓病のかゆみと睡眠
監修 虎の門病院 肝臓センター 熊田 博光先生
肝炎や肝硬変など、慢性的な肝臓病では症状が進行するに伴うかゆみが生じることがあります。ときにこのかゆみは非常に強く、夜眠れなくなることもあります。
PBC(肝臓の難病)患者さんでは、約7割の方が睡眠障害を訴える
原発性胆汁性胆管炎(PBC)
※1
と呼ばれる肝臓病患者さんの睡眠障害の現状を明らかにした調査結果があります。
米国の患者サポート団体
※2
がPBC患者さんを対象に行ったアンケート調査
1)
によると、「かゆみはありますか?」との質問に対し69%の患者さんが「はい」と答え、そのうち74%の患者さんが「かゆみによって睡眠が妨げられた」と回答しました。つまり約半数の患者さんがかゆみによる睡眠障害を訴えている、ということになります。
- ※1 原発性胆汁性胆管炎(PBC)は自己免疫疾患の1つで、肝臓の中の小さな胆管が破壊され、胆汁がたまり肝機能が低下、黄疸などの症状があらわれる病気です。推定患者数は約5万~6万人とまれな病気ですが、根本的な治療法がなく、厚生労働省により指定難病に指定されています。
- ※2 PBCers Organizationと呼ばれるPBCと他の自己免疫性の肝臓病患者さんをサポートする米国の団体
肝臓病の患者さんは、かゆみのせいで寝つきが悪い
肝臓病の患者さんは健康な人に比べて睡眠の開始時間が遅れる、すなわち寝つきが悪いことも調査で明らかになり、「かゆみ」との因果関係が指摘されています。
PBC患者さん74例、肝硬変患者さん60例、健康な人79例を対象に睡眠のタイミングについて調査した結果、PBCや肝硬変の患者さんは健康な人と比べて睡眠の開始時間が遅れていることがわかりました。さらに、調査ではPBC患者さんのかゆみと睡眠障害との関係についても検討し、その結果、かゆみのあるPBC患者さんは、かゆみのないPBC患者さんや健康な人と比べて、眠りにつくまでの時間が遅れていることが判明しました
2)
。
これらの調査結果から、肝臓病のかゆみは、睡眠の質にも大きな影響を与えることがわかります。
1)Rishe E. et al.: Acta Derm Venereol. 88(1):34, 2008
2)Montagnese S. et al.: Liver Int. 33:203, 2013