印刷(PDF/171KB)はこちらから 2024年06月17日 研究開発

欧州血液学会(EHA)2024における開発中の抗がん剤DSP-5336に関する新規の臨床データ発表のお知らせ

住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博)の米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.(以下「SMPA社」)は、欧州血液学会(EHA:European Hematology Association)の2024年年次総会において、再発または難治性の急性白血病患者を対象にフェーズ1/2試験を実施中の抗がん剤であるメニン-MLL(mixed-lineage leukemia)タンパク質結合阻害剤DSP-5336(開発コード、以下「本剤」)に関する新規の臨床データを口頭発表しましたので、お知らせします。

2023年米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)年次総会で発表された予備的なデータに続き、EHA2024ではフェーズ1/2試験の非盲検、用量漸増および用量最適化パートの最新データが発表されました。患者は、本剤を1回40mgから300mgを1日2回、28日サイクルで反復経口投与されました。

EHA2024での口頭発表には、57名の結果が含まれています。本剤を1日2回140mg以上投与された患者、特にNucleophosmin 1(NPM1)遺伝子の変異またはKMT2A(MLL)遺伝子の再構成のいずれかが各実施医療機関の検査で認められた21名の患者において、より一貫した奏効が認められました。客観的奏効は57%(21名中12名)に認められ、完全寛解または部分的血液学的回復を伴う完全寛解(CR/CRh)は24%(21名中5名)に認められました。

これまでの試験結果において、本剤の忍容性は良好であり、用量制限毒性(DLT)は認められておらず、重大な心毒性の所見、治療関連の投与中止や死亡例も認められていません。アゾール系薬剤との重大な薬物相互作用は確認されておらず、反復投与による薬物動態学的蓄積はほとんど認められていません。重要なことに、分化症候群(DS:differentiation syndrome)の予防は必要とされておらず、DSは3名(5%)で報告されましたが、いずれもマネジメント可能で集中治療室(ICU)への入院や投与中止には至りませんでした。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター白血病研究提携プログラム部長、白血病科教授であり、EHA2024における本剤に関する発表の筆頭発表者であるNaval Daver(ネイバル・デイバー)医師は、次のように述べています。「本剤のメニン阻害剤による前治療歴のない患者さんにおける奏効は有望であり、再発または難治性の急性白血病患者さんにおいて良好な安全性プロファイルとともに、50%を超える客観的奏効率が示されています。メニン阻害剤は、MLL融合タンパク質および変異NPM1遺伝子タンパク質の白血病誘発活性を逆転させるため、特定の急性白血病を改善する大きな可能性を有しています。有望な臨床活性に加えて、本剤の安全性プロファイルは特に良好であり、重度のDS、DLTおよび投与中止に至る治療関連の有害事象がなく、他のメニン阻害剤と差別化できる可能性があります」

白血病は、血液細胞のがんであり造血器官である骨髄中において腫瘍性の白血球(白血病細胞)が異常増殖することで正常造血が阻害されることを特徴としています。白血病の一種である急性白血病は、白血病細胞が急速に増殖し、突然症状が現れるため、早急な治療が必要とされています。また、急性骨髄性白血病(AML:acute myeloid leukemia)患者さんの約30%がNPM1遺伝子の変異を、5~10%がKMT2A(MLL)遺伝子の再構成を有しているといわれています。

SMPA社のChief Medical Officer - OncologyであるJatin Shah(ジェイティン・シャー)は次のように述べています。「KMT2A(MLL)遺伝子の再構成またはNPM1遺伝子の変異を有するAMLに対しては、承認された標的治療法がないため、再発または難治性の急性白血病には、依然として高いアンメットニーズがあります。メニン阻害の生物学的重要性は明確であり、私たちは急速に進歩しているこの分野において早くから取り組んでいます。私たちは、これらの初期の結果についてうれしく思っており、有効性と忍容性を兼ね備えた、新たな治療選択肢を提供することを目指します。私たちは、AMLの予後の改善と患者さんの治療を進歩させることを期待して、引き続き本剤の試験を進めていきます」

  • 本件に関連するプレスリリースとして、以下を開示しています。
  • ・米国血液学会(ASH)2023における開発中の抗がん剤DSP-5336に関する有望な新規の臨床データ発表のお知らせ(2023年12月12日)
     https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20231212.html
  • ・米国血液学会(ASH)2023における開発中の抗がん剤TP-3654およびDSP-5336に関する臨床データ発表のお知らせ(2023年11月6日)
     https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20231106.html

ご参考

DSP-5336について

DSP-5336は、メニンタンパク質とMLL(mixed-lineage leukemia)タンパク質との結合を阻害する低分子化合物です。メニンは核に局在し、細胞増殖調節、細胞周期制御、ゲノム安定性、骨発達、造血などの生物学的経路においてさまざまな重要な役割を果たす足場タンパク質です。非臨床研究において、本剤はメニンとMLLのタンパク質の結合を阻害することでKMT2A(MLL)再構成またはNPM1遺伝子変異を有するヒト急性白血病細胞株において選択的な増殖阻害を示しました。さらに、本剤を処理したMLL再構成またはNPM1遺伝子変異を有するヒト急性白血病細胞株において、白血病発症に関与するHOXA9およびMEIS1遺伝子の発現を低下させるとともに、正常血液細胞における終末分化マーカーであるCD11b遺伝子の発現上昇を示しました。本剤の安全性および有効性については現在、再発または難治性の急性白血病患者を対象としたフェーズ1/2用量漸増および用量拡大試験において評価しています(NCT04988555)。本剤は、2022年6月に急性骨髄性白血病の適応で米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグ指定を受けています。

以上

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