Drug Discovery Research 創薬研究

住友ファーマの優れた医薬品を継続的に創出していくための創薬研究の技術および取組をご紹介します。

創薬力向上のための技術強化や臨床開発段階における成功確度向上のための技術強化は、優れた医薬品の継続的な創出には欠かせないものです。

当社は、非臨床と臨床のギャップを埋めるために、トランスレーショナル研究を強化しています。具体的には患者由来の疾患iPS細胞、脳波・イメージング等の神経回路技術といった開発候補品を選抜するための自社独自の創薬技術に加え、製品や後期開発品創出を通じて蓄積してきた臨床データやTAAR1等の独自標的や興奮・抑制バランスといった病態の本質を捉えた創薬標的を組み合わせることにより、開発候補品目を継続的に創出できる複合的なトランスレーショナル研究のプラットフォームを構築しています。加えて、がん領域を中心にアカデミアとの連携を通じて入手した臨床検体もトランスレーショナル研究に活用しています。
また、創薬スピードと成功確度を向上させるために、創薬データや治験データおよび患者さんのReal World Dataを活用するインシリコ創薬プラットフォームを基盤としたデータ駆動型創薬を推進しています。
さらには、強みの低分子創薬のノウハウを競争力の基盤としてケミカルモダリティ(創薬化学を土台とした独自の先端医薬創出基盤)を追求し、創薬アプローチを多様化しています。

これらの創薬研究活動のほか、国内の研究機関および研究者を対象に当社の創薬研究ニーズと合致するアイデアを募集する公募型オープンイノベーション活動「PRISM」を2015年度から実施しています。

創薬研究

iPS創薬技術

iPS細胞は、京都大学の山中伸弥教授らによって2006年に報告された新しいタイプの幹細胞で、皮膚や血液などから採取した細胞に特定の因子を導入することでつくることができます。iPS細胞は体を構成するさまざまな細胞に分化できる性質を持っており、再生医療や新薬の研究開発への応用が期待されています。
患者さんの体細胞から作製したiPS細胞を用いることで、病気によって起こる体内の変化を細胞培養条件下で再現することが可能です。また最近では、従来の方法よりもさらに体内の組織・臓器に近い構造をつくることができるオルガノイド法という立体培養技術も発展しています。このような研究が進むことで、病気の原因解明や効果的な治療薬の開発が加速すると期待されています。

創薬研究

当社では、さまざまな疾患の患者さん由来iPS細胞を用いた創薬研究を進めています。たとえば、京都大学iPS細胞研究所との共同研究で、筋肉の中に骨ができる難病である進行性骨化性線維異形成症(FOP)という疾患の患者さんのiPS細胞を用いてFOPの症状が出る原因を解明し、治療薬候補物質を見いだすことに成功しています。
また、当社の重点疾患領域である精神神経領域においてもiPS細胞を用いた創薬研究を進めており、複数の開発候補化合物の創出に成功しています。

インシリコ創薬技術

インシリコ創薬とは、計算科学を駆使してコンピューターの中で薬を創ることです。創薬に関わるデータは多様であり、化合物関連情報から、タンパク質、ゲノムや生体分子に関する情報、細胞・脳などの臓器由来の生体信号、患者さんの病態に関する情報に至るまでが対象となり、そのデータ規模も年々増加しています。当社では、これらデータのコンピューターによる解析を通して、薬づくりに取り組んでいます。さらに人工知能を含むインフォマティクス技術を用いて、特定の疾患に効果的な薬剤標的あるいはメカニズムを探索する研究や、分子シミュレーション技術を活用した標的蛋白質に対する薬物候補化合物を創出する研究を中心に取り組んでいます。また、患者さんのデータも活用し、バイオマーカーと呼ばれる病態や治療効果を反映する客観的指標の開発にも挑戦しています。このような要素技術を駆使して、従来の仮説検証型の創薬研究から、網羅的かつ多面的なデータ解析や計算結果に基づく、データ駆動型の創薬研究への転換を積極的に推進しています。

創薬研究

公募型オープンイノベーション活動「PRISM」

国内の研究機関および研究者を対象に当社の創薬研究ニーズと合致するアイデアを募集する公募型オープンイノベーション活動「PRISM」を2015年度から実施しています。PRISMの詳細は、こちらをご覧ください。