くすりの絵文字(ピクトグラム)
薬の自由研究ガイド Vol.3

自由研究のテーマは決まりましたか?まだなら「薬」について調べてみてはいかがでしょうか。薬ができるまでのことや薬の種類、働き、使い方、薬の歴史、

薬に関するお仕事など、いろいろなテーマがありそうです。
ここでは、薬に関する自由研究の方法や研究のまとめ方についてガイドします。

「くすりの絵文字」でわかること どんなものがある? 何のためにある?

STEP1 研究を始める前に

非常口やトイレ、電車の優先座席などで見かける絵文字を「ピクトグラム」と呼びます。注目を集めることができ、ひと目でその意味が理解できて便利ですよね。実は薬の使い方や注意点を表すピクトグラムもあるって知っていますか? その数、なんと51種類もあります。

「くすりの絵文字」でわかること どんなものがある? 何のためにある? STEP1 研究を始める前に

STEP2 テーマを絞り込む

薬のピクトグラムは、なぜ必要なのでしょうか。病院で薬を出してもらうときや薬局で薬を買うとき、医師や薬剤師などの専門家が薬の使い方や注意点などを教えてくれます。また、薬の説明書や、お薬手帳に貼るための薬の情報が書かれたシールがもらえることもあります。

それでも薬のピクトグラムは、さまざまな場面で必要とされているようです。まずは、薬のピクトグラム、全51種類を見てみましょう。

薬のピクトグラム

クリックするとダウンロードできます。

薬のピクトグラム

データ提供:くすりの適正使用協議会

テーマ例:薬のピクトグラム、その役割を考える

薬のピクトグラムは、「くすりの種類」「くすりを用いる時間のめやす」「くすりを用いるときの注意事項」「やってはいけないこと」「日常生活で注意すること」の5つに分類されます。それぞれに分類されているマークの役割を考え、どうしてこのマークが必要なの?と疑問に思うマークがあれば、その理由を考え、調べてみましょう。

理解を深めるために、自分や家族がよく利用する薬があれば、「この薬につけるべきピクトグラムは何か?」について、考えてみるのもおすすめです。

STEP3 研究方法

薬袋や薬の説明書、お薬手帳にピクトグラムがないか探してみる

ピクトグラムを見つけたら、そのマークが使われたのはなぜかについて考えてみましょう。

薬袋や薬の説明書、お薬手帳にピクトグラムがないか探してみる

 

このピクトグラムはなぜ必要? 疑問に思ったマークを深掘り!

たとえば、
「食間にのむ」っていつ?
「一緒に納豆を食べてはいけません」ってどうして?
など、調べてみましょう。

 

ピクトグラムは1個か2個がおすすめ。その理由は?

薬のピクトグラムは51種類ありますが、1つの薬袋や薬の説明書などに記されるピクトグラムは、1個か2個の場合が多いようです。それはどうしてなのでしょう?

 

添付文書から、必要なピクトグラムを考える

家に常備してある薬の添付文書を見てみましょう。この薬につけるべきピクトグラムは何か、考えてみて!

 

参考になりそうなウェブサイト

薬を製造・販売する各企業のウェブサイトや、こうした企業が集まって運営している団体のウェブサイトなどに載っている情報を参考にしましょう。
たとえば、

日本製薬工業協会(製薬協)外部リンク

研究開発志向型の製薬企業が加盟する団体(任意団体)薬の情報をQ&A形式でまとめた「くすりの情報Q&A」や、小中学生が薬について学ぶための「くすり研究所」などのページがあります。

くすりの適正使用協議会 外部リンク

医薬品の適正使用を推進する団体(一般社団法人)薬を正しく安全に使うために必要な情報を集めた「くすりの使い方」、薬の情報を調べるための「くすりの検索」などのページがあります。

すこやかコンパス内の情報も参考にしてください。
くすりを知るにも、たくさんのヒントがあるはずです。

STEP4 研究をまとめる

ピクトグラムはなぜ必要なのか、どうしてこのピクトグラムが使われたのか、といったことは、家族や友達と一緒に考えてみてもいいですね。添付文書を見て選んだピクトグラムが家族や友達と一致しなかったら、なぜ一致しないのか議論するのもいいでしょう。

それから、薬の「種類」と「工夫」_薬の自由研究ガイド Vol.1でも紹介していますが、インターネット上の情報は全てが正しいとは限りません。少なくとも、資料を作った人や団体などが明記されているものを参考にしてください。そして、どの資料を参考にしたかについて、研究レポートに書くのも忘れずに。

スコッピィはどれが必要だと思う? スコッピィ:うーん、悩むなぁ…。

 

まとめ方の例

研究テーマ

くすりの絵文字、ピクトグラムでわかること

 
このテーマを選んだ理由

美術の授業でピクトグラムのことを知り、興味を持っていた。眼科を受診して出してもらった薬の袋に目のマークのピクトグラムがあったので、薬関連のピクトグラムのことを調べてみようと思った。

 
研究したこと

薬のピクトグラムにはどのようなものがあるか、なぜそれが必要か添付文書を見て、必要なピクトグラムはどれかを考える 。

 
研究結果

[ 薬のピクトグラムは5つに分類されている。分類ごとの役割について考えた ]

・薬の種類(剤形)
のみ薬ではない薬をのんでしまうような間違いを防ぐ。

 

・薬を用いる時間のめやす(服用時)
1日に何回のむか、食事の前か後かなどを守らないと、薬は適切に作用しないし、副作用にもつながるので注意を促している。

 

・薬を用いるときの注意事項(服用前の注意)
液体の薬で、薬の成分が沈殿しているから振ってからのまなくてはならないなど、薬を使うその場や保管で注意しなければならない特別なことを知らせている。

 

・やってはいけないこと(服用時の注意)
ほかの薬や食べ物の影響を受けやすい薬のことなど。間違った使い方をしないように注意を促している。

 

・日常生活で注意すること(服用後)
薬をのんだあとの注意点を知らせている。

 

ピクトグラムは、薬の使い方や使う時間の目安、注意すること、してはいけないことといった、薬を使うときに大切なことがらを、分類してわかりやすく図で示したものであることを知った。

 
[ このピクトグラムはなぜ必要? わからないものについて調べた ]

・食間にのむ
食間というのは、食事と食事の間のこと。前の食事から約2時間程度経ってからを指す。「食間」という言葉だけでは、食事をしている合間にのまなくてはならないのか?と勘違いしてしまうかもしれないが、ピクトグラムがあることで、食事と食事の間の空腹時にのまなくてはならないということがわかりやすい。

便秘薬「◯◯◯」の構造便秘薬「◯◯◯」の構造
 

・一緒に納豆を食べてはいけません
納豆に含まれる「ビタミンK」は、「ワルファリン」という血液を固まりにくくする薬の効果と反対の作用を持っていて、ワルファリンの効果を弱めてしまう。ワルファリンをのんでいる人は、納豆を避けたほうがいいようだ。

便秘薬「◯◯◯」の構造便秘薬「◯◯◯」の構造
 

ほかにも、食べ物や飲み物に注意が必要な薬はいろいろある。同様のピクトグラムには、グレープフルーツジュース、クロレラ、緑黄色野菜、カフェイン、チーズ、アルコール、牛乳に関するものがあった。

 
[ 添付文書を見て、必要なピクトグラムを考える ]

常備薬の風邪薬の添付文書について検討した。
※ここに、研究に用いた添付文書のコピーを貼りましょう

風邪薬の添付文書(見本)
クリックするとダウンロードできます。

添付文書をコピーして、当てはまりそうなピクトグラムを貼ってみた。

風邪薬の添付文書

※実際の添付文書をもとに作成した架空の添付文書です。

どのピクトグラムも、薬を正しく使うために重要なことを伝えているが、薬袋や薬の説明書にあるピクトグラムは、特に気をつけておきたいことを再確認するためにあるという(参考:くすりの適正使用協議会のウェブサイト www.rad-ar.or.jp/ 外部リンク  )。当てはまる全てのピクトグラムを表示したら、かえって大切なことが何かがわかりにくくなるので、1つか2つに絞ったほうがよさそうだ。

そう考えると、この薬につけるべきピクトグラムは

食事をしたら30分後にのむ
眠くなることがあります

の2つがいいと思った。家族の意見も聞いてみた。父は「運転をしてはいけません」を加えたほうがいいと言った。母は「他のくすりといっしょにのんではいけません」のピクトグラムをつけておきたい、と言った。どのピクトグラムが重要かは、「薬を使うのは誰か」によって変わった。

 
研究を終えての感想

薬のピクトグラムは、薬ののみ忘れや誤った使い方を防ぐために、最も大切なことをひと目で知らせてくれる。だからといって、薬の説明書や添付文書を読まなくていいというわけではなく、よく読んで、薬のことをちゃんと理解するのが大切だ。ピクトグラムは日本語以外にも、英語やスペイン語、中国語など計6ヵ国語に対応しているという。日本に来る外国人も増えているし、多くの人が、薬のピクトグラムで助かった!ということになればいいと思う。

 
今回の自由研究、うまくできたかな? 時間があったら、塗り薬や目薬など、のみ薬以外の薬についても、添付文書を見て必要なピクトグラムを考えてみては? 家族や友達と、「お父さんに必要なのはこれ」、「おばあちゃんにはこれ」……なんて話し合ってみるのもおすすめだよ。

コラム

ピクトグラム以外にも薬ののみ忘れを防ぐ工夫のいろいろ

せっかくの薬も、のみ忘れたり間違った使い方をしてしまったりしては、効果が得られにくいばかりか、体調を崩してしまう可能性もあります。そんなことがないようにするための工夫の1つとして、薬のピクトグラムが考えられました。しかし、頭ではわかっていても、うっかり薬をのみ忘れることは誰にでも起こり得ること。そこで、薬ののみ忘れをなくす工夫について、服薬期間別にまとめました。

ピクトグラム以外にも薬ののみ忘れを防ぐ工夫のいろいろ
●風邪などで数日間薬をのむ場合(風邪薬や解熱剤など)
・アラームを利用
薬をのむべき時間に、時計やスマートフォンのアラームがなる設定にする。
・目につくところに置く
たとえば朝食や夕食後の薬は食卓に、昼食後の薬は弁当箱の上に、就寝前の薬はベッドの横に……など、必ず目につく場所に置く。

●数カ月~年単位で薬をのむ場合(花粉症の薬や生活習慣病の薬など)
・服薬カレンダー、お薬ケースを利用
カレンダーの日付部分がポケットになっていて、その日にのむべき薬を入れておく服薬カレンダーや、1週間の曜日と、朝、昼、夜、寝る前といった1日の中でのタイミングごとの仕切りがある専用のお薬ケースなどを利用。
・いつもの行動とセットにする
薬をのむのは歯みがきの後、お昼のニュースが終わったころ……など、いつもの行動と薬をのむタイミングをセットにして習慣化する。
・手帳やカレンダーに印をつける
のんだ日の日付に印をつける。のんだかどうかがわからなくなるのも防げる。
・薬のシートや薬包に日付を書く
「○日朝」など、薬のシートや薬包に日付とのむタイミングを書いておく。
・一包化
何種類もの薬をのまなくてはならない場合、のむタイミングが同じ薬を1つの袋にまとめる「一包化」が可能なことも。薬剤師への相談が必要。

監修:加藤哲太(日本くすり教育研究所代表)