顆粒剤は錠剤よりも速く効く?
薬を選ぶとき編 Vol.2

薬局やドラッグストアの棚をながめてみると、まったく同じ名前のかぜ薬や胃腸薬で、錠剤タイプと顆粒剤タイプが並んでいるのを目にすることがあります。これらの違いって何なのでしょうか。

薬のパッケージを見比べると、多くの場合は錠剤でも顆粒剤でも1回の服用量に同じ有効成分が同じ量だけ含まれていることが確認できます(有効成分の含有量が若干異なる場合もあります)。顆粒剤のほうが胃で溶けやすく吸収も多少は速いと考えられますが、効き目が出るまでの速さはほとんど変わりません。錠剤をのみ込むのが苦手なら顆粒剤、顆粒剤だと薬の味が気になるなら甘いコーティング(糖衣)がしてある「糖衣錠」といった選び方が可能です。使う人にとってどれが便利か、どれが好きかで選んでかまいません。

みんなの「こまった!」を解決する工夫みんなの「こまった!」を解決する工夫

大人や子ども、赤ちゃんや体が弱った高齢者も、必要なとき、必要な薬が無理なく利用できるように薬の味や形(剤形)にはさまざまな工夫があります。主なのみ薬(内用薬)について具体例を紹介しましょう。

内用薬の剤形の工夫

のみやすい味に
シロップ剤シロップ剤
糖衣錠糖衣錠
服用しやすくするために
散剤(粉薬)や顆粒剤散剤(粉薬)や顆粒剤
錠剤やカプセル剤錠剤やカプセル剤
チュアブル錠チュアブル錠

効かせたい場所と時間をコントロール効かせたい場所と時間をコントロール

薬が溶ける場所やタイミングが大切なんだね!

ここまでは、好みの剤形が選べる場合について紹介しましたが、「この剤形だからこそ効く」という薬もたくさんあります。たとえば内用薬は胃を通って腸に届きますが、胃で溶けると効力が弱まる薬や胃を荒らしてしまう薬もあります。そういう薬は、胃では溶けずに腸で溶ける成分で有効成分を覆った「腸溶錠」にする、といった工夫がしてあります。

一方じわじわと長時間効かせたい薬では、すぐ溶ける薬の粒とゆっくり溶ける薬の粒を同じカプセル剤に入れるという工夫も。体内では時間差で溶けるので、効果が長持ちします。そのおかげで1日3回のまなくてはならなかった薬が、1日1回のむだけでよくなったら便利ですよね。剤形の工夫については、薬を飲む。薬の入口とその種類 からだを旅する薬のこと Vol.1も参考にしてください。

薬が溶ける場所やタイミングが大切なんだね!

のみ方を守らないとトラブルがのみ方を守らないとトラブルが

このように薬は、からだのどこで溶けて吸収され、効き目の持続時間はこれくらい……といったことが計算されて作られています。腸で溶けてほしい腸溶剤をかみ砕いてしまったら、薬が胃で溶けて狙い通りの効き目が得られないばかりか、お腹が痛くなってしまうかもしれません。時間差で溶ける粒が入ったカプセルを分解して中身だけのんだら、効果の持続時間が短くなってしまいます。添付文書に書いてあるのみ方を守りましょう。

内用薬と外用薬、どっちを選ぶ?内用薬と外用薬、どっちを選ぶ?

薬は、からだに入れる方法で分けると、口から入れる内用薬のほか、からだの表面から入れる「外用薬」、からだに刺した針から入れる「注射薬」があります。注射薬は自分で使うことはあまりないですが、同じ症状に対し、内用薬と外用薬の両方を選べることがあります。たとえば花粉症などのアレルギー症状に用いる薬がそうです。

内用薬には「アレルギーを引き起こす原因物質をできにくくする」「くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといったアレルギー症状全般を抑える」といった作用があります。一方、外用薬の鼻炎用スプレーは鼻水や鼻づまりに、点眼薬は目のかゆみにと、症状が出た部分に直接作用します。一般的に薬が直接届く外用薬のほうが速く効きますが、内用薬と外用薬のどちらを選ぶか?というよりは、普段は内用薬でアレルギー症状が出るのを抑え、症状が出てしまったら外用薬で抑えるという使い方をする場合が多いようです。しかし、併用には注意が必要な薬もあるので、薬剤師に相談して選びましょう。

今回の「こまった!」 解決メモ

同じ名前の薬なら、剤形は好みや使いやすさで選んでいい。
でも、添付文書に書いてある用量・用法は必ず守ろう。

- コラム -

薬剤師と相談してセルフメディケーション

薬剤師と相談して

セルフメディケーション

「セルフメディケーション」という言葉を聞いたことはありますか?直訳するとセルフ=自分で、メディケーション=投薬。自主服薬などと訳します。世界保健機関(WHO)は「自分自身の健康に責任を持ち、軽度なからだの不調は自分で手当てすること」と定義しています。※1

日ごろからよく体調をチェックし、具合が悪くなったら必要に応じて市販薬などをうまく利用しましょうという考え方で、日本でも広く浸透しつつあります。でも、薬はそのときどきで適切なものを選んで正しく使わないと、治るどころか症状が悪化することもあります。だから“セルフ”メディケーションとはいえ、自分だけで判断するのではなく、必ず医師や薬剤師などの専門家に相談して、どのような薬がよいか、その薬の使い方は……といったアドバイスをもらうのが大切です。

薬局やドラッグストアで市販薬を選ぶとき、薬剤師にはまず、

  • どのような症状がいつから続いているか
  • 今、ほかにも使っている薬はあるか
  • 薬や食べ物でアレルギー症状が出たことがあるか

この3点はしっかり伝えてください。そのうえで、「苦くない薬がいい」「水なしでのめる薬はないか」といった剤形選びの相談をしてみるのもいいでしょう。薬剤師を味方にして、上手にセルフメディケーションを!

※1 Guidelines for the Regulatory Assessment of Medicinal Products for Use in Self-Medication:WHO Geneva 2000

監修:加藤哲太(日本くすり教育研究所代表)