印刷(PDF/235KB)はこちらから 2024年07月16日 研究開発
開発中の抗がん剤DSP-5336について米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定の受領のお知らせ
住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:木村 徹)の米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.(以下「SMPA社」)は、開発中の抗がん剤であるメニン-MLL(mixed-lineage leukemia)タンパク質結合阻害剤DSP-5336(開発コード、以下「本剤」)について、米国食品医薬品局(FDA)より、KMT2A(MLL)遺伝子の再構成またはNucleophosmin 1(NPM1)遺伝子の変異を有する再発または難治性の急性骨髄性白血病(AML:acute myeloid leukemia)を対象としたファストトラック指定を受領したことを、2024年7月15日(現地時間)に発表しましたので、お知らせします。
FDAのファストトラック指定は、重篤または生命を脅かす恐れのある疾患やアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患に対し、治療効果が期待される治療法の開発・審査の迅速化を目的とした制度です。本指定により、FDAとの協議をより頻繁に行うことや申請資料を段階的にFDAに提出することが可能となり、FDAは全データの提出を待たずに提出されたデータから順次審査を進めることができます。さらに、今後得られる臨床試験結果によって、優先審査の対象となることも期待されます。
SMPA社のPresident兼CEOである中川 勉は、次のように述べています。「再発または難治性の急性骨髄性白血病と診断された患者さんとそのご家族にとって、この疾患に対するアンメット・メディカル・ニーズは依然として高く、私たちは新たな治療法の確立とその進展が急務であると認識しています。私たちは、このたびのFDAによる本剤のファストトラック指定をうれしく思います。今後の本剤の臨床開発において、FDAと緊密に協力していきます」
2023年米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)年次総会で発表した予備的なデータに続き、2024年欧州血液学会(EHA:European Hematology Association)年次総会では、現在実施中の本剤のフェーズ1/2試験の非盲検、用量漸増および用量最適化パートの最新データを発表しました。客観的奏効は、NPM1遺伝子の変異またはKMT2A(MLL)遺伝子の再構成を有する患者の57%(21名中12名)に認められ、完全寛解または部分的血液学的回復を伴う完全寛解(CR/CRh)は24%(21名中5名)に認められました。
これまでの試験結果において、本剤の忍容性は良好であり、用量制限毒性(DLT)は認められておらず、重大な心毒性の所見、治療関連の投与中止や死亡例も認められていません。アゾール系薬剤との重大な薬物相互作用は確認されておらず、反復投与による薬物動態学的蓄積はほとんど認められていません。重要なことに、分化症候群(DS:differentiation syndrome)の予防は必要とされておらず、DSは3名(5%)で報告されましたが、いずれもマネジメント可能で集中治療室(ICU)への入院や投与中止には至りませんでした。
SMPA社のChief Medical Officer - OncologyであるJatin Shah(ジェイティン・シャー)は、次のように述べています。「AMLの治療選択肢は限られており、特にKMT2A(MLL)遺伝子の再構成またはNPM1遺伝子の変異を有するAMLに対しては、承認された標的治療法がなく、高いアンメット・メディカル・ニーズがあります。本剤は有望な臨床活性を示しており、メニン阻害剤はこれらの遺伝子異常を有する急性白血病の予後を改善できる大きな可能性を有しています。私たちは、これらの早期臨床試験結果およびFDAによる本剤のファストトラック指定をうれしく思っています。私たちは、再発または難治性の急性骨髄性白血病患者さんに、良好な忍容性と有効性を兼ね備えた新たな標的治療法を提供するために、FDAや関係者と緊密に連携し、迅速に本剤の開発を進めていきます」
白血病は、血液細胞のがんであり造血器官である骨髄中において腫瘍性の白血球(白血病細胞)が異常増殖することで正常造血が阻害されることを特徴としています。白血病の一種である急性白血病は、白血病細胞が急速に増殖し、突然症状が現れるため、早急な治療が必要とされています。また、AML患者さんの約30%がNPM1遺伝子の変異を、5~10%がKMT2A(MLL)遺伝子の再構成を有しているといわれています。
- ※本件に関連するプレスリリースとして、以下を開示しています。
- ・欧州血液学会(EHA)2024における開発中の抗がん剤DSP-5336に関する新規の臨床データ発表のお知らせ(2024年6月17日)
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20240617.html - ・米国血液学会(ASH)2023における開発中の抗がん剤DSP-5336に関する有望な新規の臨床データ発表のお知らせ(2023年12月12日)
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20231212.html - ・米国血液学会(ASH)2023における開発中の抗がん剤TP-3654およびDSP-5336に関する臨床データ発表のお知らせ(2023年11月6日)
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20231106.html
ご参考
DSP-5336について
DSP-5336は、メニンタンパク質とMLL(mixed-lineage leukemia)タンパク質との結合を阻害する低分子化合物です。メニンは核に局在し、細胞増殖、細胞周期、ゲノム安定性、造血などの多くの生物学的経路において遺伝子の発現やタンパク質間相互作用といった重要な役割を果たす足場タンパク質です。非臨床研究において、本剤はメニンとMLLのタンパク質の結合を阻害することでKMT2A(MLL)再構成またはNPM1遺伝子変異を有するヒト急性白血病細胞株において選択的な増殖阻害を示しました。さらに、本剤を処理したMLL再構成またはNPM1遺伝子変異を有するヒト急性白血病細胞株において、白血病発症に関与するHOXA9およびMEIS1遺伝子の発現を低下させるとともに、正常血液細胞における終末分化マーカーであるCD11b遺伝子の発現上昇を示しました。本剤の安全性および有効性については現在、再発または難治性の急性白血病患者を対象としたフェーズ1/2用量漸増および用量拡大試験において評価しています(NCT04988555)。本剤は、2022年6月に急性骨髄性白血病の適応で米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグ指定を受けています。また、2024年6月にMLL再構成またはNPM1遺伝子変異を有する再発または難治性の急性骨髄性白血病の適応で米国食品医薬品局(FDA)からファストトラック指定を受けました。
以上
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